第825話 桃太一行、爆撃部隊を火攻めで落とす
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「そうだね。ここは、〝完全正義帝国〟の爆撃部隊を逆に利用して、火攻めを返すのはどうだろう?」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、異世界クマ国で百万人を殺傷したテロリスト団体、〝完全正義帝国〟の猛攻に対して、大胆な反撃を提案した。
「幸いこちらには、紗雨ちゃんという水術の達人がいるから、山火事の心配もないだろう」
「パニック映画みたいで面白い作戦なんだサメエ。まずは、火が必要以上に延焼しないよう水柱で区切るサメエ」
サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨はノリノリで水柱を立てて、不用意に燃え広がることのないよう、戦場を隔離し……。
「次は、俺が衝撃波をこめた手裏剣を投げて音を立てて、火薬壺を持った空飛ぶ屍体人形を招き寄せる」
「それでも外れる〝兵士級人形〟は、僕の式鬼、錐嘴鳥で方向転換させるでやんす」
桃太が爆撃部隊をひきつけるよう、ドーンというド派手な音で撹乱し……。
キツネ顔の式鬼使い、離岸亜大も嘴の長い鳥型の式鬼をビュンビュン飛ばして誘導する。
「最後に、私が火薬壺を狙撃すれば、屍体人形をまとめてドカンだ。戦闘機能選択、モード〝狩猟鬼〟。状況開始!」
大一番を担うのは黒騎士だ。
サイボーグである彼は、鬼神具である右の義腕から一〇〇センチを越えるライフルを抜き出し、視覚素子である左目を赤々と輝かせながら照準をしぼり、狙い違わず編隊の中心個体が持つ火薬壺をズドンと撃ち抜いた。
「「GA! GAAAAAA!?」」
次の瞬間。
三百体を超える屍体人形が、押し合いへしあいしながら、末期の絶叫をあげてボウボウと炎に包まれた。
「「これで火攻めの完成だ」
桃太と紗雨と、黒騎士、亜大は、テロリスト団体〝完全正義帝国〟が爆撃用に持ち込んだ火薬壺を逆に利用することで、眼前へ迫る屍体人形の爆撃部隊を一気に消滅させることに成功した。
「な、な、な、なんてことしやがる。素直に討たれろよおおおっ。おい、そこ、部下のくせに余計な真似をするんじゃない。ゆけ、ドクロ蛾!」
征天将軍ジョウキョも、地霊将軍ダンキンと双璧をなす〝完全正義帝国〟の猛将という看板は伊達ではないのだろう。
桃太達の火攻めにハマったといえ、即座に立て直しを決断。鬼神具たる大きな円筒を光らせ、仔犬ほどもある大きさのドクロ蛾を何十匹とあやつり、毒鱗粉をばら撒くことで暴走しかけた配下を脅しつけ……。
人間サイズもある巨大なドクロ蛾から蛇糸を伸ばし、三〇〇〇体以上にもおよぶ、天使に似せた空飛ぶ屍体人形〝兵士級人形〟を逃亡ルートへ配置することで、軍の規律をギリギリで維持している。
「「くそ、逃げられない」」
「「こんな無能の元で働かなくちゃいけないなんて」」
「「ダンキン将軍さえいらっしゃったら」」
とはいえ作戦失敗を目にした部下達の士気は、言うまでもなく最低だ。ギスギス、ドロドロとした嫌悪に満ちた雰囲気が包囲網中に広がっていた。
今こそ攻勢に出るチャンス、なのだが。
「ようやく道が開いた、のはいいんだけどさ」
「なんか、砦、おかしくないサメ?」
「普通、ここまで派手に戦えば、援護なりなんなりあると思うが」
「あのいけすかないエセ執事の部隊でやんす。昼寝でもしているんじゃ……」
桃太達もまた、不自然に静まり返ったガッピ砦の様子に困惑していた。
「砦にいるレジスタンスは俺たちに気づいていないのかな……」
あとがき
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