第848話 新たな屍体人形、聖職者級人形の恐怖
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「フェフェフェ。わしが強いのは天地の理も同然だっ。晴峰道楽、お前との戦いだけではないぞ。新たな指揮個体を生み出したことで、屍体人形の軍団も我が手駒、〝蠅兵士〟として再生される。貴様が頼みとしていたレジスタンスどももここまでだ」
西暦二〇X二年一二月一五日午後。
元地球日本の勇者パーティ〝SAINTS〟の幹部から、テロリスト団体〝完全正義帝国〟の指揮官に落ち果てた老人、六辻剛浚は、古馴染みであるレジスタンスの指揮官、晴峰道楽を触腕で打ち倒したことでいい気になったのか、使い魔たる蠅を束ねた空飛ぶ絨毯に寝転がり、腹をかかえてゲラゲラと笑った。
「我が切り札たる従者、指揮個体に名前がないのもつまらんな。〝輝く角を持つ冠〟で作り上げた新たな屍体人形には、神の使徒たるわしを崇める〝聖職者級人形〟と名付けよう!」
剛浚は、昆虫のように大きな目をギョロギョロと忙しなく動かし、キンキラに着飾ったローブを川風にはためかせながら痩せた胸をはる。
「さあ、裁きの刻はきた。罪人どもは恐れ敬うがいい。我が従者が貴様達を狩り尽くす」
剛浚は蝿と象を組み合わせた鎧姿の怪物に、よほど強い自信を持っているようだ。さっきまで劣勢だったくせに恥ずかしくないのだろうか、といわんばかりの大口を叩いている。
とはいえ、〝鬼君主〟の役名を持つ剛浚が、己が従者として誇るだけのことはあり、〝聖職者級人形〟の能力は高いようだ。
「BUOOO!」
「うわああっ!」
蠅と象が混ざり合った異形の怪物が、マンモスがごとき牙をふるうや、その重量と切れ味の前にレジスタンスの戦士達は真っ二つになり。
「BUOOOOO!!」
「ひぎいいいいい!?」
全長三メートルの巨体を生かし、ブンブンと二対四枚の羽根を鳴らしながら、ライフル弾のように螺旋を描きながら飛翔するだけで、巻き込まれた船員が血煙に変わる。
「ぱ、パワーはあってもデカブツは狙いやすいでやんす。矢と式鬼で、あれっ効かない?」
「銃でうち落としてやる。くそ、なんて装甲だ。見かけ以上に頑丈だなっ!」
レジスタンス部隊を率いて戦うキツネ顔の式鬼使い、離岸亜大も、漆黒のフルプレートアーマーを着込んだ黒騎士も真っ赤な複眼を光らせながら長い鼻を揺らして戦闘を続ける〝聖職者級人形〟には歯がたたず。
「も、もう無理だ。た、たすけて」
「あきらめるなっ。おれたちが戦うのをやめたら仲間がやられる」
亜大が率いる船団や黒騎士が陣頭に立つ陸戦部隊も、〝聖職者級人形〟が〝兵士級人形〟を改造した蝿兵士によって圧倒されていた。
「BUOOOO!」
「「GAAA!」」
〝聖職者級人形〟は使い魔ながら、剛浚はもちろんジョウキョをも上回る適切な指揮と判断で、離散したテロリスト団体〝完全正義帝国〟の軍勢を再掌握し、劣勢を一気に覆したのだ。
「くそ、白い天使もどきから、黒い蝿兵士になった途端、再生力も強さも桁違いだっ。私がしんがりを引き受ける。陸戦隊は牽制しつつ、一度距離を取れ」
「ふ、船が沈んだら終わりでやんす。後退、こうたーい」
レジスタンス一同は、これまでとは段違いの機動力、攻撃力、防御力を発揮する敵軍勢の変化についていけずにバタバタと倒れ、四隻の船もすべて中破してしまう。レジスタンスの命はもはや風前の灯火だ。
「〝聖職者級人形〟だって? どっちかというと、空飛ぶ象さん人形とでも名付けるべきのような……」
「桃太おにーさん、象と呼ぶには蠅の印象が強すぎる。じゃなくて、名前なんてどうでもいいっ。遺体を辱めるにもほどがある。こいつの相手は任せるサメ!」
レジスタンス陣営のエースである、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨は、虐殺を阻止すべく川面を突っ切って突撃、〝聖職者級人形〟の眼前へと舞い降りた。
「この象さん人形さえ倒せば、ひっくり返せるんだろう、我流・直刀っ」
あとがき
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