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第七章最終話 第十一回お姉ちゃん会議

「では、そろそろ始めましょうか」


 エルバニアでの事件の翌日。

 アエリアは通信球を使って、実家に集った他の姉妹たちに呼びかけた。

 第十一回お姉ちゃん会議の始まりである。

 さっそく、シエルが姉妹を代表してアエリアに問いただす。


「……まずは何があったのか説明してよ。突然連絡が取れなくなっちゃったし」

「そうですよ。みんな心配していたのですから」

「わかりましたわ。実は……」


 姉妹たちに問い詰められ、事情を説明するアエリア。

 しかし、弟のためとはいえ相手を買収しようとした自身の振る舞いを恥に思ったのだろう。

 その声は自身に満ち溢れた普段とは異なり、しょんぼりとしていて覇気がない。


「それで、そのゴダートって奴に捕らえられたと」

「いえ、正確にはシュタイン殿下ですわね。ゴダートはわたくしをそのまま返そうとしましたわ」

「ふぅん……やっぱり、ただの悪人じゃなかったのかもね」


 どこかしっとりとした口調でつぶやくシエル。

 共感というほどでもないが、ゴダートの内心に思うところがあるようだ。

 彼女に共感するように、ファムもまた物悲しげな口調で言う。


「こういった方々の心を救うのも、我々の役目なのですが……。救いを与えられなかったことが悔やまれるばかりです」

「このゴダートって言うのはもともと東方の人間らしいし、ファムには関係ないんじゃない?」

「いえいえ! この大地に生まれし者は遍く神の子です」

「……そういうものなのかしら」


 どこか納得がいかない様子のシエル。

 するとここで、エクレシアが妙にいい笑顔をして言う。


「ところで、そのゴダートにアエリアはいくらって言ったの?」

「え?」

「買収しようとした金額」

「ああ。エクレシアも変なこと気にしますのね」


 下世話な妹に苦笑しつつも、アエリアはそうねえと顎に指を当てた。

 その様子に、シエルもどこか興味ありげな顔をする。


「王子が出すと言った金額の三倍出すと言いましたわ。単にそれだけ言っても説得力がないと思いましたから、前金で五千万ゴールド分の金貨を持って行きましたわね」

「……流石はアエリア、えげつないわね」

「予想以上」

「雇い主が王子でしたもの。そのぐらい当然ですわよ。結局、お金は持っていかれてしまいましたが」


 大変なことを実にあっさりと言ってのけるアエリア。

 彼女は呆れる姉妹たちをよそに、それはそれとしてと話題を切り替える。


「ともかく、無事に大剣神祭は終わりましたわ。闘技場が再建され次第、改めて大会を実施するとのことですが……。あと数年はかかるでしょうね。第一王子が亡くなって国もガタガタですもの」

「政情不安を引き起こしていた原因がいなくなっただけ、まだマシと言ったところでしょうか?」

「まぁいずれにしても、しばらくはライザが剣聖のままでしょうね。剣聖になったノアを見てみたかったものですわ」

「問題は、それよりも事件の黒幕についてじゃない?」


 ここで、シエルが不意に真剣な顔をした。

 それを聞いたエクレシアやファムは、おやっと不思議そうな顔をする。


「黒幕というのは、そのジンという魔族のことですか? 既に倒されたそうですが」

「もう死んでる」

「そうじゃないわ。考えてもみてよ、たまたま封印の緩んだ古代の魔族がたまたま排斥されつつある王子と接触するなんて偶然が過ぎると思わない?」

「それぐらいなら十分あり得ることではないでしょうか」


 シエルの意見に納得がいかないのか、ファムはうーんと首を傾げた。

 するとここで、シエルに代ってアエリアが言う。


「魔族が王子を操ったにしては、やり方がひどく人間的な気がしますわ。コンロンをうまく利用しているところなども気になりますわね」

「言われてみれば、そう思えなくもない」

「……あくまで仮にですわ。もしコンロンが、魔族と王子が接触するように誘導してさらに取り入ったとするなら辻褄は合いますわね」


 アエリアの言葉に、場の空気がにわかに変わった。

 たちまち、ファムが少し顔を引き攣らせながら言う。


「ですが、それだとコンロンが魔族の存在を知っていたということになりますわ。いくら闇の武器商人とはいえ……」

「ひょっとすると、コンロンは魔界の息がかかった組織だったりするかもしれないわ」

「……え?」

「割と有名な話よ。あそこの扱っている魔導具の中で、突出した性能の物は魔界から流れてきているんじゃないかって。実際、賢者の私でも見たことが無いようなものが稀にだけどあるわ」


 専門家であるシエルの言葉には、それなりに重みがあった。

 さらに畳みかけるように、アエリアが続ける。


「あれだけ大規模な組織にしては、実態が掴めなさすぎるというのもありますわ。会頭が誰なのかすらいまだによくわかっておりませんの」

「そうなると、いよいよきな臭い」

「ええ。ゴダートは奴らにとっても大戦力のはず。それを倒したことで、ノアたちが目を付けられないといいのですが」


 不安げに呟くアエリア。

 古代魔族を退けたノアたちに、またしても不穏な影が迫るのであった……。


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