第126話 聖女ミア
「やはりここは薬草の宝庫です」
今日はミアと一緒にベルム領の植物ダンジョンに来ている。今日の同行者は僕のほか、テネシアとイレーネだ。テネシアは前回、ダンジョンに入らなかったが、今日は近くの竜人の集落での会合の後、付き合ってくれた。竜人達が集落に来て、しばらく経ったが、この場所を気に入ったようで、他の仲間も呼び寄せるよう動いてるようだ。そう言えば、イレーネも山の館に集まったエルフ達といろいろ話し合いをしているな。
ミアは不要な採取分をギルドに販売してたので、すぐEランク冒険者に格上げされた。ただしDランク以上は、魔物討伐とギルドからの対応要請受諾が必要だし、薬師とヒーラーという本業があるのでまったく考えていないとのこと。
今日の主役は薬草採取のミア、僕は荷物持ち、イレーネは邪魔な植物からの護衛、テネシアは薬草採取する際の補助だ。土魔法で手を汚さず、根本から土と一緒に宙に上げる。
ミア「あ! あれです。あの奥の草が欲しい薬草です」
イレーネ「では手前で邪魔してくる草は刈り取りますね」
テネシア「この草だな。じゃ、土ごと取り出すぞ」
ミア「ふふ、至れり尽くせりですね」
三人が連携を取りながら談笑する。ここまで数分で作業してるが、普通は、こんな稀少な薬草、探すだけで半日はかかるだろう。三人の様子を和やかに見てたら。
テネシア「大公様! 聞いてるか! あとは収納だよ!」
僕「おっ、わかった、わかった」
採取したての薬草を【収納】する。収納内は時間経過がなく、保存に最高。これを島の薬草畑に植えれば完了だ。
ミアは薬師として、超一流だけど、ヒーラーとしても超一流だからな……
以前、島であんなことがあったし……
~~回想シーン~~
島の館で地域代表会議が終わり、一息ついていた時、獣人の父親が駆け込んくる。
「大変です。子供が荷馬車に轢かれました! 早く来て下さい!」
ミアと顔を見合わせ、すぐ現場に向かう。近くにいた地域代表も何人か心配になってついてきた。現場に到着すると轢かれた子供を抱いて、母親が泣き叫んでいた。
「わあああ! ミア様、子供を助けて下さい!」
子供を見ると、完全に動かなくなっており、その状態から瞬時に死を予感した。
だがミアは迷うことなく上級回復魔法をかける。
「ハイヒール!」「ハイヒール!」「ハイヒール!」
しかし子供は動かないままだ……ダメだ。もう死んでしまったか……
そう誰もが思い始めた時、ミアが跪いて前に手を組みながら、集中する。
そして……
「エクストラヒーーール!!!」
その瞬間、まばゆい光が広がり、あたりが騒然とする。やがて光が消えるころ、なんと子供に意識が戻ったのだ! その場には多くの住民、そして地域代表達もいたが、その光景に感動して涙を流す者までいた。そして……
「せ、聖女様……」
「聖女様だ!」
「ミア様は聖女様だ!!」
という声が広がったのだ。もともとミアは住民から聖女と思われていたが、これ以降、その思いは一層強まったようだ。その後も負傷した防衛隊員をはじめ、幾人も即死したような状態から、回復させ続けている。完全に心臓も止まり、瞳孔も開いてるのに……
ミアによると、恐らく死んだ直後はまだ魂が体と繋がっているため、体さえ回復できれば、復活の可能性があるのだろうとの推察だった。それとスキルのレベルアップだが、間違いなく僕の影響だろうと言っていた。エクストラヒールは特級回復魔法であり、教会等の伝説でしか聞いたことがない奇跡の御業だ。
そして、このレベルの回復薬を目指して、ついに正真正銘の特級回復薬が完成したのだが、つくるのに魔力を大量に消費するため、一日一本が限界だった。そんな時にミアから相談を受けた。
「公王様、特級回復薬は大量の魔力を消費するため、多く作れません。何かいい方法はないでしょうか?」
そう言えば、『魔力増大の水晶玉』があったな。これをあげればいいんだろうけど、僕も持っておきたいし……そうだ!
「『魔力増大の水晶玉』を【複写】! できた!」
「これは……」
「これは手に持つと魔力が増大する水晶玉だ。これを君にあげよう」
この日以降、特級回復薬の生産ペースが飛躍的にあがった。防衛隊、警備隊は安心して、より実戦的な訓練ができるようになり、島の防衛力が著しく向上した。また、回復薬の定期船の通商拡大により、島の経済発展にも寄与した。ミアがこの島へしてきた貢献は計り知れない。
そして、住民の強い後押しもあり、ミアを公国として、『聖女』認定することになった。これはミアを対外的に守る意味もある。僕もメリッサと婚約する前に、その人知を超えた力から不安視され、教会の神聖魔法(浄化魔法)を受けて、邪悪な存在でないと証明した経緯がある。今回は公王である僕が聖女認定前にミアに神聖魔法(浄化魔法)をかけたが、ほどなくして、ミアも神聖魔法(浄化魔法)を使えるようになった。
ミアはもともと神聖魔法と適性があったのだろうが、ミアにも僕の【複写】に似たスキルがあるのかもしれないな。その後、ほどなくして、【解呪】【結界】もマスターしてしまった。僕が渡したアイテムでスキルを使っていたが、スキルを使ううちに、自然と体で会得してしまったらしい。
ちなみに『大薬師』認定の時と同様、『聖女』認定の際も、ミアは固辞したが、島の実態として、既にミアはその名に相応しい存在になっており、その名で親しまれてもいる。それらを理由になんとか説得した。その代わり、ミアからは会議等、公での役職名はこれまで通り、『大薬師』を使うよう要請されたので、そちらは快諾した。島には教会もないし、公の場で『聖女』呼びする機会は無いしね。
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