第87話 ゾンビ大量発生2
ゾンビの集団の奥を見ると、黒い影の固まりが見えた。あれは何だ?!
「【鑑定】! レイス(死霊)、物理攻撃無効か……【収納】できるか分からないな……」
「そうだ、あれがあった! 以前、教会の儀式から【複写】したスキル」
「【浄化】!」
「うぎゃああ~!」
死霊が消滅した。あれがゾンビを操っていたのか? するとゾンビ達の動きが鈍くなった。そして、ためしにゾンビに【浄化】をかけたら、バタバタ倒れていった。このあたりは外国だし、勝手に入っても不味いだろう。そっちの方で処理してもらおう。これで一件落着かな?
帰りに大蛇の洞穴に行ったら大蛇が首を出していたので、【動物会話】スキルで報告しとく。
(敵を全部、倒しましたから、安心して下さい)
(そうか、わかった)
大蛇は一度、こちらをじっと見ると、挨拶のように舌をぺろぺろだして、洞穴に戻っていった。さて、帰ろう。ちなみに【収納】したゾンビは気色悪いし素材に使いたくなかったので、亜空間廃棄しといた。
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ギースの大公城に帰り、ソファでまったりしていると、テネシアとイレーネが転移で戻ってきたが、ミスリルリザードで足止めを食らい、ダンジョン途中で引き返したとのこと。
「あいつは固いな、剣は通さないし、魔法も効かないし」
「一匹だけなら何とかなりそうですが、仲間が増えるんですよ」
「極大魔法はダンジョンの崩壊になりかねないし……」
「もっともっと強い剣があればいいんですけどね……」
二人が僕の顔をジト目する。あの剣は【加工】レベル3(最高品質)で作ったものだ。この世界だと、あれ以上の剣は……待てよ、この世界でない異次元品質なら……
そう思った時、【加工】スキルレベルアップのイメージが浮かんだ。
「よし、やってみるか! 【加工】レベル4(異次元品質)! 剣を作成!」
すると、ごっそり魔力を持っていかれた。ヤバイ! あれを使おう。
「ダンジョン最奥で回収した『魔力増大の水晶玉』を【取出し】!」
魔力がどんどん回復していく、これは助かる。落ち着いた。
出てきた剣を見ると、見るからに異質だ。まわりの空間が歪んで見える……
「二人ともこれを試し切りしてみて」
そう言って、前に回収したミスリルの固まりを出す。この世界でミスリルは最強クラスの金属だ。
スパ! スパ!
「おおおーー!! 凄ーーい!!」
「これは!! ありえないです!!」
二人が驚きの声をあげる。しかし、この剣は、普段使いは絶対にやめた方がいいな……二人に取扱い制限をかけ、普段は収納カバンに入れとくよう指示を出したが……
「これならダンジョン踏破できるぞ!」
「また行きましょう!」
と興奮気味に言ってたので、
「この剣は人前では絶対にしまっとけよ」
と厳命しといた。たぶん、この剣、異次元と繋がってるよ。完全にオーパーツみたいなものだな。
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<ウラバダ王国・王城>
「反抗する人間は処刑しろ!」
「ひっひぃ、わ、わかりました」
国内状況は悪化の一途、政情の不安、経済的不況から、王への不満が増大している。そんな中、王に反意をあげた者は次々と処刑されていったのである。後任の行政大臣ヨウロも完全に王の言いなりで、側近で止める者が誰もいない。不満があって少しでも口に出そうなら、誰でも即座に処刑されてしまうからだ。
広場では連日、公開処刑が実施され、国中が恐怖に包まれていった。
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<ロナンダル王国・王城>
「王様、国境が異常事態です!!」
「どうした! ザイス筆頭大臣」
「実は大勢の人間が、迫ってきているのですが……」
「人間? 軍隊か?」
「いえ、報告によると、どの人間も死んだように生気がないとのこと」
「……」
「国境兵が話しかけても、まったく通じず、武器で攻撃しましたが、動きが止まらないとのことです。ひょっとして……」
「……ゾンビか」
「すぐ国境に兵を集めよ!」
「はは! ただちに」
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<ロナンダル王国・国境>
大勢の兵士が集まり、迎撃の準備をする。そして、ゾンビの大群が迫ってきた。
「撃て――――!」
弓から無数の矢が飛び放たれて、ゾンビに突き刺さるが、侵攻は止まらない。それどころか、どんどん近づいてくる。
「撃て――――!」
前方のゾンビは体中が矢に刺さっているが、まったく気にしない様子。
「部隊長、これは不味いですよ……」
しかしゾンビは目の前まで迫ってきた。
「……突撃だ!!!」
部隊長の掛け声で歩兵達が一斉に突き進む。槍がゾンビを貫く。しかし、まったく効かない。それどころか、ゾンビが押し寄せてきて、侵攻が止まらない。
「駄目だ! いったん退却!」
こうしてゾンビは国境を越えてきたのである。
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<ロナンダル王国・王城>
「ゾンビが国境を越え、侵攻がやみません。このままでは王都に迫る勢いです」
「しかし、解せぬ。なぜ、こんなにも多数のゾンビが一斉に国境を越えてくるのだ?」
「そう言えば、ウラバダ王国では連日、住民が処刑されているとか。何か関係があるかもしれませぬ……」
「あのゾンビは処刑された人間ということか?」
「分かりません。ただ、ゾンビの状態から最近亡くなった者のようです。多数の処刑された人間、多数のゾンビ、符合します」
「ゾンビは剣や槍の攻撃には耐性がありますが、教会の神聖魔法で効果が出るかもしれません。それと一部の冒険者も神聖魔法が使えます」
「よし、教会と冒険者ギルドに要請だ!」
「かしこまりました」
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<ロナンダル王国・辺境>
教会と冒険者の神聖魔法の使い手が集まっている。
そして目の前にゾンビが迫ってきた。
「行け!」
横一列に神聖魔法の使い手が並び、浄化魔法を放つ。前方のゾンビが苦しそうに倒れたが、次々と後ろから続いてくる。
「駄目だ! キリがない!」
神聖魔法の使い手はせいぜい数十人、そこへ数千のゾンビ、まったく抑えることができない。
「うわああ!」
一人、また一人とゾンビにやられていく。このままでは全滅だ。
「たっ、退却だ!」
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<ロナンダル王国・王城>
「ついに辺境領の半ばまで来てしまいました。このままでは王都まで来てしまいます」
「……国家災害級案件じゃ、Sランク案件と認定し、冒険者ギルドに連絡せよ。緊急事態だ。ギルフォード大公に連絡じゃ。メリッサ姫を呼べ!」
「はは!」
ガロル王とザイス筆頭大臣が慌ただしく動いた。
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