第818話 四番目の男はピリリと辛い?
818
「は、どんなもんだい!」
西暦二〇X二年一二月一五日午前。
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太の一行は、異世界クマ国で百万人を殺傷したテロリスト団体、〝完全正義帝国〟に包囲されたレジスタンスの拠点、ガッピ砦を救援すべく、包囲網の一角を瞬く間に蹴散らした。
「あ、あれがダンキン将軍を倒したという、出雲桃太!?」
「サメっぽい着ぐるみを着ているのは、異世界クマ国代表の娘、建速紗雨か」
「忌々しいレジスタンスのスポンサー〝前進同盟〟代表オウモの懐刀、黒騎士もいるぞ」
桃太達が倒した敵兵の穴を埋めるように、わらわらとやってきた第二波のテロリスト達も、ガッピ砦救援にやってきた一行が豪華絢爛な顔ぶれであることに気づいたのだろう。
欲望もあらわに三人の名前を呼び、ねばっこい殺意を向けた。
「あと一人、キツネみたいな顔をした四番目の男は、付き人か?」
「護衛にしちゃあ弱そうだし、お世話がかりの雑兵だろう」
「手柄首にもなりそうにないし、無視しちゃっていいんじゃない?」
しかしながら、〝完全正義帝国〟による、最後の一人への評価は著しく低かった。
「離岸亜大でやんす! レジスタンスのエースで、今後は大出世間違いなしの色男、離岸亜大でやんすよ!!」
亜大もこの扱いたまらず、大声をあげて、〝完全正義帝国〟の兵士たちと、包囲軍を率いる指揮官、六辻剛浚の目となった使い魔の蝿に向けて大きく手を振った。
戦場のど真ん中にもかかわらず、くちばしが槍のように長い鳥型の式鬼、錐嘴鳥にクラッカーめいた鳴き声を出させ、落ち葉を加工した赤や黄の紙吹雪まで撒かせる念の入れようだ。
「わざわざ注目を集めるってバカじゃない?」
「有名人の腰巾着とか萎えるわー」
そんな亜大の奇行をみて、〝完全正義帝国〟の兵士たちは台所で見つけた害虫やネズミでもみるかのように罵倒し、穢らわしいとばかりに空飛ぶ屍体人形〝兵士級人形〟を使った爆撃を繰り返してくる。
「我々に逆らう者は皆殺しだ」
「さびしくはないだろう。すぐにガッピ砦の連中も後を追わせてやる」
亜大も降り注ぐ火炎瓶から燃え広がる熱を浴びてはたまらず、式鬼の錐嘴鳥を放って迎撃しつつも、森の中をえっほえっほと逃げ回った。
「うぎぎ、テロリスト風情にそこまで言われるとは、無念でやんす」
「……」
桃太も内心、「いや貴方も地球日本じゃ、クーデターを引き起こした犯罪者の一人として、全国に指名手配されているでしょ」とツッコミを入れたかったものの……。
亜大がわざと人目を引くように振る舞って、桃太達に向かうはずの攻撃を引きつけていることが理解できたから、むしろ感謝の念が勝った。
(離岸さん。善人じゃないだけど、作戦行動は巧みだし、妙に人情があるから困る)
桃太は紗雨、黒騎士と目線で頷きあった。
〝完全正義帝国〟の指揮官達は、舞台で踊る亜大という囮に注目するあまり、屍体人形のコントロールが杜撰となり、爆撃中の〝兵士級人形〟は無防備な背中を晒している。
ガッピ砦を取り巻く包囲網を作り上げた剛浚も、現場での実戦は部下達に丸投げするつもりなのか、あるいは、石貫満勒ら冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟に三連蛇城を奪われた時と同様に慢心しているのか、今はまだ干渉してこないようだ。
「離岸さんが作ってくれた隙だ。ガッピ砦への道、こじ開けるぞ!」
あとがき
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