第77話 公王巡回
今日は一人で島(公国)に来ている。
「公王様~、いい魚が取れましたよ~」
漁師が自慢げに大きな魚を掲げ、見せてきた。
こうして気軽に声をかけてもらえるのは嬉しいことだ。
「おお、獲れたてだね。美味しそうだ」
島の港に漁船が戻り、大量の魚が荷揚げされている。周囲を海に囲まれた島なので、漁業には力を入れている。漁船も船員も増えた。
「さて温泉に行くか。定期運搬馬車に乗ろう」
現在、島には港から広がるように定期運搬馬車が走っている。これなら奥の方に住んでも大丈夫だろう。荷台に乗り込むと島民の親子が挨拶してきた。
「公王様も温泉にいくの?」
「そうだよ。ここの温泉は最高だからね」
島を直接見たいし、島民とも触れ合いたいので、転移スキルはなるべく使わない。温泉までは結構な距離があるが、海や山の景観が楽しめて、まったく飽きることがない。
「温泉に着いたな。入る前に一仕事しよう」
ここの温泉は一度入ったら虜になること間違い無しで、きっと島民以外の人も気に入るばずだ。でも島民と外部の旅行者が同じ温泉に入ると余計なトラブルが発生するかもしれない。そこで、島民用と旅行者用で分けることにした。今からつくる。少し場所を離してと。
「【収納】【収納】【収納】【収納】【収納】!」
「【加工】【加工】【加工】【加工】【加工】!」
「【複写】【複写】【複写】【複写】【複写】!」
旅行者向け(外貨獲得用)に豪華な感じで仕上げたぞ。トラブルを避けるため、島民用とは離れた場所に設置。かけ流し天然温泉、宿泊施設付きだ。よし、早速入ろう。
「う~~ん、たまらないな~。ふ~、旅行者用の温泉か……」
本当は、僕と同じ様に外から来た旅行者にも、なるべく島民と触れ合ってほしい。でもこの島は圧倒的に亜人が多いし、裸だと中には刺激が強く感じる人もいるかもしれない。島民にとっても今の落ち着いたお風呂に外部の人が急に増えたら、不安だろうし……
まぁ、現状では分けた方が無難だろうな。
――――
――――――
港に戻った。このあたりがいいかな。よし。
「【収納】【収納】【収納】【収納】【収納】!」
「【加工】【加工】【加工】【加工】【加工】!」
「【複写】【複写】【複写】【複写】【複写】!」
出入国管理局の施設ができた。ここで島の出入りをチェックする。一応、ここは国扱いだからね。ここの代表にも念話グッズを渡して、本国の玄関口の代官リミアとやり取りすれば漏れがなくなるだろう。あっ、定期運搬馬車が来たぞ。
「よし馬車に乗ろう」
島の城行きの馬車に乗った。港からゆるやかな坂になっている。領主邸や島の館のある中心部を抜けると住宅地が広がる。港と中心部に住宅が集まって、郊外に進むと畑が増え、牧歌的雰囲気になる。さらに進むと緑が増えてきて、住宅地もまばらになり小高い平地に城がある。さあ、降りるか。
「姫様をこの城に呼んだ時は準備で凄いバタバタしたよな。本国の王城に配慮し、それよりは小さく作ったけど、小国なら王城なみの施設だろう」
主(僕)が不在のため、現在は閉めている。施設維持だけはインカム代官に依頼した。今は外国の偉いさん用だな。迎賓館みたいな。実務処理は中心部の領主邸か島の館の方が圧倒的にはかどる。でも外観が立派だし、まわりの景色もいいしで、島民がよく見に来てる。
「よし、【転移】!」
人もいないし、転移した。ここは海の崖にある監視施設だ。入口で防衛隊員が挨拶する。
「公王様、視察ですか?」
「うん、ちょっと見せてもらうよ」
最上階の五階まで登る。目の前に大海が広がり、絶景だ。ここからならギースからの船もよく見えるし、四方に視界が広がって、監視に最適だ。しばらくすると島民の夫婦が登ってきた。
「うわあ! 凄い景色!」
「下は見ない方がいいよ」
と明るく話してる。ここは防衛隊の監視施設だが、島民の利用も認めている。一応、隊員が数名常駐してるので、大丈夫だろう。
「よし、外回りするか」
アグラの領地で【飛行】【隠蔽】スキルを大活用してるが、ここでも使ってみよう。空を飛行しながら、島の外周を視察。上空から見るとまだまだ未開拓部分はたくさんあるが、島の自然も十分確保したいので、当面はこの状態でいいだろう。現在の人口は五千人を超え、それ以降も人と亜人が少しずつ増加している。そのうち六千人に到達するだろうな。最初のチート開拓で一万人分の住宅は確保済みなので、しばらくは大丈夫だ。
「おっ、巡視船だ」
防衛のため、常時、巡視船が島を回るようにしている。最初一隻だったが、今は二隻が回っている。これは密航防止、漂流者救助、海賊対策が目的だ。ただ回るだけじゃ少しもったいないので、希望者は観光がてら一緒に乗れるようにしてる。
「島の反対側に来たぞ」
これは元海賊のアジトだった場所だ。今では絶好の監視施設になっている。ここにも防衛隊員が常駐してるが、宿泊可能なため、野外訓練によく使われている。
「ふ~、外を回った。今度は中央部、森の上を飛ぶか」
下に緑が広がっている。こうして見ると、人が住んでる場所は本当に一部だな。
「おっと! これ以上はまずいな」
そう、不可侵エリア付近だから、上空でも避けた方が無難だよな
(うむ、上から見下ろされるのはいい気分がしない)
(!!! すみません。急いで離れます)
いきなり森の奥の主様から念話が飛んできた。最近は念話も慣れてきたけど、急だと驚く。
「さて、最後は島の館に戻るか。【転移】!」
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島の館の会議室でインカム代官、ミャオ内政官、ボルグ内政官が談笑していた。
「やあ、みんな、今、いいかい?」
「公王様、お疲れ様です。」「お疲れ様ですにゃ」「お疲れ様です」
「旅行者用の温泉と出入国管理局の施設をつくったよ」
「いつも早いですね」「にゃんと!」「……いつも驚かされます」
「インカム代官、施設のスタッフ募集を頼むね」
「了解しました」
「あと、これで人件費と必要物資購入を頼む」
袋に入った金貨、銀貨、銅貨をインカム代官に渡す。
「いつもすみません」
「そのうち主力の回復薬の売上で経済が回るようになると思う」
その後、談笑に加わり、島の館を後にした。
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島の領主邸、ベッドで横になる。
「内政も防衛もしっかりしてきたな。今後は通商と外交だけど、通商は商会が頑張ってるから、残りは外交ぐらいかな。まあぼちぼちやりますか」
今日はいい一日だった。今後の島(公国)の発展を期待しつつ、眠りにつこう。
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