第98話 王城パニック
ここは、ウラバダ王国の中央広場、今日も市民が衛兵隊に引き立てられ、公開処刑される。
「ゴラン王に死を!! 奴は国の疫病神だ!」
その直後、刑が執行される。多くの市民が恐怖を感じる中、遠くからその光景を黒いマントを頭から被った怪しい男が微笑む。
「そうだ、もっと憎しめ! 呪え!」
満足気に見ていたが、一瞬で表情が厳しくなる。
「それにしてもロナンダル王国はなぜ、我が手に落ちぬ。今に目にもの見せてくれるわ!」
そう言うと、男は黒い影となり、消えていった。
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<ロナンダル王国・王宮>
「王女様も間もなく、ご結婚ですわね」
「相手はあの英雄ですもの」
「素晴らしい結婚になりそうです」
メリッサ王女の結婚があと三か月と近づき、王城のメイド達も準備に浮き立っていたが、ある夜、驚きの声が響き渡る。
「キャアーーーーー!」
メイド達が駆けつける。
「何があったの?」
「で、出たの、黒い何かが……」
その後も王城内で黒い影を見たとの報告が出され、レイス(死霊)ではないかとの噂がひろがった。そんなある日。
「ううぅ!」
「王女様ーーーー! た、大変です。誰か来てーーーー!」
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ガロル王が王女を見舞ったが、ぐったりして、顔色が悪い。王家の医療専門家にも見てもらったが、原因も症状も不明とのこと。毒でもないし、怪我もない。
「これは一体何事じゃ??」
「昨日まで元気だった王女様が突然こんな……あまりに不自然です」
「とにかくギルフォード大公を呼ぼう」
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王様と一緒に、姫を見ると、顔色が悪く、意識もはっきりしない。これは……
「【鑑定】!」
呪いか……
「王様、これから私の力を使って姫様をお救いします」
「おお! 頼む!」
「【解呪】!」「【ヒール】!」
すると姫はみるみるうちに顔色が良くなり、意識を取り戻した。
「おお、メリッサよ!」
「あら……私……どうして……」
「姫様、もう大丈夫ですよ」
その後、別室でガロル王、ザイス筆頭大臣と会談。
「姫の件、礼を言うぞ」
「いえ、当然のことをしただけです」
「ザイス筆頭大臣、レイス(死霊)騒ぎはどうなっている?」
「まだ続いてるようです。直接の被害はありませんが、使用人たちが怖がってしまって……」
「もし、よろしければ、私の方で任せてもらえませんか」
「そなたはレイス(死霊)退治もできるのか!?」
「おそらくいけると思います。発生場所の範囲はどの程度でしょうか?」
「うむ、王城全体じゃ」
「……それでしたら、範囲を広げて力を使います」
過去にレイス(死霊)相手に神聖魔法【浄化】スキルを使ったことがあったけど、範囲を広げてやってみるか。
「王城全体に、神聖魔法【浄化】!!」
あたりが一瞬、光につつまれる。
「王様、筆頭大臣様、これでレイス(死霊)退治できたと思います」
「おお、助かった! 感謝するぞ」
「大公様、ありがとうございます」
「姫様が落ち着かれましたら、一度、お話ししたいので、ご一報願います」
「分かった」
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王城の騒ぎから数日後
「姫様、ご気分はいかがですか?」
「ええ、アレス様のお陰ですっかり良くなりました」
「それは良かったです」
「……実は、今回の件は、何者かが特別な力を悪用して、お城の混乱を狙ったとみてます」
「……そうですか」
「それで再発防止のため、お姫様をお守りするアイテムをお渡ししたいのです」
大きなダイヤのついた金の指輪を渡す。
「まあ、これは!」
「これは結婚指輪になります。しかしただの指輪ではありません」
「……何か特別な力があるのね」
「その通りです。姫様をお守りする力で、【解呪】【回復】【転移】【隠蔽】【結界】のスキルが使えるようになります」
「……そんな特別な力を頂いても、いいのかしら」
「実は今回の件だけでなく、先のことまで考えました。もし今回のように遠方から精神系の攻撃をしてきた場合【解呪】、身体の体力回復には【回復】、王都や領地との行き来には【転移】、敵に追われたら【隠蔽】、敵に襲われたら【結界】が役に立ちます」
「現在【念話】のイヤーカフスを頂いているけど、アレス様は本当に様々な力を持たれているのですね。しかもそれを他の人に使えるようにできるなんて……」
「一番の目的は姫様の御身の安全です。私が傍にいれば、心配ございませんが、万一に備えました。よろしければ、結婚までの間、それぞれのスキルの使い方や注意点をご説明致しましょう」
「ありがとうございます。アレス様」
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今日は王城の防衛について提案しよう。
「王様、ザイス筆頭大臣様、先日の騒ぎですが、どうやら、外部の者が特別な力を悪用して、城を混乱させ、姫様を苦しめようとしたようです」
「外部の者? 誰じゃそれは?」
「分かりません。ただ、レイス(死霊)や呪いを使っていたので、王家に悪感情を持った者でしょう」
「……誰か心当たりでもあれば」
「……こちらでは思い浮かばぬ」
「実は以前、領地内、ウラバダ王国との国境付近で、レイス(死霊)がこちらに攻撃してきたのを退治したことがございます」
「すると、またしてもウラバダ王国か?」
「その関連が疑われます。そして取り急ぎ、今回のような事態への防衛策として、城にレイス(死霊)、恨みが入ってこられないよう、結界を張ることを提案致します」
「結界とな! そんなものができるのか!」
「はい、ご承認いただければ、今すぐにでも、おつくりします」
「頼む。結界をつくってくれ」
「レイス(死霊)、恨みが入ってこれないよう、お城に【結界】!!」
「これで、レイス(死霊)、恨みがお城に入ってくることはありません」
「貴公が姫の結婚相手で本当に良かった。ぜひ後継ぎになってもらうぞ」
「ギルフォード大公なら、国をお任せすることができます」
しかし、あのウラバダ王国というのは、悪の巣窟みたいな国だなぁ。今後も要注意だ。
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