第198話 王軍隊編成
ここはギース領の防衛隊施設だ。今日までテネシアが中心となって、訓練を重ね、王軍隊編成の準備を進めてきた。広場に千人もの男達が精悍な顔立ちで、背筋を伸ばし、威風堂々並び立つ姿はなかなか壮観だ。
「諸君、今日まで厳しい訓練によく耐えてくれた。君達は本日から王の直属の軍隊となる。そして、この施設も防衛隊施設から、『王軍隊訓練基地』に名称を変える。引き続き訓練に励んでもらうが、新しい隊長を紹介したい。訓練の際にも一緒にいたから、わかると思うが、ギースの王城の防衛隊長のカイルだ。彼を王軍隊の隊長とする」
カイルは元、王城の近衛兵出身であり、メリッサの専属護衛も務めたことがある。その後、ギースの防衛隊長も歴任してるし、実力、経歴とも申し分ない人材だろう。
「今までは、ギースが活躍の中心だったが、今後は王都や国中で活躍してもらう予定だ。カイル隊長の指示によく従い、王国のために尽くしてくれ」
王軍の成立により、テネシアは王軍隊、近衛兵隊、衛兵隊の三軍を統括する総司令官となった。これで名実ともに立派な元帥だ。僕が就任した頃の象徴的な元帥とはまったく重みが違う。
「カイル隊長、テネシア元帥の指示によく従うように」
「はい、国王陛下、了解致しました!」
「テネシア元帥、君はこれで、王軍隊、近衛兵隊、衛兵隊の三軍を統括する総司令官となった。引き続きよろしく頼むよ」
「わかった。陛下!」
ちなみに今日の晴れの舞台には、防衛隊施設だった頃からの指導官であるイレーネ、レッド、ブルーも当然参列している。そして、この式典の様子に王軍隊訓練基地のインキス所長、スタッフ一同も感慨深けだ。元々、ここは海賊、盗賊等、悪党達の更生、訓練を大きな目的としていたが、ついに王軍隊訓練基地として、日の目を見ることとなったのだ。今日までに人員の整理をし、王軍隊加入を希望しない者には他の選択肢も与えてきた。しかし大部分が自ら望んで加入したのだ。
「インキス所長、施設の名称は変わったけど、戦力はいくらでも欲しいから、今後も引き続き、更生と訓練を頼むよ」
「了解しました!」
名称は変わったが、これまで通り、人材更生施設としての役割は残すつもりだ。悪党や、そこまでいかなくても、小悪党は世の中にたくさんいるからね。
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<王城・御前会議>
僕、テネシア元帥、イレーネ宰相、そして八大臣が出席する。八大臣は内務大臣、財政大臣、外交大臣 軍事大臣 農業大臣 土建大臣 福祉大臣 学問大臣となる。
「本日、王軍隊を編成したので、皆に報告する!」
「えっ!」
「なっ!」
大臣達は少し動揺するも、以前、話をしていたことなので、外見上はすぐ落ち着く。まあ、内心はハラハラだろうが。
「これで我が軍は王軍隊、近衛兵隊、衛兵隊の三軍となる。そして三軍を統括する総司令官はテネシア元帥となる」
この日まで、長い間、テネシア、イレーネはずっと三軍の隊長、部隊長、隊員らと一緒に対談し、稽古する等、友好な関係を構築してきた。現場(兵士達)の実質的統括はとっくに終わっている。
いつもなら、ここで、皆の意見を聞くのだが、今回は僕の決定に従ってもらう。
「誰か反対の者はいるか?」
少しだけ語気を強めて、威厳を持って言葉にする。
少し間をおいて、ハイネラ軍事大臣が手をあげた。
「……反対ではありませんが、こういう重要案件は事前に相談頂きたかったです」
なるほどね。今までずっとそうしてきたからね。それはよくわかるけど……
「ハイネラ軍事大臣の言うことも良く分かるが、これは王軍である。言わば、私の軍隊だ。私が私のものをつくるのに、相談が必要だろうか?」
「し、しかし、人件費など経費は国から支出するのではないですか?」
「それは心配いらない。私の領地の収入だけで十分に賄える」
「金銭以外にも、人材の手配、施設の確保、訓練など課題がございます」
「人は既に集めている。施設も確保済みだ。訓練もしてきた。これで問題ないだろう」
「……それでは私は何をすればいいのでしょうか?」
「軍隊の直接の訓練や指揮はこちらでやるから、側面のサポートを頼みたい。事務手続きや関係方面への連絡とかな。とり急ぎ、王軍隊編成について、関係方面へ通達してくれ」
「……了解しました」
今迄、多少、曖昧にしてきたが、今回、三軍の指揮権を完全にテネシアへ移行させた。軍事大臣は文官の貴族だから、現場と距離があったし、文官は文官らしく事務手続きに専念してもらおう。指揮系統を中途半端にするのが一番リスキーだからね。現場(兵士)が最前線で動いてる時に、はるか後方で戦況を知りもしない文官に邪魔をされたくない。
前の世界ではシビリアンコントロール(文民統制)という言葉があったが、それとは一線を画す。これが三年間、この国の状況を見てきた結論だ。これは僕の心底から感じたことだが、僕はこの国の文官(大臣、役人)の仕事ぶりに懐疑的なものを感じてるからだ。
今回の件で他の大臣達も僕の対応の変化を感じ取ってくれたことだろう。今まで、ほとんどの案件で、参加メンバーの和を重視してきたが、それはすべての案件についてではないということ。この国は王政であり、王が直接管理する範疇については、僕の意向を優先させてもらう。平たく言えば、何でもかんでも大臣に融和するのではなく、ケースバイケースで王の意向を通す場合があるということだ。
これでだいぶ、僕が目指す富国強兵に近づいてきたと思う。シバ領の鉱山経営は軌道に乗ってきたし、経済は順調だ。それに、王軍隊はつくって終わりではないよ。ここからが本番だ。
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