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第852話 高ぶりは滅びに先立ち、誇りは倒れに先立つ

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「六辻剛浚、調子に乗っているところを何ですが――。

 百歩譲って、〝過去の貴方が私よりも強かったこと〟は認めるとして、今ではその力も全部、鬼神具である〝輝く角を持つ冠シャイニング・ホーンドクラウン〟のおかげでしょう? 空っぽなのに傲慢が過ぎて痛々しい。

 我が敬愛すべきかつての主人がそらんじた旧約聖書に曰く、〝高ぶりは滅びに先立ち、誇りは倒れに先立つ〟そうです。まさにお前のことではないですか?」


 レジスタンスを率いる白髪の老執事、晴峰道楽はるみねどうらくは、先ほどまで死の一歩手前にいたにもかかわらず、たったひとつしかない命の危機すらも楽しむように笑みを絶やさない。

 その一方で、元地球日本の勇者パーティ〝SAINTS(セインツ)〟の重鎮ながら、いまやテロリストに落ち果てた六辻剛浚ろくつじごうしゅんは、まるで青春を取り戻すかのようにはしゃぐ旧友がなおのこと許せないのか、空飛ぶ蠅でつくりあげた絨毯じゅうたんの上で地団太じだんだを踏んだ。


「だ、誰が傲慢だ。下賎なエセ執事風情め、その素っ首を叩っ斬ってやる」


 これまでの剛浚であれば、離れた場所で〝蝿兵士フライ・ソルジャー〟を指揮していれば、比較的安全に道楽を消耗させられる、と誤った判断をくだしたことだろう。

 されど、怒りに目がくらんだか、あるいは〝指揮官として戦っては勝てない〟と自覚があったのか? 

 剛浚は、あくまで〝一人の戦士、あるいは冒険者として〟、戦うことを決めたらしく、古なじみの道楽を自らの手で仕留めるべく猛然と接近した。


「ほう、そうきましたか。剛浚、貴方の戦場における蛮勇さは嫌いではありませんよ。ですが、他人を舐め腐った態度がまさに傲慢なのです。六辻と七罪は元より同格の勇者パーティであり、貴方は代表である詠様の後見人で、私も棟梁とうりょうたる業夢様の懐刀ふところがたな。互いの立場にそう違いはないでしょう?」

「違う! 過去の話はしていない。わしにとって〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の指揮官など踏み台にすぎん。未来において、三世界の支配者となる。この物量、この破壊力、絶対的な差は埋められない。もう一度だ、頭を垂れて許しを乞うがいい。〝多頭竜鞭打ち刑ドラゴン・フロッギング〟!


 剛浚は吠えたけり、蠅を固めてつくりあげた触腕を三六〇度全方位から浴びせかけるも、道楽は揺るがない。

 物量には物量で返すとばかりに、自らの足元に伸びる影から無数の剣を取り出して受け止めた。バキバキと音を立て、互いの得物が赤い霧と黒い雪となって散ってゆく。


「フェっ。そう来ると思ったわっ。〝蝿兵士フライ・ソルジャー〟よ、袋叩きにしてしまえ。いかに勇者の秘奥が強くとも、使い手の体力と精神力は無限ではない」


 剛浚は攻め手に回るや否や、間髪入れずに屍体人形を集めて道楽を圧殺しようと試みた。

 なるほど、理屈の上では正しい。しかし、物事には時に例外が存在する。それを知りながら勘付けなかったあたり、やはり剛浚は将帥としては無能だった。


「「GAA!?」」

「剛浚。貴方の言うとおり、〝影の使役術(シャドーサーバント)〟は消耗しょうもうが激しいのですよ。だから、ガソリンを補給してくれてありがとうございます」


 群れをなす半人半蠅の怪物がブンブンと透明な羽を鳴らしながら道楽の間合いに迂闊に入り込んだ結果、道楽によって即座に首を刎ねられ、剛浚の触腕と同様に黒い雪と赤い霧に変わり、影の刀身へと取り込まれた。


「六辻剛浚、忘れているようですから、改めてご教授しましょう。

 私がかつて所属した勇者パーティ〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟が初代勇者、獅子央焔より受け継いだ勇者の秘奥は、一体多数の戦闘を得意とする〝影の使役術(シャドーサーバント)〟。

 影の武器は切った相手の血と生命力を奪い、己のエネルギーに変える。その強さを思い出してもらいましょう」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>影の武器は切った相手の血と生命力を奪い、己のエネルギーに変える。その強さを思い出してもらいましょう 〝影の使役術〟「ちゅー(吸血中)。ゲテモノじゃなくて美女の血を希望」
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