第1833話 財源論2
続きです。
政治家たる者、政策を語るべきだが、政策の実現にはお金がかかるものであり、その財源も合わせて語れなければ実効性が疑わしくなってしまう。議席数の少ない政党はこれができず、だからこそ彼らは議席数が少ないのだ。どんなに威勢のいいことを言っても、国民受けするようなことを言っても、財源がなければ話にならない。昔の政治家は何かのひとつ覚えのように「福祉を充実させます」とばかり言っていたが、財源を問われると、しどろもどろになり、誤魔化すことが度々あった。
「財源はどうしますか?」と問われて、「国債を発行します」では話にならない。それでは「借金で何とかします」と言っているのと同じだ。「建設国債」「子育て国債」「GX経済移行債」などが既に発行されているが、これらはすべて借金だ。
それを追求されると、「国債は借金ではない」とか、「国債は国民の資産だから問題ない」とか、逃げ口上を垂れるが、国債は償還義務があり、事実上の借金に他ならない。誤魔化そうとしてもダメ。確かに国民の資産にはなるが、政府の負債でもあるので関係ないということは言えない。現に国の収支に国債関係費用が計上されており、国民の税金で支払われているではないか。政府も国民も国家という同じ船に乗っているのだ。国(政府)の借金は国民一人一人に関わってくる。
だが長年、当事者意識を欠き、野放図な財政運営をしてきたため、累積国債発行残高(普通国債)は増加の一途をたどり、2025年度末には1,129兆円に達する見込みだ。もうこれ以上、次世代へのツケを増やすことは避けるべきだ。
次世代のために投資をするのはいい。だが、その財源として次世代へのツケ送りとなる国債を発行することは反対だ。それでは次世代のためにならない。国債以外のきちんとした財源を確保しないと。
子供のために「子育て国債」を発行して、その返済を子供(将来の大人)にさせてどうする。それじゃ、親が子供を育て、子供が大きくなったら、子育てにかかった費用を子供に請求するのと同じだ。倫理的に問題がある。子供を育てる費用は現役世代の親が負担するべき。子供自身(将来の大人)ではない。仮に名目が「子育て」でなくても、「国債」と名が付くものはすべて、この性格を持っている。
子供を育てる費用を親が負担しなくてどうする。
子供自身に負担させたら、そんな親は本当の親じゃない。
その一方、消費税増税には反対する。財務当局はこれまで累積国債発行残高を引き合いにして、消費税増税の根拠のひとつとしてきたが、自分たちの失敗を棚に上げて、よく言うものだ。それに、消費税を上げても、景気は悪くなるばかりで、税収は思ったほど伸びないだろう。
勘違いされがちだが、消費税は買う側である消費者が納税義務者ではなく、売る側である事業者が納税義務者となっている。だから、消費税を事業者が負担しても、その分を商品価格に転嫁できなければ自腹となる。これは中小事業者にとってはかなりキツい。
法人税は最終利益に対して課税されるので、赤字なら無税となるが、消費税は仕入れの段階で容赦なく課税されるので、最終的に利益が出ず、赤字になっても無税とはならない。つまり、赤字でも消費税を払わなければならないということだ。
ただでさえ手持ち資金が少ない中小企業から、お金を容赦なく取り立てるのが消費税。国の代わりにタダで徴税業務をさせられて、ノルマ厳守で自腹を切らされる。まるでマルチ商法の売り子のようだ。売る側は辛く。買う側も辛く、これで税収が増えなければ国も辛くなる。いったい誰得の税制だ。
ただ、そうは言っても、消費税は2025年度の国税収入全体の約32%(約24.9兆円)を占め、所得税(約18.2兆円)、法人税(約19.2兆円)を上回り、今や最大の柱となっている。
だから、どこかの少数政党が主張するように、これをすべて急にゼロにするのはまったく現実的ではない。政権を取ることがない政党は無責任に「消費税ゼロ」を簡単に口にするが、それは代替できる財源を確保した上で言ってもらいたい。それを示せず、現実離れした話しかできないから万年野党なのだ。僕も「消費税ゼロ」を理想だと考えるが、さりとて今の状況で急には無理。今すぐ代替の財源を全額確保することは不可能だ。
であれば、部分的に財源を確保しながら、段階的に減税する他ない。一番手っ取り早くできそうなのが富裕層への増税だが、やるなら不労所得の性格が強い収入に対しての課税(増税)がいいだろう。銀行貯金の金利、株式や債券の配当益や売却益とかね。
同時に、政府・省庁・関連機関(天下り先)の無駄を削減し、大企業の内部留保を従業員に還元してもらう。これで少しずつ財源を確保し、その上で消費税を少しずつ減らしていくのだ。財源は急に降って湧いてこない。数十年単位のスパンで考える必要がある。
消費税が初めて導入されたのは1989年であり、かれこれ37年経っているが、これを無くすにしても、やはり同じぐらいの期間を要するであろう。0%→3%→5%→8%→10%と、段階的に上がってきたんだから、この逆方向に段階的に下げるのがいいんじゃないかな。いきなり0%は無理。
さて、ここまでは守りの財源論だ。これはこれでしっかりやらなければいけないが、おそらくこれだけだと経済が先細りしてしまう。個人的にはGDP上げを善とする成長経済には否定的であり、今後の日本は、数字より中身を重んじる成熟した経済(定常経済)を目指すべきと考えるが、日本以外の国はどこも成長経済を目指しており、その中で日本がそれを止めれば、世界の中の日本の相対的立ち位置が低下することになってしまう。
GDPの順位など気にする必要はないと考えるが、さりとて国際的な日本の立場をある程度維持する必要はあるだろう。でなければ国益を失うことにつながる。だから、今のイギリスやスイスや北欧ぐらいのポジション(国際的評価)を目指すのが妥当と思うが、いかがだろう。これは日本だけでなく、世界もそれを望んでいる。世界というパズルは国というピースが集まって構成されており、日本はひとつのピースとして世界の中で相応の見合った役割を果たさなければならない。
ということで、攻めの財源確保のため、稼げる分野への
投資が必要であり、そのための方策を日本政府が示している。
それが「重点投資対象17分野」と呼ばれるものだ。
①AI・半導体
② 造船
③ 量子
④ 合成生物学・バイオ
⑤ 航空・宇宙
⑥ デジタル・サイバーセキュリティ
⑦ コンテンツ
⑧ フードテック
⑨ 資源・エネルギー安全保障・GX
⑩ 防災・国土強靭化
⑪ 創薬・先端医療
⑫ フュージョンエネルギー(核融合)
⑬ マテリアル(重要鉱物・部素材)
⑭ 港湾ロジスティクス
⑮ 防衛産業
⑯ 情報通信
⑰ 海洋
過去に例のない高い支持率でスタートした新首相の政権下で、2025年11月4日、新たな司令塔である「日本成長戦略本部」の発足が発表された。目的は、日本の経済・産業の供給構造を抜本的に強化し、危機管理の観点から官民を挙げた重点投資を実施することにあるが、これは、国内外を取り巻く地政学リスク、サプライチェーンの脆弱性、人口減少下の成長力低下などの背景を受けてのものだ。
この本部が目指すのは単なる成長政策ではなく、いわば危機管理投資であり、税率を上げずとも税収を増やすための経済構造改革でもある。本来であれば、もっと国民に知られるべき内容だが、日本サゲしたいマスコミはほとんど報道しない。
これまで公共投資と言えば、道路やダムや施設など、建設関連ばかりだったが、今回はそうではない。今は稼げなくても、将来稼げるだろう分野に狙いを定めている。これは画期的なことだ。日本には多方面に優れた技術があるが、商業ベースとして、いまいち伸びなかったのは投資してこなかったからだ。
そう、海外にばかり投資し、国内に投資してこなかった。だから今後、国内に投資し、国内の経済を活性化させるのだ。AI・半導体、航空・宇宙、デジタル・サイバーセキュリティ、資源・エネルギー安全保障、防災・国土強靭化、防衛産業、情報通信など、今後、発展が見込める分野を網羅しており、大いに期待できる。
日本列島を、強く豊かに。
未来は与えられるものではなく、自らの手で切り拓くもの。
挑戦する人が評価され、頑張る人が報われ、困った時には助け合い、
安心して家庭を持ち、夢を持って働ける国へ。
これは首相の国民向けのメッセージの抜粋だが、単なるスローガンではなく、それが実現できるよう、日本成長戦略本部を中心に具体的に動いていることを評価する。この日本成長戦略本部の長は首相自ら就いており、成長戦略担当大臣(副本部長)を定め、財務省はじめ関係各省の大臣(本部員)がずらっと指揮下に入っているのだ。
官僚機構は縦割りで、新しいことを嫌がるが、政治の力でそれを是正し、横断的かつ機能的に進めようという意気込みを感じさせる。これまで官僚の言いなりになり、政治が停滞していたが、それを打破してもらいたい。
「日本成長戦略本部」は「バラマキでなく戦略的な財政出動」を掲げ、日本経済の供給構造を強化することを目的としているが、これは緊縮財政から積極財政への転換を意味するものだ。但し、一部の積極財政派が主張するような「どんどん国債を発行すればいい」には与せず、極力国債発行を抑え、プライマリーバランスを重視しており、この点も評価に値する。
国債発行なら誰でもできる。それこそ口先だけの能無しでもね。だが、国債発行しないで財源を作り出すのは困難を伴い、大変なことだ。これをするには相当な専門性や実務能力がないと難しいだろう。
そう言えば、選挙で与野党どこも消費税減税を公約に掲げる中、国政政党で唯一、消費税減税を掲げていない党があった。すべての党が減税賛成なら、それに反対する民意の受け皿が無くなってしまうから、この点は賢いことをした。僕が思うに「消費税減税不要」を考える人は一定数いるはずであり、それが一党だけなら、票が集中し、結果的に相当な票が入ることになるだろう。
少数政党であり、「どうせできないから」「一か八か」という思惑で「逆張り」したのかもしれないが、狙いそのものは悪くない。与党もそうすべきだったかも。(与党は博打を打てないだろうが)僕は消費税減税賛成の立場だが、それはあくまで財源を確保した上での話。国債でやるなら反対だ。
今回、与党は、二年間だけ、食料品だけ、という一時的な減税で、国債発行を伴うものでなかったが、これは、消費税を下げて欲しい人、国債発行して欲しくない人、双方の意見を調整したものだ。(だから中途半端)
減税を示せば、魅かれる民意もあるが、反発する民意もある。「減税? 冗談じゃない。そんなことをしたら将来世代へのツケ送りになるだろうが。自分はそんな利己主義ではない」という意識の高い人は相当数いると思われる。そういう人は減税を鼻先の人参と捉え、自分たちは馬じゃない、と反発するのだ。
※補足(逆張り)※
相場のトレンド(流れ)に逆らって売買する投資手法を指します。株価が下落している時に買い、上昇している時に売る手法で、高値掴みのリスクはあるものの、反転すれば大きな利益を狙えるハイリスク・ハイリターンな取引です。 世の多くの人はバンドワゴン効果から勝ち馬に乗りたがりますが、ビジネスなどでは、あえて負け馬に乗り、それが勝ち馬に化けることを期待するケースがあったりします。
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