第804話 河童少女、戸隠サユリ現る!
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「式鬼が撮ってきた映像に映っている、憎っくきテロ屋……〝完全正義帝国〟の船に乗っているこの女は、戸隠サユリ。最近売り出し中の傭兵団〝華の刃〟の副団長に違いない。いくつものレジスタンス部隊が痛い目にあった強敵ですぜ」
西暦二〇X二年一二月一四日朝。
レジスタンスの船団を率いるキツネ顔の式鬼使い、離岸亜大から、偵察で得た敵将とその所属組織の名前を告げられて、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、サメの着ぐるみをかぶる銀髪碧眼の少女、建速紗雨はそれぞれ目を大きく見開いた。
「この映像に映る河童さんが、傭兵団、〝華の刃〟の一員だって!?」
「戸隠サユリさんは、あの根来志津梅さんの仲間なんだサメエ!?」
二人は偵察に出た式鬼が空中に投影した映像を指し、亜大が口にした〝華の刃〟という傭兵団に覚えがあった。忘れもしない、先日ジュシュン村で戦った強敵が名乗っていた、所属団体の名前だ。
「ええ、傭兵団〝華の刃〟は、没落した武門の後継者が集まって結成されたらしいんですが――。レジスタンスに協力している僕ら〝前進同盟〟を目の敵にしているし、なにより腕が立つから厄介なんですよね」
亜大はぼやきつつも、周辺の地図を開いて確認。レジスタンスの仲間たちへ向けて、てきぱきと応戦の指示を出す。
「建速のお嬢さんは前の船に乗ってください。〝前進同盟〟の一員として名前の知られた僕と黒騎士、地球日本の勇者と名高い出雲さんが乗る船を囮に使うので、脇の支流から敵の後ろに回ってもらいやす。上手く釣り寄せたなら、挟み撃ちといきやしょう」
「サメエ。わかったサメエ」
こうして、桃太達は前にでる囮部隊二隻と、紗雨が乗る奇襲部隊二隻に別れて進軍した。
「マーチョマチョマチョ! 陰険式鬼使いと、極悪黒騎士。けっちょんけっちょんのボコボコにしてやるから、逃げ隠れせずに出てこーい!」
〝完全正義帝国〟の船団は、四隻の大型船で後方を固めつつ、前方に、空飛ぶ屍体人形〝兵士級人形〟を操る指揮官達を乗せた八隻の小型船を展開。
河童らしくスイスイと水面を泳ぐ、サユリを先頭に突撃してくる。
「「我々の船に近づけるな」」
一方のレジスタンスメンバーは、運搬力はあるものの、小回りのきかない母船二隻をまもるため、空気で膨らむ花をつけた救命胴衣を着込み、戦闘用のボートに乗って迎撃に出た。
彼らの役割は、紗雨達、別動隊が〝完全正義帝国〟の背後を突くまでの時間稼ぎだ。
「「矢を放て」」
彼らは分散して包囲しつつ、矢を放ったのだが……
「マチョ式ウォーターカッタアア!」
サユリは口に含んだ大量の水を噴き出して、あたかも巨大な水刃のごとく薙ぎ払って矢を粉砕。
「「こ、これはいかん。接近戦を挑むしかないか?」」
いくつかのボートは及び腰になりつつも、ジリジリと慎重に間合いを詰めたのだが――。
「マーチョマチョマチョっ。そんな小舟で相撲を挑もうなんてナンセンスっ。志津梅お姉ちゃん直伝の古式流と、マチョのみなぎるパワーで粉砕するよ!」
「「「うわああ、でっかくなった!?」」」
「「「て、鉄の糸が襲ってくる!?」」
サユリがぐっと力をこめると、両の肩から腕の先まで丸太のようにふくれあがり、その剛腕から放たれた鉄線にからめとられて、次々とひっくり返された。
「傭兵団、〝華の刃〟。強いのは、団長の志津梅さんだけじゃなかったのか!?」
あとがき
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