第32話 商会の発展
「会長、大変です! 商品の在庫がなくなりそうです!」
商会の本店長メラルから悲鳴にも似た報告がなされた。確か一年分は在庫を準備したはずだが、まだ半年ぐらいだ。どうしたことだろう。
「実は……」
メラルの話によると、以前、海賊船から救出した子女を丁重に各国に送り返したが、高い地位の貴族が多く、商会への感謝が凄かったと言う。しかもギルフォード商会の会長が海賊を成敗し、貴族の子女を助けた話は武勇談になり、庶民にまで広まったとのこと。
「それが宣伝になって、商品が飛ぶように売れております。また各国で支店を要望する声まで上がっております」
「……そんなことになっていたのか、最近、忙しかったからな」
「話はそれで終わりではありません」
「えっ、まだ、あるのか」
「王城でも今回の件を称え、爵位を上げる予定のようです」
「また王城にいくのか……」
「それと……各国への支店の開設はいかがなさいますか?」
「そんなに強い要望なの?」
「あの品質の商品を手にしたら、他の物は使う気が無くなるのも無理はありません」
「……」
しかたない。商品の大量生産をするか。自分でまいた種は自分でからないとな。
「分かった。商品はすぐ用意する。今回は商品を直接、本店の倉庫に転移させるからスペースを開けて準備しておいてくれ」
<山の館>
ここは久しぶりに来たな。おっユニコーンが近寄ってきた。まだいたのか。あれっ! なんか数が増えてるな。ユニコーン達の頭を撫でた後、早速、作業に取り掛かる。その前に収納内の素材を確認してと。あれれ、少ないな。島の開発に使ったからか……じゃあまずは素材集めだ。
「【収納】【収納】【収納】【収納】【収納】!」
山の奥に行き、木から、石から、土から、金属から、片っ端に収納しまくった。
「生物素材のストックはまだまだあるな」
今回は魔物討伐しなくて済みそうだ。逆に前回、生きたまま収納した魔物を返しておくか。
「【取出し】!」
大量の魔物が一気に放出された。うん生きてるな。よし戻ろう。倒して再収納する手もあったが、今回は護衛の二人を連れてきてないし、何より時間が無いからな。
素材回収後「【加工】【複写】」スキルで鬼のように生産しまくる。以前、【複写】レベル3(大量複写)をゲットしており、一つ【加工】して作れば、後は【複写】で単純作業だ。ちなみに今回も【加工】レベル2(品質改善)で作成した。この水準でさえ、売れ行き好調なのに【加工】レベル3(最高品質)を使ったら世の中が混乱しかねない。
「よ~し、これで三年は大丈夫だろう」
山積みの製品を前にしたが、少し不安になった。
「転移先のスペース、大丈夫だろうか……」
【転移】レベル2(千里眼で転移先無制限)の千里眼でスペースを事前確認する。メラルが倉庫内を整理してくれたようだ。いけそうだな。
「よし【転移】!」
これで物品は大丈夫だ。
――――
――――――
<商会本館・会長室>
会長室にメラル、バーモの姉弟を呼んで今後の方針について、打ち合わせした。
「会長、納入ありがとうございます。これで販売は大丈夫です」
「それで、各国の支店開設の件だが、立地条件、移動ルート、現地での需要等を吟味して、大丈夫そうなら、進めてもいい」
「わかりました」
「ただし政情不安定な国、好戦的な国、亜人差別のある国は避けてほしい」
「それなら先に国内に出店した方がいいですね」
「……そうだね、国内にもう二店舗ぐらいあってもいいかもな」
「それなら現在王都本店を中心に西(山側)と東(海側)にありますから、南と北に出店したら面白そうです」
「なら国内2店舗を優先検討し、じっくり吟味して他国への出店をすればいい」
「それと君は本当によくやってくれてるので、店舗統括本部長に任命しよう」
「店舗統括本部長ですか?」
「君は現在、本店の店長だけど事実上、他の2店舗も統括してるし、適任だ」
「本店の店長はどうなるのでしょうか?」
「君が後任の適任者を決めればいいし、今後は全店の店長を統括してほしい。勤務地は本店に隣接するここ本館だ」
「分かりました」
「それとバーモ、君も店長を離れて、副部長としてお姉さんの補佐をしてほしい」
「了解しました」
「それと物品はすべて統括本部(本館)に納め、そこから各支店にいくようにするから、統括本部(本館)、本店付近で大きな倉庫を確保してほしい」
「どのぐらいの大きさですか?」
「今の十倍ぐらいは欲しいな。転移魔法で納めるから、外部から見えない構造がいい」
「……王都内だと難しいかもしれませんね」
「一応、探してみて。難しそうなら僕が動くから」
「分かりました」
これで、商会も大丈夫だろう。久々に男爵邸に顔を出すか。
<男爵邸・執務室>
「この間、変わったことはあったかな?」
執事のバイアスに報告を求めたところ、爵位上げの話が王城で上がっていて、近く呼ばれるだろうとのこと。面倒だな。海賊退治について聞かれるだろうから適当に考えておくか。
「その件に関係して、手紙がきております」
手紙を開封すると助けた貴族子女からのお礼だった。自分は名乗ったつもりはなかったけど、乗船名簿と顔から推測できたんだろうか。旅をする前に関係者に報告してるし、その直後の事案とあっては分かりやすいか……
「それと、男爵様が不思議な技をお使いになるとの噂も出ているようでございます……」
あちゃー、やってしまったか。混乱してる場面だったけど、見てる人がいたか。でも、この世界は魔法が存在するから、説明はできるんだけど、ただなぁ……
「実はバイアス、内緒にしていたが、僕は魔法が使える。だけど、騒ぎを避けたいと思い、口外してないんだ」
突然のカミングアウトだったが、バイアスはあまり驚いた様子は無かった。薄々、気が付いていたんだろうな。ひょっとすると内心は驚いてるかもだが、表面上、冷静沈着を保っているのは、さすがベテランだ。
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