第807話 傭兵団〝華の刃〟の調略は可能か?
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(傭兵団〝華の刃〟できれば、戦いたくない相手だ。なんとかこちら側へ引き抜くことはできないだろうか?)
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、救出したレジスタンスメンバーからの礼に笑顔で応えたあと、甲板で指揮を取る自軍の指揮官に対し、心中の疑問をぶつけてみた。
「離岸さん。さっき『傭兵団〝華の刃〟は、テロリスト団体〝完全正義帝国〟の中でも、穏健派に雇われている』って言っていたよね? だったら、こちらも彼女達を雇うことはできないだろうか?」
「お、いいでやんすね。あのカッパ娘をキュウリで釣ってみやすか? 地方によっては酒も好むそうでやすよ」
キツネ顔の式鬼使い、離岸亜大は冗談と受け止めたのだろう。
テロリスト達の陣頭に立つ、亀の甲羅を背負った緑髪の河童少女、戸隠サユリを指差してへらへらと笑った。しかし、桃太は真剣だ。
「最近、クマ国軍の司令官に上り詰めた左玄チョウコウってひとが、〝完全正義帝国〟の穏健派をまとめていたと聞くけど、伝手はないのかな? 我流・手裏剣!」
桃太が衝撃波をこめた石つぶてを投じて、手足を槍に変えて突撃してくる天使を模した屍体人形を撃ち落としつつ、具体的なプランを出す。
すると、亜大も考えを改めたのか、尾の黒い犬型の式鬼に尾から発する雷の弾丸で迎撃させながら、語り始めた。
「もう誘ったそうでやんす。レジスタンスもクマ国軍も、〝華の刃〟を〝完全正義帝国〟から引き抜こうとしたんですが、朱蘭の姐さんは門前払い。左玄チョウコウも、『〝前進同盟〟に家族を殺されたから、仇を討つまではダメだ』と断られたそうでやんす。尾黒狗、雷を放てっ!」
桃太と亜大は話をしながらも、ジャンク船に近づく屍体人形を次々に撃墜し、戦況を優位に進めていた。
「マチョオオオ。ものを投げるなら、こうやるんだマチョ。地球の勇者はともかく、陰険式鬼使いは死んじゃえええ!」
河童の傭兵、戸隠サユリもこのままでは危ういと業を煮やしたのだろう。桃太の石投げを真似たのか、ヒスイ河の川底に沈む大岩をぶん投げてきた。
「うお、でっか」
「ギャーっ。操舵手、なんとかしてくれ」
「離岸さん、むちゃいわんでくださいよおお」
サユリの怪力から放たれる投石、否、大岩投げはもはや砲撃に等しい。
桃太達が乗るジャンク船は、船の半分はありそうな岩塊から辛くも逃れるものの、ザパーンという轟音と共に立った水柱に足をとられて、移動速度が低下。
「一度目は牽制。二度目が本命マチョ!」
今度こそ船を沈めようと、直撃コースで岩が投じられた。
「ここは俺に任せてください。ジャンプしてええ、我流・直刀!」
「助かりやす。錐嘴鳥、羽根で残骸を散らせ!」
「マチョオオオ!? せっかくの岩がああ」
が、ここは慌てず騒がず、桃太が衝撃波をまとわせた飛び蹴りで破壊し、亜大が嘴の長い鳥の羽根でフォローしてことなきを得る。
険悪な出会いから始まった桃太と亜大だが、互いにフォローしあう気質もあって、連携は早くもこなれている。
「ころしてやる、ぜったいにころしてやるマチョオオオ」
されど、そんな二人をも飲み込まんとするほどに、サユリの殺意は凄まじかった
「やっぱり、根来志津梅さんや戸隠サユリさんの言う通り、〝前進同盟〟に殺されたのは事実なのかな?」
「〝前進同盟〟が恨みを買った理由は、どうにもややこしいんでやんす。
傭兵団〝華の刃〟の団員達は、クマ国でも武勇で鳴らした一族が集う〝モムノフの里〟の出身でやすが、……夏頃に他所の里へ農作業手伝いに出ていた女子供十数人をのぞき、住民全員が殺害された。ここまでは事実でやんす」
あとがき
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