第14話 山の館
「主、この資材はここでいいか~」
「おお、それとここはどうしたい?」
「もっと強固にしてもいいと思います」
王都での商売が完全に軌道に乗り、今ではお店に行くのは、日に一回の巡回と週に一回の物品搬入で済むようになっていた。それで時間ができたので、最初にすることにしたのが、山の拠点拡大だ。裕福になったし多少は贅沢したいと思い、どうせするなら、山の家改め、『山の館』にしようとなった。【加工】スキルでどんどん家が出来上がっていくが、途中、工事を止めながらテネシア、イレーネの要望を聞いていく。
「どうせなら耐火建築物にしたら」
「広い部屋があれば訓練もできます」
「地下室もいいな」
「広い稽古場も欲しい」
「魔法の練習ができる場所も」
「倉庫や金庫もあった方がいいかも」
「突然の来訪者に備えて応接室も」
「お城みたいに高くもできるけど、隠匿性も大事です」
「なら上は三階ぐらいにとどめて地下を広くするか」
こうして出来上がったのが「山の館」だ。地上三階、地下二階の石造りの建物だ。素材には天然石を大量に使用した。これなら火事の心配もないだろう。部屋の配置だが、三階に三人の個室(プライベート・寝室)、一階に会長室、二人の休憩室、接客用応接室、商品の展示室、キッチン、食堂、浴場、会議室、娯楽室等を置いた。急な来客に備え、広い部屋がいくつもある。貴族並みのお屋敷と言っても過言は無いだろう。
王都でも名が売れたため、今では「ギルフォード商会」と名乗っているが、対外的には僕を「会長」とした。なんかくすぐったい感じがするよね。まあ三人でいる時は今まで通りの呼び名だけどね。そして地下一階に広いスペースを取って、剣の練習場、魔法の練習場を作った。特に魔法は威力が凄まじいので、分厚い鉄板で覆うことにした。これなら中規模魔法ぐらいまでなら耐えられるだろう。それと倉庫と金庫だね。大量の資材も収納内に入れっぱなしにしてきたが、いい加減、整理が追い付かなくなってきたので、取出しがずっと先になりそうな素材はここで保管することにした。これで魔力の消費も抑えられるだろうか? ただ収納にいくら入れても疲労を感じることは無かったので、あくまでリスク分散という意味合いが大きい。
それと金庫、お金が相当貯まってきたので、こちらも半分程度移した。鉱山に行く度に金、銀、銅等の蓄積も増えていったので、こちらは延べ棒で出して保管した。実はこの金庫部屋には扉はなく、【転移】でないと入れないようにした。これで室内の防犯は大丈夫だろう。
地上二階と地下二階は空き部屋ばかりとなっているが、地上二階は来訪者用、地下二階は隔離用にする予定だ。不埒な訪問者があった場合の牢屋になるが、使う日が来ないよう願いたい。他の階でも空き部屋が多いが、順次考えていこう。館の庭も広めに取り、裏庭には魔法と剣の練習場を作った。ここなら大技を使用しても大丈夫だろう。それと言うまでもないが、館の周囲には石造りの防壁を設置した。これで外部からの侵入対策も大丈夫だ。
<その日の晩>
山の館完成の打ち上げを三人で行った。
「主、山の館の完成、おめでとう」
「素晴らしい出来栄えです」
「おお、ありがとう」
「建物は強固だし、魔法と剣の練習場も広いし最高です」
「改めて聞くのも何だけど、何でここにしたんだ?」
テネシアが核心を聞いてきたので、答えよう。この子は本当に勘が鋭いなあ。
「一番の理由は防犯面、秘密の隠匿のためかな」
「確かにここなら、まわりに誰もいないし、好き勝手できますね」
「そうそう、王都ならこんな建物作れないし、情報が洩れるかもしれない」
「主のスキルは凄過ぎるからな」
「もし町で館を作ったら、人に目立つし、護衛も大変だろうし、秘密を守るのが大変だ」
「特に新商品の開発には徹底した情報防衛が必要だからね」
二人ともワインを飲みながら、うんうんと頷きながら聞いてくれてる。この二人は本当に心置きなく話せるし、信用できるな。
「二人にはいろいろ無理もお願いしてきたから、もう少し自由になってもらいたい」
「え! それって、どういう意味?」
「ああ、ごめん、変な意味じゃなくて、自由時間を増やそうということ」
「実質的に一日一回、町へ巡回するだけの業務がほとんどだから、空いた時間を訓練や魔物討伐にあててもいいよ。何なら冒険者登録しても面白いかもよ」
「冒険者は、朝、ギルドに行って、日中に仕事して、夕方に報告する流れらしいから、朝、町のギルドに行って、その後、町のお店を巡回すれば無駄もない。お店を巡回した後は自由時間にして訓練や討伐したら、どうだろう。遅くなったら店の方でも寝泊まりできるし」
「おお、それはいいかもな」「面白そうですね」
「そのために僕ももっと強くなる必要があるから、二人に訓練をお願いしたい」
「分かった、主」「分かりました。アレス様」
商売も軌道に乗ったし、できた時間でいろいろ試すのも面白そうだ。
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