第831話 意表をつく道楽の奇襲作戦
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「晴峰さん達に負けてはいられない。このまま、反撃するぞ!」
「赤い鱗粉の麻痺毒は、ちゃきちゃき無力化しちゃうサメエエ」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨は、戦功に逸るテロリスト団体、〝完全正義帝国〟と乱戦状態に陥ったが、的確なポジショニングと連携で互角以上に戦っていた。
激戦の最中であり、桃太達から離れた場所にいるものの、一行の叫びが〝完全正義帝国〟がばらまいた蠅の使い魔や屍体人形を仲介して聞こえたのだろうか?
「おや、こちらからは毒鱗粉で見えませんが、まだ通信が繋がっているのですね。はじめまして、出雲桃太様。以前は勇者パーティ〝K・A・N〟代表、七罪業夢様のもとで働き、今はレジスタンスに拾っていただいた執事の、晴峰道楽と申します」
「「なんだって、多くの同胞を救ってくれたという、あの出雲桃太様が近くにいるのか?」」
「「あの英雄が見ておられるのか、みっともないところはみせられないぞ」」
ガッピ城を包囲するテロリストの総大将、六辻剛浚が使い魔の蝿を媒介に、上空の曇り空に映し出した中継放送では、執事服をきた初老の男、晴峰道楽とレジスタンスメンバーが、〝完全正義帝国〟のテロリスト達が操る屍体人形と切り結びながら優雅に一礼する。
「見ての通り、非戦闘員は既にガッピ砦を脱出させており、戦闘員もこのように屍体人形の中に隠れて無事、奇襲に成功しました」
「よくやれましたね……」
さしもの桃太も、そんな奇想天外な作戦は想像すらしなかった。
「ふふふ。六辻剛浚という男は、蝿という使い魔を用いるくせに、昔から潔癖症でしてね。上流から流れてきた屍体人形には触れもしない。偵察もおざなりだから、ちょっと偽装するだけで、容易にガッピ砦から脱出できました。元が屍体の人形といえ、陶器のように加工されていますからね。それほど匂わず助かりました。本物でも同じことをやるつもりでしたから」
「マジか!?」
衝撃を受けたのは桃太だけでなく、彼の仲間達も同じだ。
「肝が太いんだサメエエ!?」
「エセ執事、一報いれて、いや秘密作戦じゃ無理か」
「そこまでするとは、たいした男だ」
紗雨はもちろん、ガッピ砦の残骸付近で戦っている漆黒のフルプレートアーマーを身につけた黒騎士や、ヒスイ河に向かって移動中のキツネ顔の式鬼使い、離岸亜大もそれぞれ刺激を受けたらしい。
一行の賞賛に満ちた反応に対し、使い魔らしき無数の蝿によって上空に投影された道楽は、なんてことのないように軽やかに言い放つ。
「すべては仲間を守り、勝つためですよ」
この一言が、桃太達のやる気に火をつけた。
屍体人形の下敷きになって隠れても、チャンスを掴もうとする老執事の心意気に打たれたのだ。
「征天将軍ジョウキョ、覚悟!」
「尾黒狗、走れ。これで負けたらダサいでやんす」
「ああいう台詞、一度は言ってみたいものだね」
「あの貪欲さはサメっぽくてカッコいいんだサメエエ!」
四人は奮起して、征天将軍ジョウキョが使役する毒鱗粉をばら撒く式鬼ドクロ蛾と、その部下達が操る天使を模した屍体人形三〇〇〇体を相手に挑みかかり、バッタバッタと切り伏せた。
「くそっ、剛浚め。あの無能に足を引っ張られている」
「「これだけの数で負けてたまるか!」」
「「やつらなんで毒が効かないんだ、おかしいだろ」」
「「BATATA!?」」
道楽は、桃太達がわずか四人で〝完全正義帝国〟の軍勢を大混乱に陥れる光景を見て、白い顎ひげの生えた口元をゆるめた。
「お調子乗りの離岸さんはともかく、出雲桃太さん、建速紗雨さん、黒騎士。若者達の頑張りを見ると、心躍りますね。私も先達として負けてはいられない」
あとがき
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