第829話 生と死の狭間で
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「フェフェフエ。燃えろ燃えろ、すべてを灰にしてしまえ」
「「な、なんてことをー?」」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太とその仲間達は、窮地に陥ったレジスタンスを救出すべくガッピ砦に到着するも、テロリスト団体〝完全正義帝国〟の指揮官となった六辻剛浚が操る屍体人形によって救援対象を爆撃されてしまう。
「サメエエ、水をかけても焼石に水サメエエ。これじゃ中にいる人が助からないサメエエ」
サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨が慌てて水術で消火を試みるものの、桃太達のいる方角への延焼を阻止するのが精一杯だ。
「あ、あのエセ執事がこんな最期をとげるなんて」
「ゆるさんぞ、六辻剛浚!」
戦闘員が減りすぎて、自動迎撃装置に頼っているんじゃないか?……という疑いまであったガッピ砦は、空飛ぶ屍体人形が投げ落とした爆弾に対抗するすべもなく、あっという間に燃え尽きてしまった。
「フェフェフエ。不穏分子はいちどに対処するに限る。こうして合流したところを一網打尽にすれば、手間が省けるし、なにより希望を与え、奪うことが楽しいのよ!」
無数の蝿によって、空に投影された剛浚は、フードをばさりととって……。
「あのクソ同期。いまいましい晴峰道楽は焼き殺した。貴様達は新しい屍体人形にしてやろう。わしの鬼神具が生み出す蝿を潜り込ませれば、操るのに蛇糸も不要、ボロ雑巾になるまで使いつぶしてくれる!」
桃太達の前で勝利宣言とばかりに、目ばかりがギロつくふてぶてしい顔をあらわにして陰険に笑った。
しかし、その直後、立体映像の背景で異常が生じ、別の声が入り込む。
「まったく、これだから革命家気取りの成金はいけない。わざわざ新しい犠牲者を出さずとも、川辺に山積みじゃないですか。脳みそが妄想と野心で茹だっているから、こんな簡単な策にひっかかる」
川辺に打ち捨てられた屍体人形の中から、バッと伏兵が飛び出し、あたかも一筋の矢が如く、剛浚に襲いかかったではないか?
「な、なんだ貴様らはあああ?」
「六辻剛浚、まさか古馴染みである私の顔を忘れましたか? 晴峰道楽とレジスタンス一同。貴方がさっき焼き殺したはずの者ですよ。油断してくれて結構なこと、おかげで後ろががら空きです」
桃太達が見上げる立体映像には、屍体人形に見せかけるために着込んだボロを脱ぎ去ったレジスタンスの戦士。
上等そうなモーニングコートを羽織り、足には対照的な白足袋と草鞋を履いた、アンバランスな執事風の初老の紳士がサーベルで屍体人形にきりかかる姿が映っていた。
老兵の踏み込みは風の如く、剣閃は稲光のごとし。わずか一呼吸のあと、一〇体を超える〝兵士級人形〟がバラバラに切り裂かれて散った。
「「GAAA!?」」
そして、彼の部下もよほどに肝が据わっているのか、先頭に立つ執事に続いて屍体人形を狩ってゆく。
「「道楽さんに続け!」」
執事達による想定外の奇襲を受けて、蛇糸を操る完全正義帝国の兵士たちは大混乱に陥った。
「「GAAA? GAAA!?」」
なにせ、剛浚の背後で人形やサイボーグ兵達がボコボコにやられる姿が空に映ったままなのが、混乱を如実に示している。
「あ、あれが晴峰道楽。七罪業夢さんの懐刀だった人かっ」
「「屍体人形の山の中とか、なんてところに隠れているのおおっ」」
あとがき
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