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第60話 キラービー大量発生

バネル行政大臣が処刑される数日前


「あの男は何の役にも立たない! 本当に忌々しい!」


ゴラン王が叫んでいると、後ろに黒い影が……そして、黒い影が王の耳元で囁く。


「あの男はあなたに反抗的です」「邪魔者は処分しなさい」


 王は一瞬、ギョッとしたが、影が王を包み込むと、目が虚ろになり、立ちつくした。


「邪魔者はどんどん処分しなさい」


その声とともに影が消えたが、王の目は血走り、攻撃的表情に変わり


「俺は王だ! 歯向かう者はすべて処分する!!!」


と、絶叫した。


――――

――――――


ウラバダ王国・ある商店街


「亜人達はみんな逃げてしまったな……」

「もうこの国は終わりだよ……」

「俺もどこかに逃げたいよ」

「あの王じゃもうダメだ」


 通りでそんな話が聞こえる。政情の不安、先行き不透明で町の声はどれも暗い。これに最近の王の暴走が拍車をかけている。少しでも国や王の悪口を言うと不敬罪で処罰されるのだ。


「おい、お前! 今なんて言った!」

「いえ、何も」

「こっちに来い!」


 また衛兵に市民が引き立てられていった。今まで亜人に酷い扱いをしてきた者までも、今は自分が被害者のように振舞っている。加害者だった自分は忘れてしまったらしい。


「おい! あれ何だ!!」

「うわ、大きな虫だ!! 逃げろ!!」


 突然、叫び声が響き渡る。大きな蜂のような虫が上空から現れ、人々を襲いだしたのだ。


「ぎゃー!」

「痛い、助けてくれー!」


 この日から、虫による被害がウラバダ王国全土に広がっていった。国中が大騒ぎになったのである。


――――

――――――


<ロナンダル王国・王城・執務室>


「王様、隣国であるウラバダ王国で、国中が虫による被害が発生しております」

「一体、原因はなんじゃ」

「まったく分かりません」

「数日前に王都で発生して、国中に広がっている模様です」

「王都で発生?」


ガロル王とザイス筆頭大臣が厳しい表情で隣国の虫騒動について分析する。


「森の中なら分かるが、街中で発生するのは不自然だし、国中に広がるのは異常だな」

「はい、間者スパイの報告では、巨大な黒い蜂で魔物のキラービーでないかと」

「何! 魔物とな!」

「被害が広がっており、国境付近まで迫っているようです」

「それは不味いな……」

「キラービーに刺されると、猛烈な痛みを発し、死ぬこともあるようです」

「突然の発生は原因不明じゃが、急ぎ国境で防衛せんと。対策はあるか」

「大量の空飛ぶキラービーです。通常の戦闘、兵士では役に立ちません」

「ではどうしたら、良いのじゃ」

「……剣や槍などの通常兵器でなく、遠距離で一斉に放てる攻撃がふさわしいかと」

「……そんなもの、あるのか?」

「……あります。魔法です」

「魔法か……分かった。すぐギルドに連絡して、魔法で遠隔に攻撃ができる冒険者を集めるよう要請せよ」

「分かりました」


――――

――――――


島の領主邸の執務室で、ソファーに腰掛けながら休息していると。


(会長、今、大丈夫でしょうか?)


王都の商会本館のメラルから念話が届いた。


(大丈夫だよ。どうした?)

(先ほど、王都で冒険者への招集命令が出たようです)

(何かあったのか?)

(ウラバダ王国でキラービーが大量発生し、ロナンダル王国に向かってるらしいです)

(それで僕も招集されたと?)

(今回は魔法で遠隔攻撃できる冒険者が対象で、Aランクだと期待も大きいようです)

(そうか、分かった。連絡ありがとう)


 メラルとの念話終了後、テネシア、イレーネに念話し、王都ギルドへ向かうよう決めた。久々の冒険者だ。


 王都ギルドに着くと、冒険者がたくさん集まっていた。今回はキラービーが対象だが、ウラバダ王国中で猛威をふるっており、その数が半端でないらしい。一応、王軍も後方に控えるが、前方の冒険者がメインで討伐を期待されている。


するとテネシアとイレーネが目をらんらんと輝かせていた。


「攻撃魔法を使いまくれるな!」

「はい、がんばりましょう!」


 特にテネシアは今まで素材回収に配慮して、火魔法を抑えに抑えて使っていたから、楽しみにしてる感じだ。イレーネも風魔法を楽しみにしてるな。


「先ほど、国境を越えて、辺境地区に入ったとの連絡がありました。急ぎましょう」


ギルドマスターが声を上げる。


 王都から辺境地区に向かう途中、一匹のキラービーが飛んできた。すると前にいた冒険者がファイヤーボールで燃やした。


「おお、さすがですな」

「やはり魔法は凄い」


その冒険者を後方の兵士達がほめる。この程度で済めばいいけどね……


 辺境に近づくにすれ、キラービーの数がどんどん増えてくる。冒険者たちも攻撃魔法を連続で撃ち出した。まだ大丈夫だな。しかし、その時、一人の冒険者が叫んだ。


「あ、あれは何だ!!」


目を凝らして、先を見たら黒い塊が見える。近づくにつれ、どんどん黒い塊が大きくなる。


「あれはキラービーだ!!」


 数千、いや数万か、数えるのが不可能なぐらいのキラービーが次第に迫ってきた。もう目の前が真っ黒になりつつある。


「これはヤバイな……」


 他の冒険者達も攻撃魔法を使用してるが、焼け石に水。中には恐怖のあまり後ずさりするのもあらわれた よし、そろそろ行くか。


「テネシア、イレーネ、行くぞ!」


「ファイヤーストーム!!!」


テネシアの大型火魔法、大きな炎が竜巻になって、キラービーを一斉に燃やし消した。


「エアカッター!!!」


イレーネの大型風魔法、風が刃となって、キラービーを切り刻む。


二人の攻撃で黒い塊が幾分小さくなったが、まだまだだ。


二人が大型魔法を連発してる間に、漏れたキラービーが後方の兵士達に迫ったので、後方支援する。


「【スリープ】【スリープ】【スリープ】【スリープ】【スリープ】!」


どんどんキラービーが落ちていく。


「兵士さん、キラービーにとどめを刺して下さい」


 狙ったわけではないが、僕と兵士さんの連携がうまくいった。気が付くと他の冒険者達は魔力を使い果たしたのか、その場でがっくりしている。しかし。まだまだ続いてる。


「テネシア、イレーネ、これを飲め!」


 二人にミア特製の回復薬を与えた。ここに来る前に回復薬を大量に収納してるから、魔力切れは防げるだろう。


 気がつくと魔法を使い続けてるのは僕たち三人だけになっていた。よし、もう一頑張りだ。このままキラービーを始末するぞ!

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、評価やブックマークをして頂けると大変有難いです。

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