第52話 ウラバダ王国の混迷
今日も行政大臣ハネルの憂鬱な時間が続いている。
「亜人共をもっと厳しく取り締まれ!」
「武器の調達先はどうなった!」
ゴラン王が吠えまくる。国の労働や技術を支えていた亜人がどんどん逃げ出し、各方面に支障が出ているのだ。亜人を虐げ、迫害し、囚人、奴隷に追いやって、酷い扱いをしたことのツケがいっぺんに出ている。
しかも亜人がいなくなったせいで、武器の生産にも致命的な支障が出ている。鉱山奴隷がいなくなって、鉄鉱石の供給が遅れ、剣を作るドワーフ職人もいない。おまけに前線で戦う戦争奴隷までいなくなった。
それで国外に調達先を求めていたが、ロナンダル王国のギルフォード商会の武器が一級品であることを突き止め、再三、要請してるが、まったく話が進んでいない。業を煮やして強面の連中に依頼したが、まだ連絡が来ていない。
「王よ、亜人どもは取り締まりを強めれば、かえって国外に流出します」
「武器は現在、交渉中です」
最近、こんな不毛なやり取りばかりだ。
「だから、亜人は逃げないよう取り締まれ!」
「交渉中とは、本当に交渉してるのか! 話は進んでいるのか!」
そんなに怒鳴っても、どうしようもないだろ……
「ですので、取り締まりを強化するから、逃げるのです!」
「交渉は相手のある話で、希望通りいかない時もあります!」
「お前は屁理屈ばかりだ。黙って王の命令に従え!」
やばいな、血管が切れそうになってる。少し頭を下げとくか。
「力が及ばず申しわけござません」
「その通りだ! 事態が悪くなったのは全てお前のせいだ!」
ああ、いつまでこんな日が続くんだ……
~~ロナンダル王国、国境付近~~
獣人親子が疲労困憊で国境付近を歩いている。
「お母さん、もう疲れた」
「もう少しだから、頑張ってね」
「お前たち、早くいくぞ、目指す国は差別がないらしいからな」
それを遠くから見ながら国境の衛兵がぼやく。
「またウラバダ王国からだな」
「どうする?」
「親子連れか……ここは辺境だし誰も見てないし……」
獣人親子が国境を通過した。
「でも中心部は厳重で無理だからな」
「あの親子が助かればいいよな」
こんな光景がもうしばらく続いている。
~~ロナンダル王国・ギース領(ギルフォード伯爵領)・境界付近~~
「あれ! こっちにたくさん、人が来るぞ!」
「……あれは、いつもの奴だな」
「亜人か……ウラバダ王国からの避難民だな」
「領主様から避難民救助の命令が出ている。行くぞ!」
領主軍が避難民を救助し兵舎で休ませてから、馬車で伯爵邸まで運ぶのが日課になっている。ただ最近は伯爵邸も一杯で、兵舎で避難民を一時待機させる日々も多い。
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