第65話 新領地アグラ
姫様と婚約、公爵位の叙爵、新領地の加増が決定したが、王都に行った時、ひと悶着あった。僕のスキルのことが王と筆頭大臣にも知られ、好意的に受け止められたが、側近の何人かが人として常識離れしたスキルであり、教会による儀式(悪魔祓い?)を提案する意見があったとのこと。島に亜人が大勢いたことも不安要因に加わって。人間離れしたものを感じさせたのだろう。これはその時の様子。
ここは王都の教会、そこでこれから、儀式が始まる。僕は両膝を地面につけ、両手を組み合わせ、目をつぶり、神様にお祈りするポーズを取らされる。前に教会の司祭がいる。
「それではギルフォード伯爵様、始めます」
「神聖魔法、浄化!」
次の瞬間、光に包まれ、何とも朗らかな気持ちになった。これはいいなぁ。
「これで終わりです。気分はどうですか?」
「はい、気持ち良かったです」
「それは良かったです。伯爵様は大丈夫のようです」
魔法をかけられた? 転写できるかな? やってみよう。
小声で「【転写】」
すると神聖魔法【浄化】が複写できた。なんにせよ、これで教会の儀式が完了した。
新領地はギースの隣領で加増により大幅に領地が広くなった。そして、ギースと併せて、東方辺境の大貴族となった。ただこの新領地、問題点が山積みだ。内陸で農業の生産地だが、ここ数年で農作物、特に小麦の生産が落ち込んでおり、王都に納める税収も減っていた。理由は北側の国境付近にある森から度々、魔物が出てきて、耕作に影響が出ていること。郊外での盗賊被害に嫌気が差して村を離れる農民も多いという。また原因不明の奇病が発生して住民の不安が広がっていると言う。前の領主は中心街だけにお金をかけて閉じ籠り、周辺の領地運営をおざなりにしてたらしい。
そう言えば、ウラバダ王国から避難民が脱出した際に、ここの領地を通過したはずだが、警備がおざなりで、そのお陰で素通りできたみたいだ。一方、盗賊が発生する地域でもあるため、姫様御一行がここの領地内の安全性を危惧して多数の衛兵を引き連れたのだ。領地拡大に伴い、北側でウラバダ王国と国境を接することになった。但し、国境付近に深い森があるため、天然の防壁のようになっているのと、ここに魔物がいるため、ウラバダ王国からの侵攻の心配はなさそうだ。避難民もここは通らず、迂回してきた。
実は僕が王女と婚約し、公爵位に就くにあたって、この問題領地の改善を試金石にされた節がある。そのため実際の結婚は新領地が改善された頃を見計らい、二年後となった。
新領地の問題点を整理すると
一、農作物の生産落ち込み
二、国境付近の森から魔物発生
三、郊外で盗賊発生
四、原因不明の奇病
五、領地中心部と郊外の格差
僕の領地を整理すると
一、領地全体は「ギルフォード公爵領」
二、領地を細分すると「ギース領」「ギルフォード島」そして今回加わった「アグラ領」
三、それぞれの中心部(領主邸)は「ギースの港町」「島の港町」「アグラの町」
領地が拡大し、しばらく拠点生活が続きそうだ。【転移】スキル万歳。ちなみに王都の公爵邸は王都来訪時の宿泊用になってる。
王都で王と会談した際、親心で姫様の島暮らしに不安をのぞかせる声があった。おそらく同行した部下から島の住民が亜人ばかりで心配する声があったのだろう。現在、島民の九割以上が亜人で、数では人間が少数なのだから、しかたないかもしれない。王都の本音を要約すると本土内で暮らしてほしいようだ。そのため将来はギースの港町かアグラの町を本拠地にすることも視野に入れよう。
これから新領地改善に注力するため、島の運営はインカムに任せることにした。そして、三人(僕、テネシア、イレーネ)を除いた島内専住者の新役員体制はこんな感じに改めた。
ミア(大薬師)、インカム(代官)、ミャオ(内政官)、ボルグ(内政官)、ビンテス(防衛隊長)、ガイン(防衛隊副官)
島の大多数を占める亜人の実情に合わせ、亜人多数の顔ぶれになったが、僕の代わりに精神的支柱としてミア(人)の存在も大きくなった。
アレス(公爵)、テネシア(男爵)、イレーネ(男爵)は新領地アグラに活躍の場面を移す。ちなみに、僕のフルネームはアレス・ギルフォードで、貴族から「ギルフォード卿」や「ギルフォード公爵」と言われる場合が多いけど、テネシアは「サングローネ卿」、イレーネは「ベネサス卿」と言われることに抵抗感があるみたいだな。その気持ちよく分かるよ。僕も最初そうだったから。まあ、貴族流儀は慣れていくしかないな。
※フルネーム※
アレス・ギルフォード
メリッサ・ロナンダル
テネシア・サングローネ
イレーネ・ベネサス
ミア・セレイド
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