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インフラ整備


 翌朝。


 日の出と共に(地下なので関係ないが)、俺たちは再び現場を訪れた。ゴッドリーブは「どうせ泥水になっとるわい」と、まだ疑っている。


 ドワーフたちが、鎖で水溜りから引き上げた木枠を、俺たちの前に置いた。


 木枠の中には、昨日練った「泥」が、カチンコチンに硬化した、緑がかった灰色の『石』となって、鎮座していた。


「…………固まっちょる」


 ゴッドリーブが、呆然と呟いた。


 だが、ドワーフの族長は、まだ認めない。彼は、腰に下げていた愛用のミスリル製の大槌を手に取った。


「魔王殿、失礼するぞい!」


 掛け声と共に、ゴッドリーブがドワーフの全筋力で振り下ろした大槌が、コンクリートブロックに叩きつけられる。


 キィィィン!!!!


 地下道に、甲高い金属音が響き渡った。


 コンクリートブロックは、欠けていない。


 逆に、ゴッドリーブの大槌のほうが、わずかに刃こぼれしていた。


「…………」


 ゴッドリーブは、震える手で、そのコンクリートブロックを神の啓示でも見るかのように撫でた。


「……魔王……殿……。こ、これは……なんという……。水中で……ワシの大槌より硬い石じゃと……?」


「ローマンコンクリート。俺たちの地下都市の『血管』となる素材だ」


「カ……」


「カカカ……! カハハハハ!」


 ゴッドリーブは、突如、天(地下道の天井)を仰いで笑い出した。


「下水道! 上水道! 大倉庫! 軌道!……これがあれば、一〇〇〇年……いや、二〇〇〇年保つ『傑作』が作れるわい! 蟻の穴どころか、竜の巣より頑丈な地下都市が!」


 その目には、もはや疑念はなく、職人としての狂気的な歓喜の炎が宿っていた。


「イヴ!」


「は、はいっ!」


 俺の声に、同じく呆気に取られていたイヴが、ビシッと背筋を伸ばす。


「この建材のコストを計算しろ! 材料は、この土地の岩盤と石灰だ! ほぼタダだぞ!」


「タダ……! 2000年保つインフラが、タダ……!」


 イヴの目が、財務卿として、カッと見開かれた。


「孔明の言う通りだ。今は内政に専念する」


 俺は、狂喜するドワーフと、打ち震えるメイド長を見て、静かに宣言した。


「ゴッドリーブ! 地下を頼む! イヴ! 財政と物流を管理しろ!」


「「御意!!」」


 こうして、俺の(前世の)知識と、ドワーフの(異世界の)技術が融合し、アシュタロトの地下インフラ整備は、俺の想像を遥かに超える速度と品質で、本格的に始動したのだった。


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