第827話 裏切りを重ねる悪漢、六辻剛浚
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「フェフェフエ、ようやく再発見したぞ。出雲桃太とレジスタンスの諸君。我が名は六辻剛浚。いずれ地球日本と異世界クマ国の覇者となる男よ」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太がガッピ砦を取り巻く森の中から曇り空を見上げると、使い魔らしき無数の蝿が光を発して、灰色のフードをかぶり、燭台がごとき奇妙な角剣をもつ老人の姿が立体映像として映し出されていた。
「こ、こいつが蝿の主人。ガッピ砦を包囲する〝完全正義帝国〟の大将で、詠さんを閉じ込めた悪党か!」
桃太がみたところ、大口を叩く老戦士は餓鬼を連想させるほど極端に痩せ細っていて、クマ国代表のカムロや、ウメダの里の顔役である田楽おでんのような、はつらつたる覇気は見られない。
されど〝鬼の力〟の汚染が進んだのか、赤く濁った目は、尋常ならざる権力や地位への執着によってギラギラと輝いていた。
(年配の敵という意味では、七罪業夢さんやダンキンさんに似ているけれど……)
桃太は、映像越しに剛浚を見上げるも、これまで戦ってきた老人達が持っていた威厳や気風が、まったく感じられなかったことから困惑した。
「哀れなる反抗者ともよ、処刑場へようこそ。自ら墓穴を掘りにくるとは感心だ」
「はっ。日本国と冒険者組合に背信してクーデターを引き起こし、我々〝G・C・H・O・〟や〝W・A〟別動隊との戦いで不利となるや、元勇者パーティ〝SAINTS〟の仲間を見捨てて逃亡した恥知らずめ。お前のような裏切りを重ねる外道がよくも偉そうな口を叩く。あの黒山犬斗と同じように、いいかげん捕まって罪を償え」
桃太の隣にいる黒騎士は、かつて六辻剛浚が築いた拠点、〝三連蛇城〟で、この老人が率いるクーデター軍を散々に打ち破った経験がある。
大将としての責任をなにひとつ果たさず、味方を見捨てて逃亡した哀れで恥ずべき外道だ。軽蔑もあらわに、そう吐き捨てたのも無理はないだろう。
すると、屍体人形を通じて音声を拾ったか、剛浚は神経質そうに手足をぶるぶると震わせた。
「若造め。命は平等ではない。我は黒山がごとき黒幕気取りの無能や、捨て駒の歩でしかない他の構成員と違い、八大勇者パーティ〝SAINTS〟の長に昇りつめた貴重な玉将だ。重要さは語るまでもあるまいっ。すべてのコマは我のためにある」
この剛浚の言い分には、異世界クマ国の代表カムロの養女である、サメの着ぐるみをかぶる銀髪碧眼の少女、建速紗雨もカチンときたらしい。
「貴方は大将に昇りつめたんじゃない。本物の〝SAINTS〟代表である詠ちゃんを軟禁して、好き勝手していただけの偽物なんだサメエ。将棋でいうならば、そもそも正規の駒ですらない、インチキなんだサメエ」
「だまれ、小娘。我がここにいるのが偉大さの証明だ。地球日本では評価されずとも、異世界クマ国では認められたのだ!」
若きサイボーグ少年と、着ぐるみ少女の弾劾が耳に痛かったのか、投影映像に映る目だけがギラつく細身の老人は泡を吹きながら赤面した。
だが桃太からすれば、六辻剛浚の反応こそ、彼がどうしようもない小物であることの証明に他ならない。
「六辻剛浚。〝完全正義帝国〟は、地球、異世界クマ国、異界迷宮カクリヨの三世界を支配しようと企んでいるテロリスト団体だぞ。つまり、地球にとっても異世界クマ国にとっても、ひょっとしたら異界迷宮カクリヨにとってさえ敵だ。そんな奴らに認められて、いったい何が誇れるっていうんだ?」
あとがき
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