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第184話 竜人護衛隊

<ライズ目線>


「姉さん、いつもありがとう」

「おお、いいってことよ」


 ベルム領の竜人居住地区の代表であるライズは、テネシア姉さんの弟だが、定期的に領主であるテネシア姉さんに地区内の報告をしている。そして、その度に援助やアドバイスをもらっていた。


「陛下と姉さんのお陰で、仲間達と平和に暮らせる。感謝しないと」


 そう言って、ライズは竜人護衛隊の様子を見に行った。行くとギルフォード商会の荷馬車が到着しており、今日の護衛の竜人が、商人と打合せしていた。


「いつも仕事を下さって有難うございます」

「いえいえ、こちらこそお互い様です」


 今日の便はベルム領から王都に向かい、そこで荷を降ろした後、ベイスラ領、パンタ領、アグラ領を横断し、ギース領に向かうと言う。そしてギース領で、ギルフォード島から来た特産品を積んで、また戻って来る予定。仲間達に声をかけよう。


「長旅だけど、気をつけてね」

「もう何度かこのルートで行ってるけど、盗賊も何も出ないよ。昔、『三英雄』が国中の盗賊を討伐したらしいから、本当に助かる」


 三英雄……そう、今の陛下、元帥、宰相の三人のことだ。そのうち元帥のテネシアは自分の姉でもあり、何気ない一言が誇らしく感じる。もともと三人は『消滅の風火』という伝説の冒険者パーティーのメンバーであり、たった三人で、王国内はもちろん、大陸中の悪党を討伐してきたらしい。時にはたった三人で万を超える魔物を討伐しており、救われた国はいくつもあると言う。


「本当に姉さん達は凄いよ……」


 しばらくすると次の荷馬車が来た。ここベルム領はギルフォード商会の記念すべき第一号店が開いた地でもあるらしい。今でこそ支店数は大陸中で百を超えるが、すべてはこの店から始まったということだ。


「あっ、次は豪華そうな荷馬車だな」


 今度は隣国エルスラ共和国へ、宝飾品を届ける便らしい。これは高価だから、護衛を増やさないと……いつもは護衛二人ぐらいのところ、護衛を十人つけた。


「これは責任重大だ。僕も乗ろう」


 国中の盗賊は壊滅済みだし、エルスラ共和国も昔より治安は良くなっているが、外国の貴族向けであり、責任重大だ。万が一のことがあってもいけない。この便は一度、王都に入り、そこから、ベアル領、サイラス領と北上し、国境を越えて、エルスラ共和国へ向かうのだ。


 途中の王都はいつも通り、人で賑わっている。そこの商会本店で、商品を積み増し、北に向かう。ベアル領に入った頃はまだ賑わっていたが、途中から、小麦畑が開けてきて、風景が一変する。


「いつ見ても、ここは凄いなぁ」


この風景がしばらく続き、辺境のサイラス領に入ると、荒野が広がってくる。


「対して、ここは何もないなぁ」


 土地がやせているのか、乾燥した土地に集落がポツリポツリと点在してる風景が広がる。ここをしばらく過ぎると、大きな防壁が見えてくる。


「あれが、陛下がおつくりになった国境の防壁か……いつ見ても凄い……」


 この防壁は隣国からゾンビが押し寄せた時、陛下が築き上げたものらしい。見ると防壁は視界のはるか先まで続いており、こんな巨大な建造物をたった一人でつくった陛下は常人ではないし、神の領域に踏み込んだ存在なのかもしれない。


防壁に国境兵がいて、検問している。


「よし、次!」

「ギルフォード商会です」

「はっ!どうぞお通り下さい!」


 一瞬でパスだった。他の荷馬車や旅行者等は荷物や持ち物を細かくチェックされていたが、ギルフォード商会の名を出した瞬間、ろくなチェックもせず、素通りなのが笑える。しかし、それも当然と言えば、当然だろう。ギルフォード商会は大陸一の大商会であり、王家御用達商会であり、なんと言っても今の陛下が会長でもあるのだから。


「さて、国境を越えた。ここから中心街に入るまでが、一番の要注意場所だな」


 今回は、竜人護衛隊を十人も乗せている。少し過剰な感じはしないでもないが、それぐらいが丁度いいといつも陛下や姉さんは言ってるしな……


 エルスラ共和国に入って、しばらくは辺境ということもあって、荒野が広がっていた。すると……


「おっ!なんだ!」


目の前に弓が飛んで、地面に突き刺さる!


「危ない【結界】!」


 こんなこともあろうかと、陛下から結界を張れる指輪を頂いている。練習では何度も使用したことがあるが、実践では初めてだ。どうやら横の岩場から弓を放って来たようだ。


「そこの者!出てこい!ギルフォード商会の荷馬車だと知った上での狼藉か!」


すると弓を構えた二十人ぐらいの男が、一斉に荷馬車を包囲しようとする。


「させるか!みんな、馬車から降りて、応戦しろ!」


その瞬間、荷馬車から十人の竜人が降りてきて、一斉に火魔法を連射!


「ファイヤーボール!」「ファイヤーボール!」「ファイヤーボール!」


 野盗たちは弓を放つが【結界】に防がれて、すべて途中で落ちてしまう。そして弓矢が切れた者から火魔法の餌食になっていった。


「うぎゃあああ、熱い!」

「こんなの聞いてねぇ!」

「やはりギルフォード商会の荷馬車に手なんて出すんじゃなかった!」


数分で野盗どもを捕縛。荷馬車の奥に押し込んだ。


「しかし、場所を食うなぁ……」


姉さんに念話で相談すると、すぐ【転移】で来てくれた。


「おお、大量だったな。でかしたぞ」


なぜか、ニコニコ顔で頭をポンポン叩く姉。


「こっちで引き取るわ!貴重な戦力、労働力だ」


その後、姉さんが野盗どもを引き連れて、【転移】していった。


「……一体、どこに連れていったんだろう?」


後日、姉さんに聞いたら、ギースの防衛隊施設と言うところで、更生させるとか。


「あんな野盗が、更生なんてするんだろうか?」


 まあ、あの姉さんのことだし、その施設の隊長も兼任してるらしいから、心配なんてする必要ないか。肝心の荷物の方は無事、エルスラ共和国の貴族の屋敷に届けられた。ちなみにこの国でもギルフォード商会の名は超有名であり、中心街に入ると


「おお、ギルフォード商会の荷馬車だ!」

「総督様の商会よ」

「国中に援助してくれた商会だよね」

「命の恩人だ!」

「護衛も強そうだな」


等と声をかけられる。


護衛の僕達まで称賛されるんだから、まいっちゃうよね。


 この仕事をして、つくづく感じるけど、本当に陛下のご威光は一般大衆に広まっている。陛下の名を傷つけないよう、気を引き締めないといけないな。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、評価やブックマークをして頂けると大変有難いです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前から少し気になってたけど 野党じゃなくて野盗な気がする。
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