第31話・日本独特の振り付け
つい先日の話。
初対面の人に自己紹介がてら「趣味はバレエです」 というと、「あ~いいですね、バレエってキレイですもんね」 とおっしゃられる。うれしくなって、「実は踊る方もします」 というと……
「うそ!」
と叫ばれて大ショック。こういう時、私は上手にジョークを飛ばしたり、言葉返しができない。相手も気まずそうにされている。私はすぐに笑顔を取り戻す。
「いや、私みたいに肥っていてバレエをやるのは珍しいですけど、それでもバレエが好きなのよ」 という。
向こうも察して「あ~わかります」 と再度なごやかな雰囲気に。
ま、双方とも大人でよかった。私は今後バレエ好きを隠した方が、やはり広義的にはいいのだろうかと少し悩んだけど。私が世間一般のバレエの優雅なイメージを一人で壊してはいけないとまで思いつつ、今回はバレエ的マイノリティーからの意見です。ご笑覧ください。
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先日バレエブログを見ていて、あれれ、と感じたことがあります。リブログといってその人自身も引用されていたので、元記事に飛びました。こういう時、材料というか元ネタがわかるというのは、すごく助かります。書籍だとそうはいかず、子引き、孫引きでトラブルになった話を聞くので、ネットで都度エビデンスというか元記事をチェックできることに感謝する。
記事内容は日本にいつのまにか根付いていた振付に関することで、本場の人から見て「おかしい」 とはっきりと指定されたことを書かれていました。記事にした先生はバレエ教室経営、振り付け指導、コンクール選考員もとオールマイティに活躍されている。本場というのはいわゆるバレエ界の権威ある人からの指摘という意味あいで書いています。
内容は、舞台から出てくるマナー的な足運びのこと。まず板付きといって足五番スッスで立ってから足を一歩すすめておろしてスタンバイするやり方はいけないらしい。しかし、私はそうやって習っていたが、その先生は「バレエではない」 とまで言われたらしい。そんな……。
えっダメなのか、ダメだったのか……という驚きを感じた。
先生自身も指摘してきた権威ある先生から「今まで何を指導してきたのか」 と怒られたらしい……。日本独特のものはまだ根付く段階ですらないのだろう。日本バレエはこうなのね、ではない。間違っていると決めつけられている。それを痛感した。
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以前も諸外国の指導の方が厳しいという話を書いた。国立バレエ学校はお稽古事ではなく、職業的な訓練学校の意味合いもあるので当然だ。
日本独自でその振り付けで広まっても、我流だとして徹底的に認めないところがロシア、ヨーロッパ。特にロシアこそ発祥地イタリアから見たらバレエ後進国。イタリアから広まりフランス、その次がロシアで根付いた。しかしロシアはロシアで独自に発展して独自なプライドも持っており、ロシアこそバレエ大国という意識が強い。
ロシアバレエは世界一という刷り込みはこの私にだってある。生きているうちにボリショイ劇場に一度でいいので行きたいという夢もまだ大事に持っている。
少し話をそらすが、ロシアバレエのプライドの高さを如実にあげられる好例がある。ロシアのバレエ学校校長のインタヴューで、いや、名前をあげてもいいかな……ワガノワ・バレエ・アカデミー校長 ニコライ・ツィスカリーゼ氏……氏のバレエ学校に対抗できるのは、世界のどこにもない。しいてあげればフランスのオペラ座の学校ぐらいだと言い切ったのも記憶に新しい。そういう高いプライドをロシアバレエに限らず海外のバレエに携わる全員が持っている。
日本の指導者にはそういうところはまったくない。日本バレエは後進国なのだ。日本バレエが先進国になったと言えるようになるのは、日本でしか開催されぬバレコンに外国人生徒が目指すようになってからだろう。それは千年か万年先か。
しかしプライドの高いはずの伝統あるバレエ団でも、自国出身の生徒ではなく日本人を主役として踊らせるということも多い。能力ある人には国籍問わず、出身校問わずで発揮させる。つまり実力主義的な努力を舞台で報いてくれる。だから日本の指導者に対しても、彼らは指導を入れる。
もちろん私はその状況を好ましく思う。バレエには国境もないし、ましてや国家間の戦争なんてないのがわかるから。
ただ前進あるのみ。
だからこそ、その元記事を書いた先生も素直にこれを拡散しようとして自らお手本の動画をUPされたのだろう。
すでに日本は生徒数的にはバレエ大国になりかけている。バレエ史もまた今後は世界が認める天才的な日本人振付師が出てくれば、世界の照準も変化するだろうとみている。
足五番でルルベ、それから足をすすめてポーズ……海外の権威ある選考委員の先生にとってはNGでも、幼いころ、若かりしころ、私は舞台に出るためにそれを何度も練習してきた。
舞台に出て一度ルルベでストップ、寸止め的なポーズを取ってから再度五番で降りて優しく移動してまたポーズというのは、奥ゆかしくていいとまで思う。
でも今は反論なぞできない。私もそれを言われたら黙り込む。権威が黙らせる。反論不可。
その分振付する機会があれば、伝統的なものよりも、誰が見てもわかるストーリーを作ろうと心に誓った。今年も半分すぎいろいろなことがあったが、一番大きいのは死の危険を感じたこと。だから、私的な二つの夢のうち、私は急いで一つをかなえた。これは別の機会にエッセイにする。
もう一つの夢はこれにした。いつ死んでもいいように書き留めておく。ダンサーと資金と舞台はこれから用意する。そのためにも、他人様の優雅なるバレエのイメージを壊してでも私はバレエだけは続けよう……レッスン場には行けなくても家でストレッチして続けよう。




