第122話 海賊迎撃
たまに息抜きで、プライベートの島「アレス島」に来てる。この他にも近くに五つの島があり、全部で六つの無人島だ。その中で一番大きいのがアレス島なんで、六つの島を「アレス諸島」と勝手に命名してる。喧噪を離れ、潮風に吹かれながら、海を見て過ごすひと時はいいものだな……
「んっ! なんだ、あの船は!」
と思った瞬間、メリッサから念話が入る。
(苦しい! 来て!)
船が気になったが、即座に妻のもとに【転移】する。
メリッサが、悪阻で苦しそうにしてたので、背中をさすり「大丈夫だよ」と言う。しばらくさすり続けると収まっていった。良かった。
しかし、あの船、たぶん海賊船だよな……しつこい奴らだ。それなら……
――――
――――――
<海賊目線>
「兄貴、お宝を隠した島が見つからないですぜ」
「お前の操縦ミスじゃねえのか!」
「違いますよ! もういくら探しても無理ですぜ」
「あれだけのお宝を諦められるか!」
「そうは言っても……」
「まあ、しかたねぇ、とりあえず、次の獲物を狙うぞ!」
「あれっ!? 兄貴、豪華そうな船が一隻でノロノロ、こんな場所にいますぜ!」
「うおお! 行けぇ、カモだ、お宝だー!」
◇ ◇ ◇
<豪華船側>
「大公様、あいつら釣られたよ。くふふ」
「そうだな、テネシア、わざと豪華船で、ルートを離れて来てるとも知らずに……」
この豪華船は海賊をおびき寄せる偽装船だ。武器(火炎弾発射器)も隠してる。この船の船員は全員、公国の防衛隊員で、服装は一般人に偽装、公国の旗も隠してる。しかも船にはテネシア、イレーネという怪物級(失礼か!)まで乗ってる。さあ、海賊ども近づいてこい。
「テネシア、イレーネ、海賊は痛めつけても構わんが、殺さないよう手加減を頼む。船を損傷させてもかまわんが、沈没はさせないでくれ、中に人質とお宝があるかもしれない」
「分かった。大公様」「分かりました。大公様」
「防衛隊の諸君、近づいたら、火炎弾発射器でお見舞いしてやれ。今回は威嚇に留めるように。その後、海賊を拿捕し、人質とお宝を回収せよ」
「「「分かりました!」」」
遠くにいた海賊船が急接近してきた。もうすぐだな。あいつらの顔が見えてきた。ニヤニヤと獲物を狙ってる目だな、あれは。しかし残念だが、今回は君たちの方が獲物なんだよ。
「防衛隊! 火炎弾発射だ!!!」
豪華船から大量の火炎弾発射器が現れ、一斉に火炎弾が飛んでいく。
「うわああ! 火炎弾だ――――!」
「やばい逃げろ!」
「えっ! こいつら、まさか?!」
その瞬間、マストに公国の旗が上がっていく。
「あ、あれは!!! ギ、ギ、ギルフォード公国の旗だあああ――――!!」
「に、逃げろおおお――――!!」
海賊船の中は大混乱、ふっ逃すか。
「テネシア、イレーネ、海賊船に行って無力化しろ」
その声と同時に二人が海賊船に行き、魔法なし、素手と剣の峰打ちだけで、次々と倒していった。
そして数分後。
「全員倒したぞー!」
テネシアが手を振ってきたので、後の処理は防衛隊員にまかせた。僕は手を出さない予定だったが、次回は二人も手を出さないでやってみるか。防衛隊に成長してほしいから、少しずつ補助輪を外していく予定だ。
豪華船を海賊船に近づけ、防衛隊が海賊を縛り上げていく。今回、お宝は無かったようだな。
「奥に人がいましたー! 縛られてます!」
人質かな?テネシア、イレーネと行ってみると……この角の形は……
「姉さん!」
「お前、ライズか!」
一人の男がテネシアに声をかけた。どうやらテネシアの弟のようだ。
海賊に捕まっていたのは十ニ人の竜人。悪徳商人の竜人保護という甘言に騙され、一緒に食事している最中に眠り薬を仕込まれたとのこと。弟は姉を追って出てきたが、途中で仲間が増えたと言う。するとテネシアが僕を見て。
「大公様、こいつら保護していいかい?」
「ああ、もちろんいいに決まってる」
その後、竜人達は一時的に大公城で保護することとなった。
その後も豪華船によるおとり作戦は面白いように決まった。しばらくすると、このあたりの海域で、海賊の姿は影も形も見なくなった。海賊のお宝と賞金首の懸賞金は公国で活用され、人質は商会のメラルに頼み母国へ移送、賞金首以外の海賊はギースの防衛隊施設に送った。
このおとり作戦が面白いように決まったのは、迎撃した海賊は一人も逃さず捕縛したからだ。これにより、他の海賊共に情報を漏らさなかったのが大きい。それに海賊共も資金的余裕と精神的余裕がなくなり、こんなあからさまな偽装に引っ掛かりやすくなっていたのもあるだろう。まさに貧すれば鈍するという奴だ。
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