第832話 晴峰道楽が、過去〝三連蛇城〟に居た理由
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西暦二〇X二年八月一五日正午過ぎ。
レジスタンスの一員である白髪の老紳士、晴峰道楽は、窮地にあった自分たちを救うべく、包囲されたガッピ砦へ援軍に駆けつけた四人の若者が奮戦する光景を見てテンションをあげ……。
「お調子乗りの離岸さんはともかく、出雲桃太さん、建速紗雨さん、黒騎士。若者達の頑張りを見ると、心躍りますね。私も先達として負けてはいられない」
異世界クマ国で百万人を殺傷したテロリスト団体、〝完全正義帝国〟が擁する天使を模した屍体人形を一〇体、右手に握る軍刀で瞬く間に寸断した。
「晴峰道楽、身勝手なことを言うな。七罪業夢にくっついた金魚の糞、ドブネズミのごときオイボレめっ。一度は日本国と冒険者組合をただすため、わしに与してクーデター軍に参加したくせに、なぜ敵対する!」
テロリストの一員にまで落ち果てた、元勇者パーティ〝SAINTS〟の重鎮、六辻剛浚は、地球の冒険者時代から因縁のある道楽にくってかかり、燭台めいた角剣をふるって蝿の使い魔を生み出し、〝兵士級人形〟二〇体に潜り込ませて攻撃させた。
「ちょっと、人聞きの悪いことを言わないでください。七罪家にとってあのクーデター騒動は、クマ国ヨシノの里をぶんどる作戦の、ていのいい囮に過ぎなかったんです」
「なにっ。わしの義挙が、七罪業夢がヨシノの里をぶんどる作戦の囮だっただとっ!?」
道楽が〝兵士級人形〟の腕が変化した槍をさばきつつ暴露した告白に、剛浚は大きな目をぎょろぎょろと回転させながら真っ青になるものの――。
「「知ってた(サメエ)」」
他ならぬ剛浚の使い魔を介して届いた、ガッピ砦周辺で〝完全正義帝国〟と抗戦中の四人は揃って、肯定の声をあげた。
「そういや勇者パーティ〝K・A・N〟の人たちがそんなこと言っていたなあ」
かつて冒険者パーティ〝W・A〟を率いて、〝K・A・N〟の暴挙を阻止した少年、出雲桃太は屍体人形をサッカーボールのように蹴り飛ばしつつ、額に刻まれた十字傷に触れてぼやき――。
「なんならカムロのジイチャンにヨシノの里で捕まった犯人たちが、クーデター軍への参加はフリだったって自白したサメエ」
クマ国代表の養女であるサメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨が右手に巻いた水ドリルで陶器めいた〝兵士級人形〟の胴体を粉砕しながら当時の騒ぎを思い返し――。
「オウモさんも途中で異常さには気づいていたようだがな」
「そもそもクーデター軍に参加した連中、その大半が犯罪者崩れや過激派活動家でやんしたからね。ほかにも変なことやっていたやつは多かったんじゃないでやすか?」
実際に〝SAINTS〟の拠点、〝三連蛇城〟攻防戦に参加した、漆黒のフルプレートアーマーで武装した黒騎士や、途中で剛浚を裏切ったキツネ目の式鬼使い、離岸亜大までが容赦のないツッコミを入れた――。
「おお、気づかれていたのなら話は早い。剛浚、私が貴方に味方したように見えたのは、業夢様の命令で六辻家の拠点である〝三連蛇城〟に潜入し、まんがいちのために破壊工作に励んでいただけのことです。その主人が貴方がたを〝警戒する価値なし〟と見放したから出ていって、別の団体に拾われた。ほら、何も不思議はないでしょう?」
道楽は剛浚が慌てふためく隙をついて、蝿の使い魔が潜む〝兵士級人形〟の心臓部を軍刀で貫いて次々に撃墜。本命はお前だとばかりに剛浚へ斬りかかり、燭台めいた角剣と火花を散らす。
「なにが、なにが破壊工作だっ。晴峰道楽。〝三連蛇城〟で起きていた不審なトラブルは、お前の仕業だったのか。その年になってまで、現場働きしかできん下っ端が、支配者たる我の足を引っ張るんじゃない。こうなったら六辻家に伝わる勇者の秘奥、〝空中浮遊〟の力を見せてやる」
あとがき
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