第790話 クマ国、神代より伝わる武術
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「まさか、アタシの攻撃が見抜かれていた?」
テロリスト団体、〝完全正義帝国〟に雇われた、髪腕から翼の生えた燃えるような赤い髪の傭兵、根来志津梅。
彼女は隠し持っていた鉄線をなげつけて、クマ国代表カムロの養女である建速紗雨がかぶるサメの着ぐるみの袖口を落とした。
しかしながら、銀髪碧眼の少女もまた、右手に渦を巻くドリルを用いて、敵手が身につけた黒一色の着物の裾を切り裂いている。
「さっきからずっと、貴方が桃太おにーさんや黒騎士と戦うところを見ていたサメエ。志津梅さんは〝鉄線で人形を操り、人形が銃を撃つ〟なんて迂回手段をとることで『機械が使えない』という八岐大蛇の呪いを回避していたサメエ?」
紗雨は追撃とばかりにドリルから水の弾を射出するも、志津梅は背負った葛籠から伸びた人形の腕を器用に動かして拳銃を発射して、至近距離で撃ち落とした。
「さて、どうでしょうね? 八岐大蛇の呪いは、その程度の小細工で乗り越えられるほどに軽くはありません。そして、紗雨姫が真相を知ることはない。なぜなら、我が武術は、神代より受け継がれし大蛇殺しの為の戦闘武術。たとえ姫君であろうとも撃ち抜きます」
志津梅は葛籠から伸びた人形の腕を伸ばし、足元に設置したライフルの引き金に指をかけた。
マズルフラッシュを焚きながら、閃光と共に放たれた三発の銃弾は付近に生えていた森の木に命中。梵字に刻まれた反射の術式が発動し、スーパーボールのように跳ねて紗雨の手足を貫いた。
「遠距離戦なら、そうかも知れないサメエ」
が、それは紗雨が水で作り上げた、身代わりの像だ。
「志津梅さんの弾丸は、あらかじめプログラムされた通りの挙動で飛んでくる。こんなに近かったら、紗雨が対策する方が速いサメエ」
先ほどまで志津梅が狙っていた、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太や、漆黒の全身鎧で武装した黒騎士のように遠く離れた相手と戦うのであれば、彼女の戦法は強力無比だ。
まるでパズルを解くように、反射や貫通、高速、低速といった弾丸を駆使して追い詰めることもできるだろう。
だが、今の紗雨のように、ターゲットが息も触れ合うような距離にいては、銃を構えて撃つ時間さえ長すぎる。
「なるほど。ですが、アタシにはまだ鉄の糸がある!」
志津梅も理解しているのだろう。
地中から無数の鉄線を引き出して、紗雨が身代わりにすり替わる前に足を切ろうと試みた。
「そう来ると思っていたサメエ」
紗雨は鉄線が足に触れるよりも早く、大元を握る志津梅の腕を掴んで引き寄せ、森の木々に向かってぶん投げる。
志津梅は危うく頭を打つところだったが、腕から伸ばした鉄線を木の枝に絡みつかせて受け身をとった。
「志津梅さんは、てっきり〝完全正義帝国〟の兵士たちのように、八岐大蛇の首からもらった蛇糸で屍体人形を動かしていると思ったけれど、どうも違うみたいサメエ。
地球の機械や、カクリヨの呪いを超えるほど精密にワイヤーロープで人形を操れるなら、直接攻撃だって簡単なはず。そして、鉄線を使うとわかっていれば対策だって取れるサメエ」
紗雨はジュシュン村近郊を流れる支流から水を呼び込み、あたかも渦を巻くかのように、周囲に水柱を立てつつ鉄線と銃弾を防御、再び接近戦を狙う。
紗雨の手足から伸びた四本のドリルが絶え間なく踊る攻撃は、あたかも多頭のサメが如くだ。
「ふぉーヘッディッド、しゃーくドリルあたっく。桃太おにーさんと見た映画にヒントを得た技を受けるサメエ」
「なにそれえっ!?」
あとがき
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