第839話 桃太と紗雨、征天将軍ジョウキョを倒す
839
「征天将軍ジョウキョ。あんたも強かったが、地霊将軍ダンキンほどに冷静じゃなかったな。黒騎士と離岸さんが、引っ掻き回してくれたおかげで、今ならやれる。これだけ密集した敵がいるなら、使うのこいつだ。螺子回転刃を受けるがいい!」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、テロリスト団体〝完全正義帝国〟の前線指揮官、征天将軍ジョウキョがサメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨が生存していたことに驚いた隙をつき、乾坤一擲の大技を繰り出そうとする。
「桃太おにーさん、やっちゃえサメエエ」
桃太は紗雨の声援に背を押されるように、黒い瞳を青く輝かせながら両手を掲げ、周囲の空気の乱れをかき集め、さらには友軍である黒騎士や、離岸亜大が生み出した雷を巻き込んで、巨大な反射結界を構築した。
「まて、一体や二体なら構わんといった。しかし、これだけの式鬼を、ドクロ蛾を育て集めるのにどれだけの時間と金をかけたのか、わかっているのか? やめろ、やめてくれえええ」
ジョウキョの悲鳴がこだまする中、反射された雷は、雷鳴となって曇り空へ巻き上がり、それが更なる爆発を招いて、再度の反射を繰り返し、空の一角を爆発と衝撃の大渦に飲み込んでゆく。
「我流・螺子回転刃〝御雷〟!」
「GA! AAAAAA!!」
ジョウキョも、彼が操るドクロ蛾の式鬼も、支配下においた全戦力の三分の一たる一〇〇〇体近い屍体人形も……。
もはや桃太が作り上げた、半球状の反射結界に閉じ込められた、ハンバーグステーキの具材に等しく、雷と衝撃の刃によって殲滅された。
「あ、あ、こんなああ。出雲桃太め、こうなったら貴様の大事なものを奪ってやる!」
ジョウキョはおそるべきことに、鬼神具である歯車の鳴る巨大な円筒型ランタンで式鬼を何重にも重ねて防御に専念し、カシナートにも耐え抜いた。
そして、わずかに残ったドクロ蛾の鱗粉をサブウェポンとして腰に刺していたらしいナイフにこすりつけて、紗雨に斬りかかった。
「むふふーっ。桃太おにーさんにとって大事だなんて、良いこと言ったサメエ。その一言に免じて痛くなく倒しちゃう。これぞサメ回転投げなんだサメエエ」
しかしながら、紗雨は膝蹴りでナイフを叩き落として組み付き、水の柱でミノムシに似た鎧をペキペキと音を立てて破壊しながらぶん投げる。
「あ、あ、あああっ。建速紗雨っ、だが、まだだ。まだ奥の手が残っている」
ジョウキョはくるくると螺旋を描いて泥地に叩きつけながらも、半壊した鬼神具、火取り虫のランタンから三つの歯車を抜き出して投げつけた。それらは周囲に飛散した毒鱗粉を吸い込みながらサメの着ぐるみ少女に向かうも……。
「毒は浄化できるんだサメエエ!」
紗雨が水柱の結界で弾き、毒も無力化したため、ことなきを得た。
「「……!?」」
もっとも、桃太が螺子回転刃の第二打を用意し、黒騎士が梵字を刻んだ特製弾頭を弾込めし、亜大が鳥型の式鬼を飛ばそうとしていたため――。
紗雨に通じなかったことで、むしろ命拾いしたと言えるかも知れない。しかし、それがジョウキョ当人にとって良かったかは、わからない。
「これが建速紗雨、これが出雲桃太、レジスタンスどもめ、くっそおおおおおっ」
「ミズクモイトの術。これで終わりサメエエ!」
紗雨はジョウキョを水の糸で簀巻きにして無力化に成功。ここにガッピ砦を包囲していた、完全正義帝国の指揮系統は半壊。
「「うおおお、やったぞ」」
「「ともに戦えて光栄です」」
桃太達は、歓喜の叫びをあげるレジスタンスと共に逆襲を開始する。
この場に残る敵の有力指揮官はただひとり、元八大勇者パーティ〝SAINTS〟の重鎮、六辻剛浚のみとなった。
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
本年もお世話になり、心よりお礼申し上げます。
年始はお休みをいただき、一月六日、月曜日より更新を再開いたします。
来年度もどうぞよろしく!
ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)





