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オレの恩返し ~ハイスペック村づくり~【書籍化&重版】  作者: ハーーナ殿下
【第3章】

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第45話:急がされたシナリオ

 猛獣のような大剣使い、帝国の騎士バレスが立ち去ってから半日が過ぎる。


 初秋の午後の日差しが降り注ぎ、オルンの市場バザールは買い物をする市民でにぎわう。

 

 早朝に思いもよらぬ帝国の騎士の来店があったが、ウルド露店の売り上げは本日も好調。

 客足も落ち着き、ずっと品出しをしていたオレもひと段落する。


「リーシャさん、この後の店番を頼む」

「はい。"イシス様”とお出かけされるのですね……ヤマトさま」

「ああ、今日で最後だ」


 オルンの街の太守代理の少女イシスが、そろそろオレを迎えに来る約束の時間だ。

三個さんこの礼”による『オルンの街の素晴らしいモノを知ってください!』も、今日の三個目で最後である。


 最終日である今日は『一緒に行って見せたいものがある』という昨日の約束だった。

 何でも『手では持ってこられないおおきなモノ』だとイシスは言っていた。


「イシス様と会うのは"今日で最後”……なのですよね?……ヤマト様」

「ああ、そういう約束だ」


 太守代理の少女イシスは、何の打算もなく“オルンの街の素晴らしい物を三個”オレに見せてくれると言っていた。

 その約束も今日の午後で最後になる。今となっては、さっぱりしたような、少し寂しい感もある。


「なら……いいです……」

「どうした、リーシャさん? 気分でも悪いのか」


「いえ、何でもありません!」


 オレの気のせいかもしれないが、リーシャはイシスの話をする時、少し不機嫌になる。

 もしかしたら生理的に彼女のことを苦手なのかもしれない。

 

 女同士の相性と言うのは、男である自分の理解できない領域だ。

 あまりその件に関しては触れないでおく。


「ウルドのヤマト!」


 そんな時であった。

 

 市場バザールにオレの名を叫ぶ者が現れる。その声には聞き覚えがあり、少なくとも危険人物ではない。


「オレはここだ、リーンハルト」

「そんな所にいたのか!」


 自分を大声で探していたのはオルン近衛騎士リーンハルトであった。

 彼の視界に出てい、自分の存在を知らしめる。


(何かあったのか……?)

 

 リーンハルトは市場バザールの全ての店を叫び回り、オレを見つけようとしていた勢いだった。それほどまでに血相を変えている。


「どうした?」

「くっ……やはり、いないのか!?」


 リーンハルトは質問に答えずに、オレの周囲とウルド露店を見回し、落胆した表情となる。明らかに"誰か”を探している様子だ。


(まさか……) 


 その悲痛な顔つきから、オレの脳裏に一つに仮定に浮かび上がる。


「まさか、いなくなったのか……?」

「ああ……ここに……“お前に会い”に来る為に、馬車を降りて、目をはなした一瞬だった……」


 オレはあえて〝誰が”いなくなった、とは聞かない。

 近衛騎士リーンハルトも周囲の市民に悟られないように、冷静さを取り戻しながら言葉を選んで発する。

 

 だが、その返事の内容だけで、オレは全てを察する。


 近衛騎士であるこの男が仕えている主は、太守代理の少女イシス。

 そしてオレがこれから会う約束をしていたのもイシスだった。


(誘拐か、それとも拉致か……)


 これらの事から、オレがたどり着いた事実はただ一つ。


 太守代理の少女イシスが、何者かによって誘拐されてしまったのだ。


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