第830話 逆襲への道
830
「あ、あれが晴峰道楽。七罪業夢さんの懐刀だった人かっ」
「「屍体人形の山の中とか、なんてところに隠れているのおおっ」」
西暦二〇X二年一二月一五日正午。
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太とサメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨は驚愕の声をあげた。
テロリスト団体〝完全正義帝国〟の指揮官となった六辻剛浚に爆撃され、ガッピ砦と運命を共にしたと思われた、晴峰道楽らレジスタンス一行がまさかの包囲網の外から現れたのだから。
「と、砦から反応がなかったのは、そもそもいなかったからでやんすか?」
これには、道楽の同僚であるレジスタンス指揮官、離岸亜大もキツネのように細い目を大きく見開きながら、隠れ潜んだ木陰でジタバタと転げ回り……。
「失敗作だった自動迎撃装置並みのクソエイム、と思っていたら、本当にアレを使っていたのか!」
漆黒のフルプレートアーマーで武装した黒騎士も、赤い視覚素子を光らせて、山中に点在する狙撃ポイントを探しつつ、想定外の状況に機械音声を震わせる。
「「うわあああ! ありえない!!」」
そして桃太達以上に混乱していたのが、背後から奇襲を受けた〝完全正義帝国〟だった。
「い、出雲桃太と晴峰道楽を合流させるな」
「ジョウキョ将軍、先に剛浚を助けに行った方がいいんじゃないか」
「だがしかし、手柄首が目の前にいるんだぞ。それを見過ごすのか?」
前線指揮官である征天将軍ジョウキョが、あまりに目まぐるしく変わった戦場を把握できないのか、他の指揮官達と口論になり、指揮が停滞したのだ。
「いつまで迷ってるんだ、ちゃんと指示を出せよ」
「こうなったら早いもの勝ちだ。地球日本の勇者、出雲桃太に、クマ国代表の娘、建速紗雨。前進同盟代表の懐刀、黒騎士……」
「どいつもこいつも、エセ執事より、褒美がもらえるってものさ」
ジョウキョは味方の命すら容易に奪う暴君めいた性格が災いして、ゼンビンやダンキンほどの人心掌握能力はなかったらしい。部下達は戦功にはやるあまり、それぞれの欲望にかられて動き出す。
〝完全正義帝国〟は、三〇〇〇体もの屍体人形を保有しながら、秩序だった行動が取れなくなり、味方同士で争いながら、桃太達すら巻き込もうと押し寄せてきた。
「ただでさえドクロ蛾の鱗粉で視界が悪いのに、このままじゃ、乱戦になるよ。皆、注意して」
桃太は警告を発しながら、前線で食い止め……。
「桃太おにーさん、こんなこともあろうかと、さっきから麻痺毒を無効化する術を作ってみたんだサメエ。紗雨も続くよ、ふぉーヘッディッドしゃーくドリルあたっくからのミズクモイトの術!」
「「BATATA!」」
紗雨は両手足にサメの頭に似せた四つの水ドリルを巻きつけて、踊るように連続攻撃で迫る式鬼・ドクロ蛾と、屍体人形の軍勢に穴をあけたあと、水でできた糸を投げて進行を阻み……。
「僕は建速さんが消火したガッピ砦の残骸に移動して、高所から式鬼で撹乱しやす。黄色い毒鱗粉は眠りでしたっけ。以前申し上げたとおり、式鬼・錐嘴鳥は、その手の毒に耐性があるのでそちら方面はお任せあれ」
「「BATATA?」」
パニックになっていた亜大が冷静さを取り戻したのか、反撃のため鳥型の式鬼にドクロ蛾をふり切らせて、次なる一手をうち……。
「ならば青い鱗粉の方面は、私が務めよう。この蒸気鎧は機械仕掛けであるが故に、幻惑の毒などききはしない」
「「BATATA!?」」
黒騎士も予め見つけていた狙撃ポイントを移動しながら、義手から抜き出した銃を構え、防衛線を越えようとする敵を撃ち落とす。
「晴峰さん達に負けてはいられない。このまま、反撃するぞ!」
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)





