第824話 改めて包囲網を突破せよ!
824
「みなさん、申し訳ない。まんまと分断されてしまいやした。
僕が使役する式鬼・錐嘴鳥は、野生種の頃から眠り毒に耐性があるので、黄色鱗粉の中を突っ切らせて伝令にします。
僕達が乗ってきたレジスタンスの船は一度安全圏まで後退させて、ここにいる全員でガッピ砦にいる旦那、晴峰道楽の部隊と合流。なんとか切れ目を作って〝完全正義帝国〟を挟撃しやしょう」
レジスタンスの一員であるキツネ顔の式鬼使い、離岸亜大は、一時の錯乱が嘘のように、異世界クマ国で百万人を殺傷したテロリスト団体、〝完全正義帝国〟から生き延びるための具体的な作戦を提示した。
情報の収集と分析など事前準備には長ける反面、臨機応変さに欠ける彼の作戦には、やや泥縄めいた側面があったものの…-。
「オッケー、離岸さん。その作戦に乗るよ。船団と連携を取るにしても、まずはガッピ砦の現状を確かるのが先決だ。紗雨ちゃん、黒騎士、一緒に突っ切ろう」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、亜大の策にのると決断。
「おまかせサメエ」
「この精鋭メンバーであれば、なんとでもなるはずだ」
サメの着ぐるみをかぶる銀髪碧眼の少女、建速紗雨と、漆黒のフルプレートアーマーで武装した黒騎士も同意したことで……、一行は分断されたレジスタンスのジャンク船団をひとまず後退させ、救援対象のガッピ砦に接近を試みる。
「出雲さん、あの物量頼みな征天将軍ジョウキョとは違う、本家本元、〝式鬼使い〟の強さってやつを見せてやりますよ。防御はお任せあれ」
「……離岸さん、頼りになります」
一度は無様をみせたものの、亜大は長い嘴が特徴的な鳥型の式鬼、錐嘴鳥をハリネズミめいた防御態勢に変化させ、天使を模した空飛ぶ屍体人形〝兵士級人形〟の投げ槍や、やドクロ蛾の体当たりを受け止めてくれた。
「自慢の盾は根来志津梅さんとの戦いで壊されたが、私にはまだ装甲がある。背中に隠れてほしい」
「サメーッ。助かるサメエ」
黒騎士も、先ほど銃を向けたミスを挽回しようと心に決めたのか、紗雨の天真爛漫さに絆されたのか、……あるいは単に彼女を桃太に近づけたくないのか、足並みを揃えてガッピ砦へと前進する。
「ガガガガ。退路を絶った以上、お前達の死は絶対、確実、ひゃくぱーせんとおおおおっ。焼けてただれて、手柄になれやああ」
一方、〝完全正義帝国〟の前線指揮官をつとめる、自称、征天将軍のジョウキョは、桃太達の首という戦功に目が眩んだらしい。
膨大な物資にモノを言わせて、空飛ぶ屍体人形の大部隊に火薬壺を持たせて突撃させる、力押しの作戦に出たようだ。
「ヤダヤダ。物欲に溺れて理性を失うだなんて、人間、ああはなりたくないものでやんす」
もう一人の式鬼使いの傲慢な反応を見た亜大は、先ほどまでの醜態をなかったことにするかのように、いけしゃあしゃあとのたまい……。
「「「それはひょっとしてギャグで言っているのか(サメエ)」」」
桃太と紗雨、黒騎士はすぐさまツッコミを入れた。
「いやだなあ。ギャグでなくもちろん本気でやんす。れいっせい、ちんちゃくな指揮官、離岸亜大に任せておくでやんす。出雲さん、何かアイデアはありませんか?」
「「「しかも、丸投げかーい!?」」」
しかしながら、亜大は冒険者になる前は結婚詐欺師をしていたという前歴だけあって、面の皮がことのほか厚かったようだ。
「そうだね。ここは、〝完全正義帝国〟の爆撃部隊を逆に利用して、火攻めを返すのはどうだろう?」
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)





