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第123話 懐かしのベルム領

 最近、王城にしばしば転移している。理由はメリッサの妊娠の様態を気にしてだが、行くと王から「体調はどうか?」「無事か?」「今、どんな状況だ?」と矢継ぎ早に聞かれる。それに対し、毎回、「大丈夫です」「無事です」「順調です」と言うのが定例化してきた。


 今回もそんな感じで話を始めたが、その後、ヨウス領の開発ぶりを褒められ、ヨウス領と王都の間の物流が増えたことにより、その間にあるベルム領について王から話が出た。ベルム領かぁ……懐かしい。昔、森(ヨウス領)から出て最初に町があったところだな。


「ベルム領は王直轄領で、内政も安定しておるが、最近、困ったことが起きてのう」

「何でしょうか?」

「うむ、実はベルム領の郊外、ヨウス領近くになるが、植物ダンジョンがあってのう……」

「植物ダンジョンですか?」


 植物ダンジョンなんて聞いたことがない。いったいなんだろう? 自分が町に出たばかりの頃は商売に集中してたから、気が付かなかったな。地味なダンジョンなのだろうか?


「まあ、ダンジョンと言っても、怖い魔物が出るわけでなく、魔草がほとんどで、危険性は少なく、良い素材の採取場となっている。通常のダンジョンと違い、倒して踏破することが、目的ではなく、いかに珍しい魔草を数多く採取できるかが目的となっている」

「変わったダンジョンですね……」

「うむ、密林のような場所だが、全く危険がないわけでもない。毒持ちや、人間をおびき寄せて襲うのもいる。ダンジョン内なら冒険者が対応するからいいのじゃが……」

「それがダンジョンの外に出てきたのですか?」

「う~む、今までそういうことは無かったのだが、最近、外に広がり、近隣で被害が発生してるのじゃ。すぐ近隣には集落があるしのう」

「わかりました。ベルム領はヨウス領への通り道ですし、私が対応しましょう」

「おお! よく言ってくれた。今後、ベルム領は貴公への委任領とするので、好きなようにやってくれ。現地の代官ケレスに話は通してある」


 植物のモンスターだから、火に弱そうだな。テネシアも連れて行こうかな。イレーネは山の館でエルフ達といろいろ打合せしてるようだから、声をかけないでおこう。そう言えばベルム領って、商会の記念すべき第一号店がある場所だったよなぁ。それなら尚更助けてあげないと。


――――

――――――


大公城に戻ると、テネシアが弟のライズ、他の竜人達と話をしている。


「テネシア、ちょっといいか?」

「なんだい?」

「実は王都とヨウス領の間、ベルム領で植物の魔物が暴れているらしい。一緒に退治にいくか? 火魔法が使えそうだぞ」

「おお、行く行く!」


すると、横で話を聞いていたライズが


「いいな、僕もいきたい」


すると、他の竜人達まで


「最近、お城で体がなまってました。お供したいです」


と言ってきた。まあ、魔物と言っても、植物だしそこまで危なくないだろ。


「よし、みんなで行こうか」


この後、全員一緒にベルム領まで【転移】した。


――――

――――――


ベルム領に到着


「先ず、冒険者ギルドに行こう」


 毎回、そうだが、どんな案件でも必ず、地元のギルドに行くようにしている。情報が何より大切だからだ。そして、ギルド長と面会。ここのギルド長は顔なじみだ。


「これは大公様、わざわざお越し頂きありがとうございます。今回はA~Dランク案件でしたので、お声はかけなかったのですが、実はなかなか厄介な案件でして……」

「魔草と聞きましたが、そんなに強いのですか?」

「いえ、強くはありません。通常の火魔法、剣で対応可能です。しかし……」

「何か問題があるのですか?」

「……はい、確かに通常の魔法と剣で刈れます。しかし後から後から生えてくるのです。そのため何度も何度も、冒険者に依頼している状況なんです。それでギルドの支出が増えてるのと逆に魔草がダンジョンに入るのを妨害するため、良質な素材の回収ができず、収入まで減ってきているのです」

「つまり根本から処分しないと難しいということですね」

「はい、上の葉や蔓だけだと何度でも再生してきます」

「なんで、みなさんはそれが困難なんですか?」

「葉と蔓が連携して、冒険者を襲い、なかなか近づけないようです」


ギルド長の説明を聞き、対策を講じながらテネシア他、竜人達と現地へ向かった。


「うわあ、ジャングルみたいだな!」

「蔓が伸びて葉で襲ってくる。なんか葉が刃物のようだ!」

「あの草、切っても、すぐ再生してるぞ!」


 竜人達が口々に言う。他の冒険者達も魔法や剣で対応しているな。でもすぐ再生してる。これでは全部を焼き払っても、すぐ再生しそうだ。


「テネシア、やってくれ」

「はいよ!」


「ファイヤー!」「ファイヤー!」「ファイヤー!」「ファイヤー!」


 テネシアが初歩の火魔法を使う。初歩と言っても、威力は他の冒険者とは桁が二つ、三つ違う。ほとんど爆炎と言っていいだろう。


すると他の竜人達も


「ファイヤー!」「ファイヤー!」「ファイヤー!」「ファイヤー!」


 おお! みんな火魔法が使えるんだな。テネシアに比べると見劣りするが、それでも一般の冒険者より相当威力がある。


 そう言えば、公国護衛船の火炎放射器をつくる過程で僕も「ファイヤーボール」のスキルを得ていたんだっけ。試しにやってみるか。


「ファイヤーボール!」


火の玉が出て、目の前の魔草が燃え去った。おお、テネシアと同じだ。


僕達が一斉に火を降り注ぐと、他の冒険者達から驚きの声


「な、なんだありゃ……嘘だろ、おい」

「あんなに威力のある火魔法を連射してるぞ!ありえない!」

「魔草がなくなっていく!」


 しばらくするとジャングルのようだった魔草が地上から消え、ダンジョンの入口が見えてきた。でも、ここで終われないよね。するとテネシアが地面を見つめて。


「アースムーブ!」


魔草の生えていた箇所の土が盛り上がり、空中に浮かんだ!


「ファイヤーストーム!」


空中に浮かんだ土が炎に包まれ、焼き尽くされ、黒土となった。


一応【鑑定】し、魔草を指定して【探索】したが、魔草の生命反応は無かった。


「みんな、よくやったな。これで終わりだ。ギルドに報告に行こう」


 ダンジョンから街道に出る際、まわりの集落がやたら静かなので、気になり、近くの人に聞いてみると。


「このあたりの集落は魔草が怖くて、逃げだしたみたい」とのこと。


 今回は回収した素材がないため、ギルド長が現地確認することになり、また現地へUターン。


「魔草の討伐を確認しました」


 それでまた、ギルドに行くことになったけど、さっきの集落のあたりで質問したら。


「ああ、この集落ですね。もう戻ってこないですよ」とのこと。


 あとで代官にも聞いてみるか。ギルドからの報奨金はそのまま竜人達へ渡した。彼らも自分で稼げて満足気だった。


――――

――――――


ベルム領主邸で代官と話す。テネシアら竜人達も同行している。


「大公様、委任領の件伺っております。今後ともよろしくお願いいたします」

「それで、実は困ったことがありまして……」

「先ほど、植物の魔物の件は片付けた」

「なんと! さすがでございます」

「それで一つ聞きたいんだが、ダンジョン近くの集落が無人になっていたが、もう帰ってこないのかな?」

「……今回の件が長引き、嫌になってしまったようです」


するとテネシアが僕の耳元で、小声・・でささやく。


「もし、無人なら、竜人達で住んでもいいかな?」


しかしテネシアは元々の声が大きいので、しっかり代官の耳に届いていた。


「あそこは無人になっており、このままだと変な輩でも住み着かないかと心配していました。大公様のご許可があれば、かまいません」


「……というわけだ。テネシアいいぞ」

「おお、ライズもみんなも、住処ができたぞ!」

「ありがとうございます!」


 こうして竜人達はダンジョン近くの集落に住むことになった。集落の代表はテネシアの弟、ライズに決定。代官ケレスによれば、ベルム領は王都に隣接する領地で、王都との結びつきが強いと言う。内政、治安は安定し、今回の件はまったく予期せぬ出来事だったらしい。発生原因もまったく不明とのこと。


 今回は、ダンジョン「外」の魔草討伐だったが、ダンジョン内には珍しい草が多数あるらしい。一度、薬師のミアを連れていこうかな。ちなみにダンジョン内は火魔法厳禁とのこと。当然、全体に影響を与える大規模魔法もダメ。そもそもそんな危険な魔物はいないらしい。なので、このダンジョンは下級ランク冒険者に人気があるとのこと。しかし上級ランク冒険者でもうっかり毒草に触れて倒れることも、しばしばあるようなので、ここではランクはあまりあてにならないようだ。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、評価やブックマークをして頂けると大変有難いです。

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