純白のルネ
街行く自分を珍獣でも見るように眺める先住民たち
薄い羽衣に身を包んだ妖精のような神秘的な衣装は、森に住むエルフを彷彿とさせる
その耳が自分とほぼ同じ形状である事から、ここの住人が少なくとも人間であることは理解できた
しかし、現代の人間とは一線を画する外見的特徴がある
異常なまでに白いのだ、白人やアルビノとも違う病気とすら疑ってしまう程の白さだ
「もし、少しよろしいでしょうか?」
背後から恐る恐る自分に近づいてきたのは、同じように白い肌を持った絶世の美女
練乳のような白い肌とまつ毛には、やや温もりを感じさせその巻き髪は聖書に登場する聖母を思わせる
「よろしければ、今晩は私の家にお泊まりになりませんか?丁度、赤髭様は貴方様をお預けになったのち遠征に出向いておられます。宿というものがこの国にはない為、誰か相手を見つけなくては」
突然の申し出に若干の警戒心が湧くが、彼女の表情からはそんな下卑た感情が受け取れない
心の底から自分に尽くしたいと思っているような表情だ
「赤髭様より仰せつかって居るのです。ノワールの方は男であれば手厚く歓迎せよと」
「ア、アハハそうなんですね。じ、じゃあお言葉に甘えて」
その言葉と同時に彼女の表情が僅かに強張る
どこか怯えて居るような、まるで猛獣に睨まれた子猫のようだった
「こちらです」
彼女がそっと自分の手を取る
しっとりと瑞々しい肌は外見に違わず吸い付くような弾力があり、なぞる指からはほのかに温もりを感じる
「ヨヨヨ、ヨロシク!!!!」
素っ頓狂な声を出してしまった
これでも経験自体はある
しかし、どうも女性には慣れない
少し前の”あの女”は結局手を繋いだだけで恋人らしいことは一度も出来なかった
初体験が風俗だったなどと誰に言えるものか
しかし、その虚勢に満ちたハリボテの自尊心もこの美女の前には意味をなさない
「……?ウフフ、貴方様は面白い方ですね。祖国の男はもっと高慢で恐ろしい方ですのに。少しばかりノワールの方を誤解していたのやもしれません。貴方で良かった……」
顔が熱くなる
こんな美女に褒められたら男なら誰だってこうなる
今すぐにでも襲いたい
股の下の頑ななものが雄叫びを上げる
しかし、異国の地で強姦事件など起こそうものならどうなるか分かったものではない
流石にその程度の冷静は持っているつもりだ
「アハハ!そんなに褒めないでください、失恋したばかりで好きになってしまいますよ」
「ええ、出来れば私も貴方に優しくして欲しくない……私も貴方を、その愛してしまいそうですもの」
少しばかりお世辞めいた言葉に冷めつつも、彼女に対する思いは変わらなかった
「…そう言えば、貴方のお名前は?」
「ルネ、ただのルネです。短い間ですがどうかよろしくお願いいたしますね?」
そう言い、彼女は今日初めて本心から笑った




