第843話 ガッピ砦水攻めの真相
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「は、晴峰道楽め。執事なんぞとぬかし、大将に成れなかった寒門の貴様とは違う。わしは八大勇者パーティのひとつ、六辻家に連なる偉大な将官だ。現に出雲桃太というイレギュラーがたまたま援軍に間に合わなければ、わしは貴様からガッピ砦を奪い取り、その首をさらしていたのだから!」
地球日本で誰もがうらやむ名門勇者パーティ〝SAINTS〟の重鎮ながら、いまやテロリスト団体〝完全正義帝国〟の指揮官に落ち果てた六辻剛浚は、レジスタンスを率いる白髪の老執事、晴峰道楽と交戦し、手痛いダメージを受けた。
剛浚は腹に蹴りの直撃を受けて咳き込みながらも、使い魔の蠅で構成した空飛ぶ絨毯に転がり込んで飛翔。
牽制代わりに屍体人形の一団をぶつけてぜえぜえと息を整えながら……。昆虫のように大きな目をぎょろぎょろと動かして、招かれざる客を恨めしげに睨みつけた。
「紗雨ちゃん、行くよ!」
「サメっサメエ。二人の呼吸はバッチリなんだサメエ」
「「GAAAAA!?」」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、サメの着ぐるみを被った銀髪碧眼の少女、建速紗雨は屍体人形をボコボコに吹っ飛ばし……。
「こ、この二人、強すぎる」
「征天将軍ジョウキョも、あの参謀長リノーも勝てなかったのに、我々じゃあとても無理だ」
二人はテロリストの指揮官達を捕縛してゆく。
彼らが剛浚の邪魔をしたのは、今回のガッピ砦攻防戦が初めてではない。
「そうだ、あのうざったいガキどもが、すべてを狂わせた」
出雲桃太という無名の研修生が、勇者パーティ〝C・H・O〟のクーデターを鎮めたことで、剛浚の栄光に満ちた日々ときらびやかな生活は、終わりを告げた。
国民は若き英雄の台頭に喝采をあげて、旧き権力者たちへの畏怖を忘れ――。
冒険者組合の臨時代表となった獅子央孝恵は、人々の支持のもと、八大勇者パーティへが有する莫大な利権にメスを入れて解体し始めたのだ。
「やれやれ、時流が読めていないにもほどがある。
剛浚。やはり貴方は戦士としてはともかく、政治家にも指導者にもまるで向いていませんよ。
確かに出雲様がきっかけとなったのは事実でしょう。ですが、仮にも日本国を守るために組織された勇者パーティが、ほかならぬ日本国に牙を剥いたんです。
そんな危険な団体は、国民に見切りをつけられて当然でしょう? だからこそ業夢様は異世界クマ国へ目を向けて、何もわからない貴方は無為のまま負け続けたんですよ」
剛浚の視野狭窄に、道楽は少しばかり寂寥感をにじませて肩をすくめた。
「今回のガッピ砦の件もそうだ。たまたま援軍が間に合わなければなどと言っていましたが、耄碌したにもほどがある。私がこのガッピ砦を水攻めしたことも、修復せずにボロボロで待ち受けたことも――すべて最初から私たちの作戦通りでした」
「なん、だと?」
道楽が軍刀で触腕をさばきながら接近しつつも、ネタバラシとばかりに愉快そうに解説を始める。
「だって、要塞化されたキソの里をまともに攻略するのは手間でしょう? クマ国のレジスタンスと協力している以上、民間人を人質を取られるのは困る。だから貴方というバカが大軍を引き連れて包囲できるよう、ガッピ砦という隙だらけの拠点を見せつけたら、貴方はまんまとハマったんですよ」
古馴染みが明かした真実を聞いて、剛浚もさすがにショックだったらしい。
「晴峰道楽、じゃあなにか。お前達はわしと軍勢をわざわざ呼び寄せるために、この砦にこもったというのか!」
「そうですとも、六辻剛浚。自分を皇帝だと思い込んだ哀れな乞食。人公将軍リョウグンとやらが守っているというキソの里も、貴方が無用に兵を持ち出したことで戦力不足。きっと今頃、我らがレジスタンスのリーダー、一葉朱蘭さんが落としていますよ」
あとがき
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