第79話 公国祭
「う~ん、やはりこの回復薬は素晴らしいです。ぜひ取引したい」
「お褒め頂きまして、感謝します」
「運搬はどのようになさるおつもりですか?」
「よろしければ、船の定期航路を開通します」
今日は、バナン王国の港へ船で来訪し、港町の貴族シャイネル公爵と折衝中だ。先日、開催した大公城のお披露目会でお会いしたのがきっかけ。大薬師のミアと一緒に来ている。
「どのような種類がおありかな?」
「はい、擦り傷程度でしたら下級、中程度の傷でしたら中級、深い傷なら上級になります。この三種が基本ですが、致命傷用の特級も開発されました。ただし量も少なく、こちらは相当高額になります」
ミアが回復薬を見せながら細かく説明していく。ためしに療養所の怪我人に実演したら、瞬く間に効果が出た。
「凄い!」
「こんなの見たことない!」
商談が成立し、シャイネル公爵と雑談していると怪我人が多い理由を話し始めた。
「我が国は鉱山が多く、鉱山従事者に怪我が多いのです。それと魔物が発生するダンジョンがあり、冒険者が集まってくるのです。冒険者も回復薬を必要とします」
「魔物が発生するダンジョンですか?」
「ええ、魔物はダンジョン内にしかいませんし、素材の収益が大きいのです」
「鉱山とダンジョンで潤っているのですが、回復薬が圧倒的に不足してるのです」
なるほど、ここは回復薬のいいお得意様になりそうだな。
「ところでギルフォード大公の島は本国より、完全自治権を認められていて、公国と称することを許されているとか。島では公王と称されてるんですか?」
「はい、その通りです」
「でしたら、私も公王様と呼ばせて頂きます」
「少し恥ずかしいですが」
「いえいえ、滅相もございません」
商談は無事に成立し、シャイネル公爵と握手を交わした後、ミアと船で島へ帰る。今後は大公と公王を使い分けないとな。ロナンダル王国(本国)では大公、島(公国)やそれ以外では公王でいいのかな? それ以外の場所が微妙だけどね。
帰りの船でミアと話す。
「そう言えば、ギルフォード島はギルフォード公国でもあるんですよね。完全自治権があり、通商、外交、防衛も一任されてるなら、事実上の建国ですね。建国祭なんてどうですか?」
「まあ……そうだね。普通の国だと建国祭なんだけど、この呼称では本国を刺激しちゃうよね。名づけるなら公国祭かな」
「公国祭……いいですね」
そんな他愛もない話から、島の役員会で公国祭の開催を提案したら、全員ノリノリの賛成だった。島民主導の方がいいと思い、準備はインカム代官らにほとんど任せた。
~公国祭、開催当日~
ふだんは物々交換している空き地を広げて、島民が集まっている。三千人はいるだろうか。島の人口は五千人を超えているが、その半分以上が集まったようだ。ミアが司会をして
「それでは公国祭の開催にあたり、公王様からのご挨拶です」
一同、拍手、声援、みんな賑やか
「島の皆さん、いつも役割分担して頑張ってもらい有難う。このギルフォード島はロナンダル王国の帰属ですが、先日、島の完全自治権を認められ、通商、外交、防衛も一任されました。また、ギルフォード公国を称することも認められました。これは喜ばしいことです。皆さん、お祝いしましょう。それと来年からは本国の王から認められた日を公国記念日とし、毎年、公国祭を開催できるよう頑張りましょう」
一同、拍手、声援、みんな喜びいっぱい
この日のために島民たちは食べ物を準備してきたが、酒類は僕の【複写】スキルで大量に用意した。上等なワインは本来、準備するのに時間を要するが、僕なら一本から大量に同じワインを作れるからね。それと先日、外国で初の定期船航路を開いたバナン王国のシャイネル公爵もゲストでお呼びした。本日は島のお城に泊まって頂こう。外国の方は初めてだ。
「いやあ、公王様、島民の皆さんがたくさん集まりましたね」
「これだけ人が集まったのは初めてです」
「このお肉はなんですか?」
「ホーンディアという鹿の魔物の肉です。こちらも販売に力を入れております」
「公王様は商売がお上手ですな。帰りにお土産に買わせて頂きます」
「有難うございます」
「そう言えば、公王様も冒険者とか。それも超一級と聞いております。機会があれば我が国のダンジョンをぜひお試し下さい」
「面白そうですね。後で場所を教えて下さい」
初めての公国祭は盛況のうちに終わった。これで島も一段落だな。
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