第99話 王太子内定
王女との結婚まで後一月となった頃、王城に呼ばれた。てっきり結婚の準備の打ち合わせかと思ったら、意外な内容だった。応接にはいつもの三人、ガロル王、ザイス筆頭大臣、メリッサ姫がいる。
「以前から貴公をわしの後継ぎにと決めておったが、発表は結婚のタイミングが良かろうと思う」
「結婚のタイミングですか?」
「そうじゃ、結婚前だと、王太子で違和感を持つものもおるじゃろうし、結婚後だと、王女がギルフォード家に嫁入りする形になるため、王家から離れてしまう感が出る。単なる手続き上の話じゃが、後々、重要な話なのじゃ」
「つまり王家か、大公家か、ということでしょうか?」
「その通りじゃ、貴公を後継ぎにするには、王家に入る必要があり、最初からロナンダル家に婿入りする形にした方がスムーズじゃ」
「……なるほど、おっしゃる通りです(考えてもなかった)」
「結婚式当日、貴公は王家であるロナンダル家に入り、王太子になってもらう予定じゃ」
「……王家入りのお話はよく分かりました。ただし、私は領地経営、商会経営、そして冒険者として行動しておりますが、そちらへの影響は大丈夫でしょうか?」
「これは、身分や家柄、いわゆる肩書の話じゃ、王太子であっても大公であることは変わらぬし、これまで通りの行動で大丈夫じゃ」
「それでは予定通り、姫様にはギースの大公城にお越し頂くということで大丈夫でしょうか?」
「うむ、それは変わらない」
「それとな、王族が自分の領地を移動する際、他の貴族の領地を通るのは避けた方がいいと思い、ちょうどベイスラ領とアグラ領をつなぐ横に細長い領地パンタがあるのじゃ。これを貴公にやろう。そうすれば王都、ベイスラ、パンタ、アグラ、ギースと自分の領地だけを移動できるようになる」
「確かパンタ領は他の貴族が治めていたと思いますが……」
「うむ、まあ、そちらは別の領土と交換してもらった」
「パンタ領はどういう土地ですか?」
「中央から東部に伸びる細長い領じゃ。東西方向に大きな街道があって、街道沿いに住民が暮らしている。特に大きな問題はないし人口も少ない。引き継ぎは前任の代官がしっかりする予定じゃ。領地運営に手がかかることはないぞ」
王太子の話は少しびっくりしたけど、自分にはいい話だ。行動制限もされないようだし。パンタ領の授与は有難いな。領地運営は大好きだから。自分の領地なら移動に気を使わないし。
「それにな。わしも姫に会いたいし、姫の安全を優先したのじゃ」
「……それでしたら、ひとつお願いしたいことがございます」
「なんじゃ」
「結婚後、姫様とパンタ領の道を通ることになるかと思いますが、結婚前に私の方で街道を整備しておきたいのです。ですので、できましたら、パンタ領の授与だけ早めて頂くことは可能でしょうか?」
「何、これから道の整備をするのか!」
「はい、私でしたら可能です」
「……まあ、そなたなら可能じゃろうな」
「それとこれは私から姫様へのご提案なのですが、王城で結婚式後、姫様にはベイスラ領、パンタ領、アグラ領、ギース領とお越し頂くわけですが、折角ですから、道中は新婚旅行として扱うのはいかがでしょうか? 長い道中ですがご気分も楽になると思います。今回の道中ではこちらで用意した親衛隊がしっかり護衛致します」
「まあ、それは素晴らしいですわ!」
姫様が喜ばれた! 提案して良かった。この世界で新婚旅行が一般的なのか分からなかったけどね。この会談の数日後、パンタ領を授与された。早速、行くぞ!
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