第854話 桃太、紗雨と聖職者級人形の激戦
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「くそ、こうなったら、〝聖職者級人形〟を呼び寄せるまでだ」
元勇者パーティ〝SAINTS〟の重鎮ながら、テロリスト団体〝完全正義帝国〟の一員へと転落した六辻剛浚は、対抗するレジスタンスの指揮官となった古馴染みの冒険者、晴峰道楽によって追い詰められた。
剛浚はやむを得ず、もう一つの切り札……二対四枚の羽と長い鼻をもつ蠅と象が融合した全長三メートルの新たな屍体人形〝聖職者級人形〟を招こうとする。
されど戦士としては優秀だが、将帥としての視野に欠けた彼は、これまで同様に致命的な悪手を選んでいた。なにせ頼りになる従者は、この時、レジスタンスのエース二人と交戦中だったのだから。
「六辻剛浚、アンタが造った〝聖職者級人形〟は確かに強い。重装甲、高速、近接火力、どれをとっても一級品だ。けれど、巨体だからこそ、小回りはきかないという弱点がある」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、蠅と象を重ねたような屍体人形が二対四枚の羽を唸らせながら背を向けたところへ、ロケットが噴射するかのごとき勢いでドロップキックを見舞った。
「BUOOO?」
〝聖職者級人形〟は主人の元へ向かおうとしたところに奇襲を受け、あわてて振り返ってマンモスがごとき牙で阻もうとしたかが、命令と護身の二律背反に陥って動きがひどく散漫だ。
桃太は全長三メートルの巨体を両脚で蹴りつけると、そのまま空中で一回転、オーバーヘッドキックの要領で追撃し、地面へ叩き落とした。
「ほあたたたっ。我流・鎧徹し」
桃太のターンは終わらない。
衝撃波を込めた左右のパンチを連打し、ゼロ距離から、装甲無視の衝撃波を叩き込む。
「BUOOO!?」
〝聖職者級人形〟も、これにはたまらず絶叫。
被害甚大とみて、剛浚の命令より自己防衛を優先するようだ。
重い牙と長い鼻を振り回して桃太を振り解きつつ、ライフル弾のように螺旋を描きながら飛び立って押し潰そうとするが……。
「サメっ、サメエ。華麗なサメには、そんな力任せな攻撃なんて通用しない。ミズクモイトの術サメエ」
「BUOOOOO!?」
桃太はあくまで囮。
本命は、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨だ。
彼女は〝聖職者級人形〟が中途半端に飛び立とうとしたところを、焚き火に飛び込む虫も同然と張り巡らせた網で絡めとり、再び墜落させて拘束した。
「超重量で重装甲なお前は、空を飛んでいる限り無敵サメエ。だけど、こうやって地面に引きずりおとしてしまえば、ただの重い的なんだサメエ。テクニカルでアートな戦い方を教えてあげる。サメぶんしんからのぉ、ドリルアタック!」
紗雨は足に水を巻きつけて掘削器のように武装するや、一〇を超える分身体を作り上げて共に突撃。四方八方から穴をこじ開けて、二対四枚の羽根をむしりとった。
援護しようと駆けつけてきた漆黒のフルプレートアーマーで武装した黒騎士や、式鬼使いの離岸亜大が「それパワー技!」「テクニカルでもアートでもないゴリ押し!」とツッコミを入れたが、些細な問題だろう。
「紗雨ちゃんの言うとおりだ。翼を失ったお前など、もう怖くはない。乂から教わったプロレス技を応用して、と!」
「BUOOOOOOOO!!??」
〝聖職者級人形〟が紗雨を打ち払おうと、不用意に鼻を伸ばすが――。桃太は象のごとき鼻に腕を絡ませて、怪物の勢いを利用して浮かし、巻き投げの要領でぶん投げる。
「我流・直刀からの、シャークブレードでどうだ!」
その直後に、足裏から衝撃波を放って追撃。装甲の薄い鼻を切り裂きながら、シャークヘッドを模した水の刃を頭部にねじ込んだ。
「空飛ぶ象さん人形、アンタの造形は悪くはなかったけど、これで仕舞いだあ!」
「BUOOO!?」
あとがき
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