第42話 鬼人兄弟
人間への復讐心が強い鬼人の兄弟がいて、防衛隊で扱いに苦慮していると、前回の会議でビンテスから報告がされたが、本日、面談をすることにした。長身でいかついし、まさに鬼だな。
「君たちは鬼人の兄弟でレッド、ブルーで良かったね?」
「……」
「……」
「ビンテスから、人間への復讐心が強くて、困っていると報告があった。間違いないかな?」
「……」
「……」
「何も話さないと、先に進まないし、とりあえず君たちの気持ちを教えてよ」
「……あんた、人間だろ」
レッドが口を開いたが、語気が強いなぁ。
「人間だけど、亜人のみんなは大切な仲間だと思っているよ」
「……人間は信じられない」
今度はブルーが口を開いた。う~ん、こりゃ重症だな。
「どうしたいんだ?」
「人間に復讐したい」
「やられたから、やり返したい」
言ってる内容はアレだけど、この兄弟、仲は良さそうだな。
「具体的にはどうしたい?」
「人間を痛めつけたい」
「人間をいじめたい」
う~ん、徹底してるな。痛めつけたいか……一般の人を痛めつけるのは絶対だめだし、何かいい方法は、痛めつけていい人間なんているわけないし……んん!! 待てよ……
「もし、人間を痛めつけられたら、うれしいか?」
「うれしい」
「痛めつけたい」
ふふふ、いい方法を思いついたぞ!
――――
――――――
<ギース領・衛兵所>
「領主様、本当にいいんですか?」
「囚人で牢屋が溢れているなら。重罪犯はこちらで預かるよ」
「助かります」
二百人の囚人に手枷、足枷をした上、数珠繋ぎで領主邸の地下室まで連れてきた。道中、衛兵隊、テネシア、イレーネがにらみを利かしてるので、表立った反抗はなかったが、態度から敵愾心は消えてない。この連中をこのまま社会に出すわけにはいかないな。
地下室で全員に目隠しをした。よし【転移】だ。
――――
――――――
<山の館・地下二階・牢屋>
二百人の囚人を十人ずつ、二十の牢屋に入れた。隔離部屋は牢屋仕様にし、拡張済みだ。目隠しを取ると、囚人たちが驚いている。さて、やるか。
「ここは地獄だ! 罪を反省するまで、いてもらうぞ!」
わざと薄暗くして恐怖心をあおったが、出だしは上々。
「心の底から反省するまで、出ることはできない!」
このタイミングで鬼人兄弟に登場してもらう。
「人間が憎い!」
「人間をいじめたい!」
とりあえず廊下から怒鳴り声を出してもらった。普段は強面の囚人も鬼人の登場に不安と恐怖の表情が隠せない。さて本番だ。
「うわ~!」
「やめてくれ!」
「助けてくれ!」
「食べないでくれ!」
鬼人達が牢屋に入っていく。死んだら不味いので、素手で殴る蹴る程度だが、次々に囚人がボコボコになっていく。まあ10対1なのでハンデはつけてるが、それでも鬼人の力にはかなわない。たまに人間の冒険者が鬼人を倒したりするが、あれは剣と魔法があるからで、素手なら勝負にならない。しばらく牢屋から囚人の叫び声が響いたが、やがて静かになった。
さて、やるか。
「エリアヒール!」
囚人達が回復した。そしてまた鬼人兄弟が牢屋を回る。
これを数回繰り返すと、ほとんどの囚人達の反抗心が折れた。
面白かったのは、鬼人兄弟。はじめは力強く人間を殴っていたが、後半は満足したのか、かなり手加減しだした。一応、鬼人兄弟には人間をたくさん殴れる代わりに、殺すのは禁止したが、約束を守ってくれたようだ。よく見たら急所は避けていた。万一、鬼人兄弟が暴走したら、僕が【収納】して防いだけどね。
さて、大人しくなった囚人達をどうするか? せっかく更生しても職が無ければ、悪事に走るのは世の常だ。就職候補先としては、衛兵、町の清掃、町の土木工事、船の荷下ろしかな。本人の適性を見て、放り込んでいこう。
それと、ギース領は衛兵がいるけど軍隊がない。衛兵は軍隊と言うより、警察官、警備員に近い存在。通常、軍隊は国(王)が保有しているが、地方領主でも領主軍(私軍)を持つケースはあるようだ。試しに百人程度の小規模な軍隊を作ってみようかな。
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