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輪番制街作り

 たったの三ヶ月で街ができあがったのには、からくりがある。

 ひとつ、都市計画の責任者ゴッドリーブが優秀であったこと。

 ふたつ、その配下である建築家たちが有能であったこと。

 みっつ、俺の秘策が功を奏したこと。


 この世界は基本的に人力で建設する。異世界のようにブルドーザーやクレーンなどはない。


 その代わりこの世界には魔族がいた。

 俺は素材を集めると、それをクラインの壺に入れる。

 召喚を念じたのは巨大な人。

 巨人だ。


 街の行商人から買った巨人の骨と呼ばれる化石をクラインの壺に入れ、そこに一角獣の角も入れる。


 イメージを伝達するように魔力を注ぎ込みながら、クラインの壺に素材を入れると、出てきたのが、有名なこの魔物。



【レアリティ】 ミスリル・レア ☆☆☆☆

【種族】 巨人族 単眼巨人サイクロプス

【職業】 戦士

【戦闘力】 1788

【スキル】 怪力



 出てきたのは見上げんばかりに大きな人であった。

 全長は8メートルはあるだろうか、単眼に単角の巨人サイクロプス。

 その大きさは小山のようであった。


 彼のような巨人族はいくさに出れば悪鬼のような活躍をするが、いくさ以外にも大活躍する。


 そう、彼のような巨人は建設機械としても使えるのだ。

 日本にあるブルドーザーやクレーンの代わりになる。

 それはこの世界において強力な武器であった。


 彼は、サイクロプスの巨人は、石運びや資材運び、支柱を立てる作業など、なんでもこなしてくれた。


 魔族はプライドが高いのだが、巨人族はおおらかでむしろこのような作業のほうが好きなのかもしれない。


 彼は黙々と建築課の指示に従い、石を積み上げてくれた。


 他にも今回召喚した魔物、すでに召喚した魔物、それに人間たちの人足を雇い、フル稼働させる。


 24時間体制だ。

 それを聞いた聖女ジャンヌは口を曲げる。


「魔王は魔王だ。24時間も働かせるなんて悪魔でもしない」


「そんなことしないよ。輪番制(シフト)を敷く」 


「輪番制?」


「8時間交替で働くんだ。それぞれの組が順番で」


「なるほど、それなら良心的」


「アシュタロト軍はホワイトだからな。残業はゼロだ」


 8時間交替でシフトを組み、夜間のシフトの場合は割増手当も出す。


 それに安全に作業できるように、火の精霊サラマンダーをたくさん召喚する。

 サラマンダーの舌によって周囲を明るく照らすのだ。

 8時間労働も合間にはちゃんと休憩時間を入れて、食事も用意する。


 イヴが選抜したお食事隊と、彼女が考案した高カロリーの食事によって労働者は元気いっぱいに働けた。


 こうして三ヶ月。

 正確には89日で新しい街はできあがった。

 内装はまだのところもあるが、少なくとも人は住める。

 新しい住居をあてがわれた住民は嬉しそうに家に入った。


 その住み心地は最高なそうで、俺が街を歩くたびに彼らは頭を下げ、礼を言ってくる。



「アシュタロト様のおかげで最高の家に住めました」

「流民だった我らを受け入れてくださってありがとうございます」

「魔王サブナクの街とは比べものにならない住み心地です」



 それぞれに礼を言ってくる。


 その言葉は都市計画の責任者と建築家、それに労働者に言うべきだ、とそのたびに返すが、なんでもその建築家たちが俺に礼を言えとのことだった。


 その代表であるゴッドリーブは言う。


「ワシに自由な手腕を与えてくれたのは魔王殿だ。それに建築家を高給で雇い、やる気にしてくれたのもな。魔王殿でなければここまで早く完成しなかっただろう」


 イヴも追随する。


「御主人様はこの三ヶ月、不眠不休で働いていたことをイヴは知っています。ゴッドリーブ殿の補佐、それに住人との折衝、労働者たちへの差配。すべて御主人様の影の働きがあってこそ」


 感服いたします、とイブは頭を下げる。

 聖女ジャンヌも続ける。


「魔王はすごい。戦争だけでなく、内政も上手いの。最高の魔王なの」


 べた褒めは有り難いが、彼らの言葉を真に受けると増長してしまいそうだった。

 話半分に受け取っておく。


「ここまで人が増えたら、税収もさぞ増えることだろうな」


 ゴッドリーブは言う。


「たしかにそうかもしれないな」


 とイブを見ると、彼女は懐から紙を取り出す。

 この話になると予見していたようで用意万端であった。

 さすがは優秀なメイドだ。

 と褒めると、彼女は頬を軽く染めた。

 こほんと咳払いをすると、今期の税収予想を教えてくれる。

 それを聞いたゴッドリーブは感嘆しているようだ。


「我が里の数十倍はあるな」


 とのことだった。

 たしかにすごい。これだけの税収があれば軍隊を拡張できるだろう。


「御主人様、やっと計画通り、人間の部隊を編成するのですね」


 イヴは微笑む。


「ああ、これで人間の傭兵を雇い、彼らに武器を供与できる」


「その武器は我らドワーフに作らせてくれ」


 とゴッドリーブ。

 もちろん、そのつもりなのでうなずくと、さっそく、人間の傭兵を募集する。


 今までも募集しなかったわけではないが、資金がなかったので大規模にはできなかった。


 しかし、今ならば資金も潤沢だ。


 税収は半年後になるが、これだけの規模の街を作れば、人間の商人たちも金を貸してくれる。


 彼らはめざとい生き物なのだ。

 発展性のある魔王には資金の貸し渋りをしない。

 イブに手配させ、資金を調達させると、街のいたる場所に傭兵募集の看板を出す。

 その看板を見て土方歳三は渋い声を上げる。


「ちょいと渋すぎないかい?」


「通常の傭兵を雇う八掛けだが、問題ない」


 と言い切る。


 傭兵は金次第という印象があるが、その手の傭兵は金持ちの都市国家や魔王たちにすでに雇われているはず。


 彼らと賃金競争をしても勝てない。

 こちらが出せる誠意は「補償」くらいであった。


「補償?」


 歳三は訪ねてくる。


「それは死んだときや怪我をしたときの補償だな。怪我をして戦えなくなれば一時金を渡す、いくさで死ねば家族に仕送りを送る。そうすれば弱兵でも一生懸命戦うだろう」


「なるほどね、考えたもんだ」


 歳三は妙に納得すると、「新撰組にも導入すれば良かった」と笑った。

 鬼の副長殿に評価されるのは光栄なことであった。


 俺の作戦が当たったのだろうか、集まった人間は、強壮ではなかったが、皆、真面目で忍耐強そうな顔をしていた。


 彼らの指揮と訓練を土方に一任すると、俺は彼らを見守ることにした。

 本当は俺も参加しようとしたのだが、イヴにたしなめられたのだ。


「なにからなにまで御主人様がやってしまったら、アシュタロト軍団は育ちません」


 なるほど、道理である。


 ゴッドリーブも似たようなことを言っていたので、訓練は武将である歳三とジャンヌに一任した。

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