第81話 鉱山ダンジョン
ギース、アグラ、島の領地経営が安定してきたので、以前、バナン王国のシャイネル公爵から聞いたダンジョンに行ってみることにした。何でも鉱山にできたダンジョンらしく、冒険者の間でかなり人気らしい。
「テネシア、イレーネ、バナン王国に魔物が出るダンジョンがあるらしいんだが、一緒に行ってみるか?」
「おお、魔物退治か! 久しぶりだな、ぜひ行きたい!」
「私もぜひ行きたいです!」
二人とも完全に乗り気だ。まあ、こういう反応になるのは予想してたけどね。そこで事前情報をもとに三人で作戦会議。
「ここは鉱山にできたダンジョンで、金属系の魔物が多いらしい」
「金属? 硬いのか」
「たぶん硬いと思う。それと金属だから火にもある程度の耐性があるだろう」
「ということは私とテネシアさんの風と火の魔法も効きにくいと?」
「確かに金属は硬くて風が通りにくいし、熱に強いから、火にも強そうだが、君たちの大規模魔法なら効くと思う」
「なら、大丈夫だな」
「でも、ここはダンジョンで、他の冒険者達もたくさんいるから、目立つ場所で大規模魔法は放ちづらいな……」
「では、どうしたらいいのでしょう?」
「人が多い場所では近接戦闘だな。剣をメインに使おう。それで人がいなくなったら、魔法を使う」
「うん、それがいい」
「それと今回はダンジョン攻略のために、新たな道具とスキルを用意した」
ダンジョンの魔物は硬いだろうから、硬くて丈夫な剣が必要だ。それで二人に剣を与える。今回は普段封印している【加工】スキル(最高品質)を使用して、最高品質ミスリル製の剣だ。二人ともかなり喜んでる。
「試しにこれ切ってみて」
二人の目の前で、収納から鉄の固まりを取り出す。
スパッ! スパッ!
「……凄い、何だ、この剣は!」
「気持ち悪いぐらい楽に切れました!」
【加工】スキル(最高品質)は文字通り、世界最高品質だ。こんなものが出回ると世界が混乱するだろうから普段封印してるが、今回はいいだろう。後は……
「これで、攻撃はいいな。次に防御だ」
二人とも遠距離、近接とも対応可能だけど、今回は狭いダンジョン内、至近距離から、次々、魔物が襲ってくることも想定されるから、防御スキルを開発した。
「これを二人に渡す。これは【結界】スキルが使用可能になるブレスレットだ。魔物から魔法、物理攻撃が来たら、周囲に魔法の壁ができて防いでくれる」
「これはいいな!」
「素晴らしいです!」
二人はこれでいいだろう。正直、オーバースキルな感じもするけど、二人に負傷させたくないから。それと僕は……
「【身体強化】!」
その場でジャンプすると、近くの建物の屋根まで飛べた。
「おお! 主、いつの間に、そんなことができるようになったんだ!」
「アレス様、訓練なさっていたんですか!」
「いや、【身体強化】のスキルだ。僕は二人に比べて、体力が劣っているからね。これでカバーしようと思う」
すると、二人が何やら内緒話し出した。そして
「主、自分達もそれが欲しいぞ!」
「うらやましいです!」
しかしなあ、二人ともすでに身体能力が有り余っているし、これ以上となると、かえって危険なんじゃ……
試しに、その場で【身体強化】のグッズを作り、テネシアに使わせてみた。そしてジャンプすると、僕の二倍以上の高さに跳んだ。しかし、これでは狭いダンジョンでかえって危ないんじゃないか……二人に説明したが、まだ不満げだ。そうだ。
「それじゃ【身体硬化】はどうだ。体が硬くなり、攻撃にも防御にも有効だ」
それで二人とも納得したが、よく考えたら、これも随分チートだ。【身体硬化】を先ほど渡した【結界】ブレスに上乗せして【創造】したが、冗談半分にテネシアに鉄の固まりを殴ってもらったら、ひびが入って割れてしまった……なにこれ。
「うお~これは凄い! 主、ありがとう」
「信じられません!」
テネシアは大喜び、イレーネは驚いていた。よし、準備はこんなもんだろ。
――――
――――――
三人でバナン王国の港町に転移した。さて、ここから先ずは冒険者ギルドだ。ダンジョンに入るには、事前にギルドで受付が必要らしい。今回は他国だし、お忍びだ。貴族の大公爵がダンジョンに来るなんて、普通ありえないしな。
「おお! ギルドだ」
「大きいギルドだな」
「人も多いですね」
ロナンダル王国でも、こんな大きなギルドは無かったな……
扉を開けて入ると結構、並んでいる。鉱山ダンジョンということで、筋肉隆々の冒険者が多いな。しばらく並ぶか。すると、後ろから。
「あんたら、そんな生ちょろい体でダンジョンに入るのか?」
と大柄の冒険者にニヤニヤされながら言われた。今回はお忍び、外では極力大人しくしようと事前に二人には言い聞かせていたので、二人とも黙っている。よしこらえてくれたか。いい子達だ。
「ええ、このダンジョンは初めてなので、いろいろ教えてくれませんか?」
丁重な返事に気を良くしたのか、大柄の冒険者がベラベラ話し出す。
「ここのダンジョンは鉱山の採掘をしてたとこでさ、硬い奴とか、重いのとか、強い魔物がいっぱいだぞ。倒しても持ち帰りが大変で、途中で引き返す奴が多い。あんたみたいな弱そうな奴はすぐくたばっちまうよ」
「いやあ、参考になりました。ありがとうございます」
男の説明を聞いて内心、微笑む。予想通りだし、どんな重い素材でも自分にはまったく関係ない。
しばらくして、順番が回ってきた。
「それでは冒険者カードを見せて下さい」
ここでSSランクカードを出して受付嬢がびっくりしたら、面倒だな。そうだ。
「すみません。事情があって、ここで出すと不味いので、ギルド長に会えますか?」
「どういうことでしょうか?」
当然、確認するよね。しかたない。
「私はギルドマスター、総ギルドマスターとも懇意にしてます。とにかく会わせて下さい」
そう言うと、受付嬢が上にあがっていった。その後、ギルド長に三人のSSランク冒険者カードを提示して、パスとなった。折角だからギルド長に聞くか。
「英雄にダンジョンに入って頂くのは光栄です。どうぞ踏破を目指して下さい」
「今まで未踏破なんですか?」
「はい、鉱山ダンジョンで良い素材が取れて冒険者もたくさん来ますが、奥に行くと剣も魔法も通じない魔物が出るし、素材回収が大変過ぎて、みんな途中止まりなんです」
「最奥にはどんな魔物がいるんですか?」
「分かりません。大きくて、硬くて、重くて、強い魔物のようです」
「どうしてそれを?」
「過去に、Aランク冒険者が対戦した情報です。結局その冒険者は引き返しましたが……」
「情報提供、ありがとうございます」
その後、三人で町を離れ、郊外に向かう、今回はお忍びだが、観光もかねて、あたりの風景も楽しむ。鉱山とダンジョンで栄える国だ。活気がある。実はこの国には商会の支店があるのだが、最初に行った時はまわりを見る余裕もなかったので、こんなに栄えていたとは気づかなかった。支店の場所は港町の方だが、今回は顔を出すのを避けた。一応、お忍びだからね。
ダンジョンの入り口付近にきたが、ここも商店ができて、賑わっているな。よく見たら、ミアの回復薬も販売してる。遠目で見たが、売れ行き好調のようだ。よし、入るか。
入口に入ったあたりは冒険者が多いな。素材袋を抱えて、重そうにしてる者が多い。そこを過ぎると、多少減ったがそれでもまだ多い。
「主、あれ何だ!」
なんか、ぶよぶよしてるな。
「あれはスライムだ!」
ダンジョンの最初の魔物はスライムだった。
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