第844話 七罪業夢の懐刀
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「晴峰道楽、じゃあなにか。お前達はわしと軍勢をわざわざ呼び寄せるために、この砦にこもったというのか!」
「そうですとも、六辻剛浚。自分を皇帝だと思い込んだ哀れな乞食。人公将軍リョウグンとやらが守っているというキソの里も、貴方が無用に兵を持ち出したことで戦力不足。きっと今頃、我らがレジスタンスのリーダー、一葉朱蘭さんが落としていますよ」
レジスタンスを率いる白髪の老執事、晴峰道楽は、テロリスト団体〝完全正義帝国〟の指揮官に落ち果てた古なじみ、六辻剛浚へ冷ややかに告げた。
「そして、貴方が下手くそな指揮をしたせいで、〝完全正義帝国〟の部隊もまた総崩れになっている」
「な、なにを世迷い事を抜かす。キソの里が落ちたなどハッタリにもほどがある。そも我が使い魔で見れば、この戦場での趨勢は明らかだ――なに!?」
剛浚は、ガッピ砦周辺をぶんぶんと音をたてて飛ぶ蠅の目で戦場を俯瞰するも、道楽が指摘した通りに圧倒的に劣勢であると認めざるを得ない。
「進め!」
「「黒騎士様に続けっ」」
「「ひいいい、河へ逃げろ」」
「「GAAAAA」」
漆黒のフルプレートアーマーで武装した黒騎士は、背負った蒸気エンジンを高らかに鳴らし、背中に背負ったオルガンパイプめいた排気口から赤黒い噴煙を流しながら、屍体人形を大振りのナイフでばらばらに粉砕。レジスタンスの陸戦部隊を率いて、テロリストの指揮官達を追い立て――。
「いいですね。このまま挟撃に持ち込むでやんす」
「「離岸様の式鬼にタイミングを合わせるんだ」」
「「うわあああ、もうバラバラに逃げるしかない」」
「「GAAAAA」」
キツネ顔の式鬼使い、離岸亜大は、四隻のジャンク船団と共に、逃亡者達の退路で待ち受けて、無防備な横っ腹に砲撃を浴びせる。
「我流・水長巻、改め……」
「シャークブレードなんだサメエ」
「「ど、どうしてこんなことにっ!?」」
最後にレジスタンス側のエース。額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、サメの着ぐるみをかぶる銀髪碧眼の少女、建速紗雨は、サメの頭を模した水の大剣を振り回し、四散した悪党どもを的確に撃破してゆく。
「「いったいどこで間違った」」
「「ジョウキョのせいだ。剛浚のせいだ」」
テロリスト達はガッピ砦を包囲していた時といっぺんし、ただただ嘆きと恨み節をぶちまけながら這いずりまわった。
そんな追撃戦が、どれだけの時間続いたか。太陽が南天を過ぎて西の空にかかる頃――。
「晴峰さん、貴方の怖さは業夢さんに似ているよ」
「確かにそっくりサメエ」
桃太と紗雨は、山中から川辺までの長い戦場を突っ切って、道楽と剛浚が目の届く距離まで近づいていた。
「ふふふ。主人を倒した貴方たちにそう呼ばれるのは複雑ですが、過分な評価です」
白髪の老執事はからからと笑う。
その愉悦を含んだ微笑みは、どこか子供のようで、彼が大悪党と評した元勇者パーティ〝K・A・N〟のリーダー、七罪業夢とそっくりだった。
「なにせ私は才能がなかったためか、常に主人とは別の戦場に行かされたのですから」
桃太と紗雨は、「ああ、強すぎて裏切りが怖かったのか」と一瞬思ったものの、それだけが理由でないと、これまでの経験から理解できた。
「そうか、晴峰さんは即断速攻。業夢さんは長考しながら腰を据えて戦う持久戦タイプだから、合わないっちゃ合わないのか」
「桃太おにーさんにとっての戦闘艦トツカと同じかも。別行動が一番の適材適所なんだサメエ。そして、そういった判断が出来ないから、剛浚って人は詠ちゃんを閉じ込めたのに、リーダーとして失敗を重ねたんだサメエエ」
あとがき
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