第188話 通商外交官2
<キネサス目線>
いつもは商人相手の通商の案件が多いけど、今日はロナンダル王国へ外交の案件で訪問している。場所は王城の政務会議室だ。相手はイレーネ宰相だけど、今回は薬関係の議題で、大薬師ミア様も同行、それと、要人護衛の議題で、メヌール隊長も出席した。ちなみにミア様の大薬師の称号はギルフォード王国、ロナンダル王国、両国で授与されたものだ。
イレーネ宰相が口を開く。
「キネサスさん、いや、男爵位を受けたから、キネサス卿の方がいいかしら?」
「他国ではキネサス卿とか、キネサス通商官等が多いですが、ここは身内ばかりなので、いつも通りでいいです」
「そう?それなら、キネサスさんと呼ばせてもらうわ」
「わかりました」
「ミアさんの回復薬は今迄通り、ギルフォード王国の専売でかまわないわ」
「そうして下さると助かります」
「これは前々からの決まりですからね」
「その代わり、ロナンダル王国内で、つくった回復薬『以外』の薬はこちらの自由にさせてもらいます」
「それは当然だと思います」
「ミアさんもそれでいいですか?」
「結構です」
薬関係については、基本的に従来通りの取り決めの再確認で終わった。
「次は人の移動についてですね。ギルフォード王国(島)の観光、開拓がさかんで、こちらから、旅行者、移住者が、引き続き、そちらに入ってると思われますが、その一方、数は少ないですが、ギルフォード王国からも、こちらへも旅行者、移住者が増えてきています」
「それは承知しております」
「お互いの交流は大いに結構ですが、受入れ側の混乱を避けるため、事前に情報提供の協力ができたらと思いますが、いかがでしょうか?」
「具体的にはどうしたら宜しいでしょうか?」
「滞在期間、目的、行先等の事前確認をして、お互いに情報共有するのです」
「それなら、ギースの代官とギルフォード港の出入国管理局で、かなり連携してると思いますが」
「今まではギースから島への一方通行だったのが、双方向となって、逆の情報が不足してます」
「つまり島から出る側の情報が不足してるということですか?」
「そうです。ギースから、島へはたくさんの情報が渡り、島で入国者をチェックできていますが、島からギースへは情報が不足しています」
「わかりました。改善するよう努力しましょう」
なるほど、これは盲点だった。島の人口は増える一方だけど、確かに出る人もいるよね。
「次に要人護衛についてです。現在、ロナンダル王国で、ギルフォード王国の要人護衛隊に依頼を出すケースが出てますが、これは今後も続けてもらえますか?」
「その予定です」
「メヌール隊長、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
「要人の護衛に人間の姿をした部隊はシークレットサービスに最適ですし、人間の姿をしながら、人間以上の力を持ってるのは最大の魅力です」
「……少し話がそれるかもしれませんが、ギルフォード商会では竜人護衛隊を主に使われてるようですが、そちらとはバッティングしないですか?」
「竜人護衛隊は賊に襲われないよう、あえて怖めに演出しています。戦闘も武器と魔法で攻撃的なのが特徴です。しかし要人護衛はもっと目立たず、静かに倒す方が向いてるんです」
「……なるほど、確かにメヌール隊長は静かに相手を制圧しますね」
その後も細かい打ち合わせをしたが、結局、同じ王様を掲げてる国同士だし、身内国なので、最初から最後まで包み隠さず、本音ベースで会談できるので本当に楽だった。今、こうして会談してるイレーネ宰相もギルフォード王国では開拓時から関わった最古参役員なのだから。言わずもがなだ。実際は僕以上にギルフォード王国のことを大切に考えており、そして肩入れし過ぎないよう、常に両国のバランスを取られている。僕も見習わないと。
本日の主要な議題が終わり、ティータイムとなった。
「通商や外交で困ったことがあったら、何でも言ってくださいね」
「ありがとうございます」
会議中もそうだけど、侯爵や宰相という高位、重職にありながら、まったく気取ることがなく、自然に接してくれる。この方が宰相で本当に良かった。それにしてもミア様とメヌール隊長は距離が近いなぁ。こういうのを強い結びつき、絆って言うのかな。イレーネ宰相と言えば、もう一方のテネシア元帥は威圧感が凄いんだよね。今だから白状するけど、最初に会った時はかなり緊張したっけ。島にも狼獣人のビンテス防衛隊長、鬼人のガイン警備隊長がいるけど、竜人のテネシア元帥はそれ以上だな……みんな凄い方達ばかりだけど、それをまとめるギルフォード陛下が一番、凄いんだろうな。
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