第177話 魔王エリシアールとの対決
領地運営は言うまでもなく、王国の政治、財政、外交、防衛、すべてが順調だ。最近、妻メリッサが第三子を妊娠したし、順風満帆とはまさにこのことだろう。王からも王位継承の話を度々、打診されており、あの問題をこのあたりで、解決すべきだろうと判断した。もう先送りにはできない。そう魔王エリシアールとの決着だ。
魔王エリシアールは現在、バナン王国内、ロナンダル王国側の山奥の地下で、岩の中に無力化された状態で存在しているが、いつ、なにかの拍子で復活する可能性がゼロではない。以前、対戦した時は、復活のために、魔力を吸収する作用が凄まじく、近づくことも難しかった。それで『魔力吸収の水晶玉』百個でまわりを固め、魔王エリシアールの魔力吸収を妨害し、復活阻止したのだ。そして、『魔力吸収の水晶玉』により、魔王エリシアールの魔力も吸収され、いずれ生体反応が消えると思われたが、あれから数年経過してもまだ消えないのだ。
「いくらなんでもおかしい……いや、おかし過ぎる」
いくら魔王とは言え、あの『魔力吸収の水晶玉』に囲まれ、これだけ長期間、生命を維持できるものだろうか?そんな疑問を感じながら、眠ったある晩のことだ。
ん?あれは……フェニックス!
しばらく見ていなかったが、久しぶりに、夢にフェニックスが現れた。この存在なら分かるかもしれない。前から気になっていたあの質問をしてみよう。
「聞きたいことがあります」
「なんだ?」
「魔王エリシアールの生体反応が消えません。なぜでしょうか?」
「……奴は自ら殻に閉じこもった。それで生命を維持している」
「殻に入った状態なら、危険ではないのでしょうか?」
「殻に入った状態ならそうだが、まわりが安全と分かれば殻を破って復活するだろう」
「殻に入ったまま、どのぐらい保てるのでしょうか?」
「はっきりは言えんが、殻に入った状態なら、何百年、もしかしたら、それ以上、保てるかもしれない。奴は長い年月の間で復活のチャンスを狙っているのだろう」
ここで、目が覚めた。このまま殻に入った状態なら、危険は無いということだが、復活の可能性がある以上、安心できない。決着をつける方法は無いものか……
魔王を完全に倒す方法を模索する日々が続いた。
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――――――
あれから魔王を安全な方法で倒す方法は見つかっていないが、手掛かり、可能性は浮かんだ。しかし、これはやってみないと分からないし、リスクも大きい。どうするか……だめだ!これでは前に進めない。
そう言えば、「男なら闘う時が来る」って、前の世界のボクシングアニメの歌詞にもあったよな……あれは本当だったようだ。今なら主人公の気持ちが痛いほどよく分かるよ。
「……とにかくやってみよう!」
【転移】で魔王がいる現地へ飛ぶ。今回はテネシアとイレーネには内緒で来た。今回ばかりは勝算がはっきりしておらず、死も覚悟していたからだ。最悪、死ぬなら、自分一人で十分だ。
「ここだな……」
入口に僕以外が入れないよう【結界】スキルと、僕以外には見つからないよう【隠蔽】スキルが作用しているが、当然、僕はそのまま入れる。そして奥に進んでいくと……
「うう……魔力が吸収されるな……」
ここで『魔力増大の水晶玉』を取り出すと。効果が中和された。
「よし、これで進めるぞ」
その後も進む度に魔力増大の水晶玉を増やしていった。もしこれが無ければ、魔力を吸収されて、その場で倒れてしまうことだろう。
どんどん進み、それに合わせて、どんどん『魔力増大の水晶玉』を出していく。もう五十個は超えた。しかし、この先に『魔力吸収の水晶玉』が百個あるのだから、もっと増やして中和しないと。
ついに、魔王がいる空洞に来た。ここは凄いな……どんどん収納から『魔力増大の水晶玉』を増やしていく。もう九十個を超えた。水晶玉は持ち運びやすいよう網目の袋に入れている。
そして、魔王のいる岩の前まで来た。ここで『魔力増大の水晶玉』が百個になった。凄まじい吸収作用と増大作用により、激しいエネルギーの中でバランスを取っている。
「ここからが本番だ」
前回対戦した時は魔王の魔力吸収により、スキルが効力を出せなかった。今なら、魔力吸収と魔力増大のバランスが取れて、ほぼゼロの状態だから、僕のスキルも使えるはずだ。
「よし、いくぞ!」
と思った瞬間、脳内に声が響いた。
「おお、魔力吸収が収まった。これなら復活できるぞ!」
魔力吸収が収まって、魔王が目を覚ましたようだ。
「くっ、させるか!」
うまくできるかどうか分からなかったが、考えてる暇はない!
「『魔力吸収の水晶玉』、『魔力増大の水晶玉』、魔王エリシアールを【収納】!!」
その瞬間、渦のような凄まじいエネルギーの流れが集約され、それが一気に消滅した。
そして、あたりは静まり返った。
「……終わったのか?」
「魔王を指定して【探索】!」
生体反応がなくなった。これで大丈夫だろう。
その後、外に出て、早速、魔王に【収納】(強制素材化)をかけた。
しかし、何かがおかしい。確かに強制素材化したはずなのに……
「なんだ、このとてつもない不安感は?!」
すると脳内に声が聞こえた
「我は半精神生命体なり、体を分解されても、精神だけで行動可能だ。うははは!このまま貴様の体を頂こう!!」
「なっ、何!!」
不気味な声が地響きのように湧き上がる。
しかし、奴が収納内にいるのは分かっている。収納内は体内とは違う。なら、これでどうだ!
「これで貴様の最後だ――!【収納】(亜空間廃棄)――!!!」
「なっ、これは、吸い込まれるぞ!うぎゃああ――――!!」
まさか、収納内で分解できないものがあったとは……
しかし、廃棄してしまえば、関係無い。
最後まで、本当に冷や冷やさせる奴だった……
「本当に寿命が縮む思いだった……」
だが、これで完全に魔王エリシアールを倒した。やっと肩の荷が下りた。
「はあ……本当に良かった……生きて帰れる」
しばし、軽めの放心状態だったが、やがて平常心を取り戻す。
しかし、亜空間って、一体何だろうな?収納内も亜空間だと認識していたけど、そことはまた別の空間(世界?)ということだろうか。まあ、いずれにしろ、この世界の外に行ったなら、もう認識外の存在だろうから、気にする必要もないな。
とにかく、これで憂いは無くなった。前に進める。
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