第864話 レジスタンスの反抗
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「い、一葉さん。お強いですね」
「お、お姉さんの水意拳には憧れちゃうサメエ」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太とサメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨は、レジスタンス代表、一葉朱蘭の強さに圧倒されていた。
(紗雨ちゃん、アルコールはよくないよ)
(サメ映画っぽい破天荒さがお気に入りなんだ。でも、憧れているのは飲まない方なんだサメエ)
(お、おう)
桃太と紗雨は朱蘭が使う酔拳ならぬ、迷宮探索特化拳法〝水意拳〟に詳しい友人の呉陸羽から、「水意拳は、あくまで酔ったような動きを取り入れているだけで、別に酒を飲む必要はない」と聞いていたものの――。
蒸留酒を火炎攻撃に利用するという決め技を目撃したため、胸元まで迫り上がったツッコミを自重した。
「キハハ。若い子に褒められるとやる気が出るねえ。六辻剛浚。アンタは終わりだ。ここから先にあるキソの里は、とうにレジスタンスが解放したよ。諦めてお縄につきな。〝四の技、ケンショウリ〟!」
「「GAAAAA!?」」
薄灰色の髪をショートボブにまとめた朱蘭は、元勇者パーティ〝SAINTS〟の幹部ながら、今やテロリストにおちぶれた六辻剛浚があやつる屍体人形〝蝿兵士〟を数体両手で抱き寄せるや、足元の金棒を使ってあたかもチェーンソーで枯れ木を刈るように薙ぎ倒し、再生も不可能なほどに粉々に打ち砕いた。
「レジスタンスのリーダーである一葉さんがここにいると言うことは、そういうことなのか」
「執事の晴峰さんが言っていたとおりなんだサメー」
桃太と紗雨は、朱蘭と同様に蠅兵士と交戦しつつなるほどと頷くものの――。
「いいや、ハッタリだ。そんな戦力がどこにある?」
屍体人形を操っていた剛浚は、ようやく息が整ったのか、自らも戦闘を再開。
泥で汚れた鬼神具、〝輝く角を持つ冠〟を被り直すや、朱蘭の足元を狙ってサッカーでいうところのスライディングタックルのような姿勢で飛び込み、懐から大量の蝿を浴びせかけた。
「なんだい、ぶんぶんと五月蝿いねえ」
朱蘭が酒を飲みながら、ゆらゆらと舞うような円の動きで金棒を振り回し、蝿を叩き落とすも――。
剛浚もまた背中から伸ばした、使い魔の蠅を束ねた二本の触腕で追撃して叫ぶ。
「クマ国正規軍はヒスイ河の戦いで勝利したものの、司令官の左玄チョウコウ、陸軍を率いる芙蓉コウエン、空水部隊をまとめる甲賀アカツキら首脳陣が負傷して動けない。
クマ国の反政府団体〝前進同盟〟が派遣した黒騎士と、結婚詐欺師の離岸亜大と、エセ執事の晴峰道楽はガッピ砦にいる。
そして、〝完全正義帝国〟には、わしが防衛を依頼した人公将軍リョウグンをはじめ、リノーとゼンビンの配下がまだまだ残っているのだ。
甥の四鳴啓介ひとり御せなかったお前など脅威に値しないはず。どうやってキソの里まで近づいたのだ?」
剛浚の指摘はもっともだろう。
レジスタンスはあくまで民間の有志が集まったことから、部隊行動を取れる指揮官も一般の戦闘員も、〝完全正義帝国〟と比べてずっと少ないという致命的な弱点をかかえていたからだ。
「確かにレジスタンスは弱い。アタシ達だけじゃキソの里解放なんて、無理だったがね。六辻剛浚、お前がポカをしたのと、何よりもそこにいる出雲桃太君と建速紗雨ちゃんのおかげさね」
あとがき
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