第799話 キソの里の圧政者、その正体
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「ええ、黒騎士さんの言った通りですよ。『ガッピ砦を守る晴峰道楽の部隊がキソの里に攻められているから、捕虜を後方に送り届ける隊と別れた上で、救援に向かえ』というのが、朱蘭の姐さんからのお達しです」
キツネ顔の式鬼使い、離岸亜大より、レジスタンス代表、一葉朱蘭の指示を改めて伝えられ、漆黒のフルプレートアーマーで武装した黒騎士は、機械加工された音声でも内心を読み取れるほどに重たいため息を吐いた。
「あの人も人使いが荒いな。出雲、紗雨ちゃん。このとおりだ。指示書の内容に間違いない」
「あ、ああ。わかったよ」
「サメエ」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨が手紙を覗き込むと、黒騎士が言った通りのことが書かれていた。
機密保持のためだろうか。黒騎士は二人に見せたあと、指示書にジッポライターで火をつけて燃やした。
「え、燃やしちゃっていいんだサメエ?」
「持ち歩いても危険なだけだ。レジスタンス本部には写しが保存されているからね」
紗雨はレジスタンスにおける機密の取扱に興味津々だったが、桃太は『キソの里に攻められている』という一文に注目していた。
「有力な指揮官は失われたはずなのに、〝完全正義帝国〟からは、いったい誰が攻めてきているんだろう。ひょっとしてリノー、それともゼンビン?」
「出雲さん。その二人は今、アシハラの里で兵隊どもの再建に努めているそうでやんす。キソの里を仕切っているのは、元八大勇者パーティのひとつ〝SAINTS〟を牛耳っていた佞臣、六辻剛浚ですぜ」
桃太は亜大から、あまりにも意外な名前を聞いて、ポカンと大口をあけた。
「はああ。なんで地上で日本国にクーデターを引き起こした犯罪結社の首魁が、クマ国に来ているんだ?」
「そのひとって、詠ちゃんを家の奥に閉じ込めた悪い人サメエ!?」
六辻剛浚は、八大勇者の一翼を担う六辻家当主たる、現役の〝鬼勇者〟六辻詠を屋敷に軟禁し、影武者を立てて勇者パーティ〝SAINTS〟の実権を掌握――。
異世界クマ国を侵略して覇を唱えようとした、もう一つの勇者パーティ〝K・A・N〟代表の七罪業夢と結託し、日本国と冒険者組合に対してクーデターを引き起こした悪漢だ。
「冒険者組合代表で、俺達が通う冒険者育成学校、焔学園の校長でもある、獅子央孝恵校長が決起情報を警察に通報したことで、日本国内におけるクーデターの被害は最小限に抑えられたと聞いていたけど……」
「桃太おにーさんが代表を務めている、冒険者パーティ〝W・A〟の別動隊や、乂の弟、五馬碩志さんが率いる勇者パーティ〝N・A・G・A〟が、異界迷宮カクリヨの中で軍事行動を食い止めた……と、カムロのジイチャンも言っていたサメ」
桃太と紗雨が知る限り、その後は、クマ国の反政府団体〝前進同盟〟が後援する冒険者パーティ〝G・C・H・O・〟が、第八階層〝残火の洞窟〟に進撃し、クーデター軍が築いた〝三連蛇城〟という城砦を巡って苛烈な闘争を繰り広げている……はずだった。
「俺たちが共犯者である七罪業夢さんを倒した後、――六辻剛浚は、元勇者パーティ〝K・A・N〟の残党を吸収した――って聞いたけど、それから彼とクーデター軍にいったいなにがあったというんだ?」
あとがき
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