第43話 領主軍
「もっと素早く剣をふれー!」
「よそ見をするなー!」
テネシアの声が響き、山の館の訓練場で男達が剣を振っている。囚人達と面談し、腕っぷしが強そうな人間を選んで、領主軍(私軍)を新たに編成することを決めたのだ。軍隊と言っても百人程度の小規模なもので、領主と領内の安全を守ることを任務とする。衛兵とかぶりそうだが、災害対応、復旧、土木作業、力仕事、なんでもやらせたい。
「領主様、最初はどうなるかと思いましたけど、男達は意外にがんばりますね」
「もう後戻りできないから、みんな必死なんだろうな」
もう一人の教官であるイレーネが感心してる。そう言えばイレーネは会議で役職名の決定をしてから公では僕を領主呼びするようになったな。
「軍ができたら隊長はテネシアか、イレーネにしたいと思ってるんだけど……」
「それならテネシアさんがいいと思います。元が気性の荒い連中だから、統率するなら男勝りなテネシアさんがぴったりです」
「じゃイレーネは副官をお願いするね」
「了解しました。でも領主様の側近兼護衛は続けますよ」
「分かった」
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<ギースの伯爵邸・代官室>
代官のミアと話す。
「領主軍の経費は何とか捻出できそうかな?」
「領主様の改革で無駄な経費が大幅に削減できましたので、大丈夫です」
「それは良かった」
「場所と建物はどうされますか?」
「場所は街外れに広い土地があったから、そこを使おう。建物は夜中に僕が作っておく」
「……一晩で建物ができたら驚かれますよね」
「人が少ない場所だし、少し高台で周りに林があって目立たないから大丈夫だと思う」
「武器や装備はどうされますか?」
「僕が作るよ」
「……領主様のお陰で経費と仕事が省けて非常に助かります」
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「今日から領主軍の発足を行う!」
テネシアの勇ましい掛け声に反応し、兵士達の背筋がピンと伸びる。今日から領主軍が始動した。隊長はテネシア、副官はイレーネだ。百人程度の小規模で、かつ即席ではあるが、山の館での集中訓練を通して、面構えも変わってきた。武器は剣、槍、弓を一通り、実践経験はほとんど無いが、これから少しずつ鍛えていけばいいだろう。
領主軍と言っても、事実上の私軍(僕の軍隊)なので、領主である僕が好きなように使える。軍隊だから、外敵との戦争が本業ではあるだろうが、今のところ戦争の危険性はなさそう。だから戦争以外の仕事をメインにこなしてもらう。災害救助、復興活動、救援、土木作業等だ。これらは軍の訓練にもなるからな。領内の美化活動もいい。
それと領主軍は衛兵隊への刺激、牽制にもなるだろう。たるんでるといつでも取って代わるとね。でも領主軍は実際に「衛兵隊予備軍」の意味も持ち合わせている。どうも衛兵隊は全面的に信用できないからな。
ちなみに鬼人兄弟だが、人間を殴り続けて、すっかり復讐心が収まってしまった。むしろ触れ合いを通じて親近感を持ったようだ。今では領主軍の鬼軍曹として素手格闘の練習相手を熱心に務めている。適材適所だな。結果オーライだ。
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