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第30話・生徒多すぎ問題 & 少なすぎ問題  △


 今回もバレエレッスンをあけすけに語る。

 生徒の人数が多いほど、先生にとってレッスン料や指導料が入るので大歓迎でしょう。今回も指導者目線ではなく、万年劣等生を自覚している生徒目線での話。


 生徒が多すぎてにぎやかに踊るのもまたよし、というタイプの生徒です。しかし最近はマスクをつけて踊ると、息苦しくて、せっかくのレッスンなのにつらい……これもコロナ感染予防のせい。早く鎮まってほしいものです。先日コロナ騒ぎがあるのに、それでも踊りたがるのはなんで?? とある人に驚かれてしまいました。それで今回はその話をつらつらと書いてみます。

 皆様もご存知のようにコロナ騒ぎは令和二年から突発的にはじまったと思いきや、四月の緊急事態宣言が解除されてなお、じわじわと増えています。このエッセイは解除後、少々落ち着いていたころでの話と思ってください。

 そう、宣言解除の五月の終わりからバレエレッスンがあちこちで再開されています。それを私は好機と捉えました。コロナ的引きこもりのせいで、いや、私が悪いのですがバレエのストレッチでさえさぼり気味のため、すごく下手になったのでレッスン量を増やしました。やってないときの反動でたくさん踊りたかった。

 それで、めったに行かないところまで足を伸ばしたら、なぜか生徒が激減していました……理由はわかりません。受付の人にこっそりと伺ったら、「ここは駅から距離がありますし、夜遅くから開始ですし、みな怖がっちゃってね~」 というだけ。ま、万年ビジターにはわからない事情があるのだとは思う。

 先生はあいかわらず優しくてフレンドリーでした。でも生徒数が片手に足らぬ人数だとバーはなんとかなってもセンターでは「一人ずつ」 踊らされる。このパターンは私の一番苦手とするところ。

 やる気満々な人はこの状態だと先生のチェックが密に入るので、より上手になるし嬉しいと思う。しかし、なんちゃって大人バレエの私にはつらい。生徒びっしりで鏡の前の先生のお手本が見えぬ状況も困るが、先生と目を見つめあう状況も苦手。それは己の踊りに自信がないのに他ならぬ。

 案の定私の踊りはひどすぎたのか、華麗にスルーされる。この状況もつらい。しかも生徒数が少なすぎるせいか、先生は椅子に座ったまま振付を指示されるようになっている。前はそんなではなかったのに、腰でも痛められたのか……幸い、上手な人が一人いて、先生の指示を一人で受けてお手本になってくださった。つまり彼女は劣等生の防波堤でもある。

 先生的にはこの状況が物足らないらしく、生徒たちの踊りがなってないと感じたら、面倒そうに立ち上がって「こうしてください」 と、さっと手足を動かしてからまた座る。やはり腰を痛めたのかな……生徒数の激減の理由がわかったような気もします。先生一人でやっているところは最後はこうなってしまうのか……とこれまた失礼なことを考える私。

 先生は私だけチェックを入れないのも、悪いと思われたのか、急に私を見据える。

 ……瞬時に察知する私……来る…来たっ!

「ちょっと、そこのあなた。足、つま先、足っ」

「は、はい」

「そこ、もう一度、やってみて」

「はい」

「違う、右足はうしろ」

「は、い……」

「違います、う、し、ろ」

「っ……」

「ぅ、し、ろっ……」

「………」

 必死でやり直す。すみっこにいた上手な人がさりげなくお手本をされた。鏡越しにその振付を盗ませていただく。それでやってみる。これで、いいはず……お願い、あってますように……先生は肩をすくめられる。次に横を向いて別の人をチェックされる。やれやれと思う私。プロやプロ志望は、この状態になれているのだろうな、メンタル強くなるはずだ。

 生徒数が少ないと順番がすぐまわってきて、レッスン内容的にはお得だが、私はあまりな不甲斐なさに落ち込む。しかしそんな私でもレッスン終了後は今日は充実していたなあ、と思う。失敗したふりつけを復習して狭い家の廊下でやり直す。

 一緒にいた上手な人は優しかったし、先生も適度にほっといてくれる。そういうわけで、今日も満足して眠りにつく……そうやって細々とバレエレッスンを続けています。

 コロナウイルスの感染予防については本当に双方とも注意しないといけないのですが、その上でバレエをやる分には構わないはず。事故が怖いから運転免許は持っていても運転はしないという人と一緒で、感染が怖いから踊らないと言う人は、踊ること以外に何らかの選択肢があるなどの余裕がある。

 私は趣味が極端に狭くて深いので、今から新しい分野や趣味を開拓する余裕ない。バレエがなかったら私なぞこの世をとっくの昔に去っているとまで思う。バレエだけはやめられない。

 家族からは昔からバレエ病だと愛想つかされてます。この話は令和二年七月の話で感染者急増のニュースを受けて再度レッスンは中止にしています。だけど、秋以降は春に延期になった公演の再演予定がありますので、これ以上コロナウイルスが蔓延しないことを願いつつ本日も狭い我が家でストレッチしています。



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