第856話 ベテラン冒険者二人、因縁の清算
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「〝聖職者級人形〟が破壊されたのは誤算だったが、我が策なれり!
わしを追い詰めたとでも思ったか。ここまで後退したのは、〝騎士級人形〟を使って、貴様を殺すために他ならない。
晴峰道楽、まだ戦いは終わっていないぞっ。〝君主〟と〝執事〟。どちらの役名が優っているかなど、言うまでもないはずだあ!」
地球日本の元勇者パーティ〝SAINTS〟の重鎮ながら、異世界クマ国で百万人を殺傷したテロリスト団体〝完全正義帝国〟の幹部にまで成り下がった男、六辻剛浚は、伏兵を利用して反撃に出た。
「フェフェフェ。七罪家に伝わる勇者の秘奥、〝影の使役術〟は確かに強力だろう。だが、知っているぞ。エセ執事、お前は七つの大罪を冠する影の武器のうち、〝傲慢の剣〟にしか適性がなかったはずだっ。接近戦しかできない無能があ、偉大なわしに叶うはずなどなかったのだああ」
〝騎士級人形〟と呼ばれるキメラ型屍体人形の獅子を模した口から、真っ赤に燃える灼熱の砲弾が射出され、川の水を蒸発させた。
「なるほど、確かに私が使える〝影の使役術〟は確かに〝傲慢の剣〟だけ。ですが、それゆえにこそ至った妙義を見せましょう」
一方、レジスタンスを率いる白髪の老執事、晴峰道楽は空中に剣山、あるいは、シャンデアリア状に影の剣を展開して砲撃を一瞬だけ防ぐや、すぐさま足場に使って、その場を離脱。
「GAA?」
それどころか、剛浚を飛び越え――鬼神具である〝迦楼羅の足袋〟を履いた足で一体のキメラの顔面に蹴りを入れ、半壊させたではないか?
「GAAA!?」
道楽は一体の〝騎士級人形〟を損傷させたその足で再び跳躍。たてがみから雷を発して迎撃しようとする、もう一体の獅子人形の首元をかかとで踏み抜き、誘爆させて中破に追い込み――。
「GAAAAAA!?」
更には、口笛をぴゅーと吹くや、さきほど足場に使った空中の剣山、あるいはシャンデリア状に展開した無数の影の剣を落下させ、剛浚を援護しようと不用意に近づいてきた最後のキメラ戦車を大破炎上させる。
「六辻剛浚。貴方は先ほど、君主と執事。どちらの役名が優っているかなど、言うまでもないと言った。
しかし、執事に愛想を尽かされる無能な暗君など、事実にも伝承にも、ありふれています。
いいかげん、玉座から降りる時間ですよ。貴方の首は柱に吊るされるのがお似合いだ!」
道楽は、腐れ縁の剛浚が操る強化戦車型キメラ三体のうち二体を損壊させ、最後の一体を撃破し、その余力をもって、剛浚に迫った。
「長い因縁もこれで仕舞いです。私は戦いに生きることを選び、貴方はそれ以外に浮気した。勝敗なんて最初から見えていた。鬼の力を使い過ぎて、鬼神具〝輝く角を持つ冠〟なんてモノノケに魂を奪われる前に、私の手で介錯してさしあげましょう」
ベテラン冒険者の一撃は誤ることなく、蠅の絨毯に乗って着飾ったエセ貴族へとのび、角冠をかぶる首をおとした。
「なるほどその通りだとも、エセ執事。
戦うことと忠義を尽くすことしか興味のなかった貴様。
己の人生を生きることに楽しみを見出したわし。
どちらの視野が広いかは、言うまでもない」
だが、切り離された剛浚の首はバラバラに崩れながら、高笑いをする。しわがれた声には明白な敵意と勝利の確信が宿っていた。
「なっ、偽物にすり替わったっ!?」
「引っかかったなあ! わしの本領は直接戦闘だけにあらず、使い魔の使役よ。どれだけ駒を失っても構わない。最後に立っている者が勝利者なのだ」
あとがき
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