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第55話・障がい者対象のダンスレッスンの見学で思ったこと

お久しぶりです。

バレエ公演を主催する話は寝かせておき、通常のバレエエッセイに戻ります。




 障がい者対象のダンスレッスンを見学させていただきました。その時の感想です。


 大阪府には、堺市に国際障害者交流センターがあります。名称「ビッグ・アイ」

 今回わたしが見学させてもらったのは、そのビッグ・アイで開催される舞台芸術オープンカレッジ表現コース。わたしは数年前から、クラシックバレエの新作を自主公演したくて、あちこちで舞台もしくは舞台芸術を学べる企画があれば参加させてもらっています。こちらでは大阪府主催で、委託事業としてビッグ・アイが実施しています。

 参加者募集のチラシを見たときに、初心者も経験者も大歓迎とあり生徒としての参加を決めました。が、三か月前ですでに定員いっぱいでした。そんなに人気があるのか、すごいな~。そして皆踊りたいのね~と思いました。せめて見学させてほしいとお願いしたらOKいただきました。

 このワークショップは5回やり、そのあとに発表会です。申し込み書を見たらわかりますが、本当にどなたでもOKです。しかも参加費無料です。人気があるのも当然でしょう。

 障がい者舞台芸術応募用紙と名売っている以上、手話通訳つき、補助犬の同伴OK,車いす利用OKで実施日のすべてに看護師もつきます。申し込み書には障がいの有無とその種類を書く項目があります。またワークショップに参加する際に、気遣ってほしい事柄を書くスペースもあります。例えば体温調節がうまくできないので適宜休憩をいれてくださいなど。

 わたしはそれを見て、講師は一人なのに、看護師が付き添うとはいえ、どうやってレッスンをすすめるのか見たいと思いました。また過去わたし自身が生徒を募集してバレエストレッチを教えていました。その時に膝の故障を抱えている人と、わたしよりもずっとバレエが上手な人が同時に来られたことがあって、そのわりふりに苦労したことがあるからです。ストレッチメインのレッスンですら、そうだったので、本格的なダンスレッスンではどういうふうに指導されるか興味がありました。結果、いろいろと思うことがあって忘備録として書いてみます。


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 当日は早めに到着しました。会場は体育館のようで広い。車いすの参加者はいなかったですが、もしいらしても問題はない。建物には段差もなく、スムーズに入場できるようになっている。すでに参加者が到着しており白い紙に名前を書いたテープを胸元につけている。全部で10人前後、時間通りに開始。

 まずは皆で円陣になり、柔軟体操をする。しかし、生徒のうちの一人は先生の掛け声を無視するように、体育館の隅を歩き、時には円陣を遮って歩き、時に先生にもたれかかる。知的障害がある人で、見学者としてはその人ばかりつい目がいってしまう。先生は指導の邪魔になっても怒らない。そして先生の後方には手話通訳さんが控えており、聴覚障害者とおぼしき男性にわかるように手話で先生の指示を伝える。先生の助手さんらしき人が、手足を動かすのに苦労されている人をそっと寄り添ってやりやすいように実際に手足を触って動かす。見学5分以内で、これでもう通常のダンスレッスンではないことがわかる。障害といってもひとそれぞれでバラバラなのでこういった手厚い介助者がそれぞれにいないと、先生一人の指導では無理であることも。そのうえ、通常のダンスやバレエの発表会のように、生徒たちも与えられた振付を復習することも、皆で協力し合って衣装や小物を用意することも無理であることも。ならばどうやるのか。


 ダンスレッスンの内容は、皆が理解できるじゃんけんぽんを応用したものでした。まず二人ずつ組みになる。じゃんけんの部分をゆっくりと先生がいう。

 じゃーーん、けーーん……

 その短い間に生徒は自分で好きな動きをする。「ポン」 で対戦者に向き直って対面する。そして、ぐーなりチョキなりパーを出す。負けた人は横になる。勝った人は負けた人の足を持ってひっぱって向こう側においてある決められた場所に置いている椅子(目印)のところまで引っ張っていく。1人で別の人の足を引っ張ることが難しい人は先生や助手さんがさっと手助けをする。

 じゃんけんの部分で回転を入れたりジャンプを入れてポンの部分でポーズを決める。体幹がしっかりして妙にうまい人がいる。彼らは先生の助手さん。助手さんや主催者側のビッグアイ職員も中に入って、生徒が楽しく過ごせるように合いの手を入れる。時に引っ張られる人が手を振り回したり、足を組んで引っ張るのを難しいようなポーズを取る、そのたびに拍手や笑い声がわく。和気あいあいとして、良いレッスンだった。しかし発表会に向けての練習日はこれで3回目、あと2回この調子で授業をやって音楽を流して皆で同じように踊るのは無理だろう。


 ビッグアイ側からお話を伺うことができました。先にも書いたように毎年の参加者がいるそうです。小学生から年配の方までなんらかの障害がある。そして毎年やる意味はある。人前に立つことが難しい参加者も最初は見学に徹していたが、3年目にしてやっと授業についていけたようになった。そう、その人にとっては、これはとても意義がある。

 彼らは連れて行く保護者や家族あってのことで、そういう意味では恵まれた環境にある人が生徒として参加できる。発表会も当日急に不参加になったりはあるので、アドリブがきくような遊びをダンスとして取り入れておく。見学当日のように。ダンス授業は健常者対象のそれではなく、そこがそれならばそれはそれでありだと思った。確かにこれなら、舞台中央を横切られても不自然ではない。その場を楽しめたものが勝ち。

 健常者の発表会との比較ではなく、障がい者ダンスの個人としての成長を促し、寿ことほぐ感じかな。わたしが思っていたダンスレッスンではなかったが、参加者たちの笑顔を見て有意義な時間を過ごせたと思う。見学を許していただいたビッグアイさんに感謝している。


 また調べてみるとダンス療育指導という項目もあり、あちこちで、まだ数は少ないながら障がい者対象のダンススタジオがある。踊りたい人は皆等しく踊る権利がある。ダンスというイメージを取り除くと、そもそも自由に動くのがダンスの延長になる。枠や型がなくてもダンスになる。音楽が流れていなくてもダンスになる。それを痛感した一日になった。





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