表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/301

十一話 最高の防具を求めて

 姉さんが街を飛び出して行った翌日。

 俺はギルドの前で、クルタさんたちと待ち合わせをしていた。

 さて……姉さんに贈る防具は一体どんなのがいいかなぁ?

 俺が思案をしていると、ロウガさんが声をかけてくる。


「よう!」

「ロウガさん! 早いですね!」

「ああ。こういう時、男は早めに来るもんだからな。女を待たせちゃいけねえ」

「その勤勉さを、少しは普段の仕事で活かしてくださいよ」

「ははは、そりゃそうだ!」


 腰に手を当てて、豪快に笑うロウガさん。

 そうしているうちに、ニノさんとクルタさんがやってくる。

 おや、クルタさん……いつもと服装が違うな。

 活動的な白を基調に、細くしなやかな身体の線がはっきりと出るような服を着ている。

 な、何だかいつもよりずいぶんと……大人の女性っぽいな。


「おはよう! 昨日は眠れたかい?」

「ええ、まあ。にしてもどうしたんです、その恰好は?」

「お買い物に行くのに、普段通りの服装なんてのも芸がないと思ってね」

「おいおい、買うのはクルタじゃなくてライザの防具だぜ?」


 そんなに気合を入れてどうする、と呆れるロウガさん。

 一方、水を差された格好となったクルタさんはぷうっと頬を膨らませる。


「別にいいじゃないか。買い物に行くのは事実なんだからさっ!」

「わっ!」


 クルタさんは急に俺との距離を詰めると、サッと腕を絡めてきた。

 ほんのりと薫る女性特有の甘い香り。

 腕から伝わってくる暖かな体温。

 予期せぬ出来事に、俺はたちまち思考停止しそうになった。

 恥ずかしいことだけど、姉さんたち以外にこんなことされたのは初めてだ。


「な、何をしよっと!?」

「ふふふ、そんなに慌てなくてもいいだろ? ちょっとしたスキンシップだよ」

「は、はぁ……」

「もっと素直に喜ぶべきでしょう。笑ってください」

「いや、強制されるものでもないと思うよ!?」


 クルタさんが関わると、途端にニノさんから常識が失われるんだよな……。

 俺に対する態度が柔らかくなった分、以前と比べればはるかにマシなんだけども。

 

「まあいいでしょう。お店へ行きますよ」

「は、はい!」

「ふふふ、ついでにボクの防具も選んでもらっちゃおっかな」

「あんまりジークを困らせるなよ、クルタちゃん」


 こうしてギルドを出て、街の通りを歩くこと十分ほど。

 俺たちは軒先にたくさんの防具を飾った店の前へとやってきた。

 どうやらここが、オルトさんの店のようだ。

 ギルドと頻繁に取引をしているだけあって、意外にも近い場所だった。


「なかなか雰囲気の良い店じゃねえか」

「そうだね、整理整頓が行き届いてるよ。案外そういうところがダメな店は多いんだけど」

「ああ、バーグの親父の店だって裏はグッチャグチャだぜ」

「ややっ! これは!」


 やがて奥から現れたオルトさん。

 彼は俺の顔を見るなり、目を丸くして驚きをあらわにした。

 さすがは商人さん、俺の顔をしっかりと覚えていたようだ。


「ジークさんじゃないですか! いやあ、お久しぶりです!」

「はい、こちらこそ」

「噂は私の耳にも届いておりますよ。何でも、魔族討伐にも協力されたとか」

「ええ、まあ。本当はもっと早めに来るはずだったんですけど、すいません」

「いえいえとんでもない! 来ていただけただけでありがたいですよ」


 そう言うと、オルトさんは咳ばらいをしながら改めて姿勢を正した。


「それで、本日は何をお求めでしょう? 皆様の新しい防具ですかな?」

「実は、とある人に防具を贈りたくて。女性の剣士なんですけれども、おすすめはありますか?」

「なるほど。そういうことでしたら、その方の戦い方にもよりますな。どのような方なんです?」

「えーっと……とにかく動きが速いですね。それでいて、かなり力もあります」

「ふむ……」


 しばし逡巡するオルトさん。

 彼は飾ってある防具に目をやりながら、あれでもないこれでもないと悩む。


「機動力が大事ということであれば、こちらの胸鎧などいかがでしょう? ミスリルで出来ておりまして、非常に軽いですよ」

「ちょっと貸してみてください」


 オルトさんから鎧を受け取り、持ち上げてみる。

 おー、確かに軽いな!

 片手で楽々と支えることができる。

 下手をすれば、革の鎧より軽いぐらいじゃなかろうか。


「悪くねえな。だが、その鎧だと可動域が狭くないか?」

「そうだね。ライザにはちょっと窮屈かもしれない」


 鎧を見ながら指摘するロウガさんとクルタさん。

 言われてみれば、胴体全体をがっしりと覆う型の鎧だからなぁ……。

 誰よりも機敏に動く姉さんには、少し向いていないかもしれない。


「うーん、となるとこちらはいかがでしょう?」


 店にある防具を、次から次へと持ってくるオルトさん。

 しかし、なかなかこちらの条件に合うものは見つからなかった。

 まあ無理もない、姉さんみたいな人はなかなかいるもんじゃないからな。

 あのスピードとパワーに耐えられる鎧なんて、そうそうあるものじゃないだろう。


「うーん……なかなか見つかりませんね」

「ボクもちょっと考えてみたけど、やっぱり難しいよねぇ」

「ちなみに、その方が防具を買うのは初めてですか? もしそうでないとしたら、前に使われていた防具に合わせてみるというのはいかがでしょう」

「なるほど、その通りですね」

「それもそうだな。前にライザが使っていた鎧と同じのでいいんじゃないか」


 納得したような顔をするニノさんとロウガさん。

 ああー、それもそうだな。

 でもあれって確か……。


「……それはちょっと難しいですね」

「ん? あの鎧、そんな凄い代物だったのか?」

「鎧と言うか、あれに掛けられていた付与魔法が凄いんですよ」


 そう言うと俺は、眉間に深い皴を寄せた。

 あれに付与魔法を掛けたのは、誰であろう――。


「賢者が直々にかけたものなんですから」



【読者の皆様へ】

「面白い・続きが気になる・早く更新して欲しい!」

と思った方は、ぜひぜひ評価・ブックマークをいただけると嬉しいです!

評価欄は広告の下にある「☆☆☆☆☆」です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] へへへ [気になる点] ひっひっひ [一言] クルタさん露骨だなw
2020/05/03 18:42 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ